Enterpriseにおける集合知

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2006-11-29 22:16:34

■集合知とは

 今日は集合知の話である。集合知とは「多くのユーザーが参加して知識を出し合うことで知識の蓄積がどんどん膨らんで行き、最終的に価値のある知識になる」というもの。具体例としては、Wikipedia(エンサイクロペディア)、Flickr(写真共有のタグ)、del.icio.us(ブックマーク共有)等などがあるのは皆さんご存知の通り。世界中の人の日記が全体として大きな知識の倉庫になっているという意味ではBlogもSNSも集合知といえる。

 この集合知、「2ちゃんねる」と何が違うのか。大きく3つのポイントが特徴だ。

ユーザー参加型、双方向:ユーザーは閲覧するだけでなく、投稿したりトラックバックしたりとコンテンツに参加する。結果、発信者と閲覧者との間での双方向でのコミュニケーションが発生する。

使えば使うほどリッチに:Flickrでは皆がタグをつければつけるほど分類が精緻になっていく。使えば使うほどどんどんリッチになっていくのが集合知の特徴である。

メタデータ(属性情報)が大事:集合知で大事なのは、知識そのものではなく知識に付随するメタデータ(属性情報)である。Amazon.comにおけるユーザーの★マークの評価などメタデータがリッチになっていくことで、知識としての厚みが増していく。

 単なる掲示板では「集合知」にはならず「2ちゃんねる」と化してしまう。ユーザー参加型で、使えば使うほどリッチになり、メタデータを効果的に活用しているBlog、SNS、Wikiのようなツールだからこそ、蓄積されたコンテンツが集合知に昇華するわけだ。

■Enterpriseにおける集合知の難しさ

 「ユーザーが勝手にコンテンツを投稿して、使えば使うほどリッチになっていく...」提供者側からするとなんとも都合の良いシステムである。いうことで企業内におけるBlog、SNS、Wikiの導入が猛スピードで進んでいる。

 特定部署でトライアルをやっている企業も多いし、一部の会社では成功事例も出始めた。しかし、単にBlog、SNS、Wikiをツールとしてそのまま入れただけでは苦戦することが多い。部門レベルのトライアルとしては良いが、全社レベルの成功まで持っていくにはまだまだハードルが高いのが現実だ。

 何故か。

 それは、企業の組織がまだWebの世界と同じレベルまで「2.0化」されていないからである。Blogを提供しても「人事評価と関係ないでしょ」といって書かない人もいる。「社長に内容が見られるのが恥ずかしい」と投稿を控える人もいる。「馬鹿な遊びをしてるんじゃない」と怒る上司がいる。「セキュリティが問題だ」と抵抗する人もいる。

 遅かれ早かれ、ブログとMixiとiPodしか知らない若者が社員のマジョリティになることは間違いない。しかしまだ「2.0化」が発展途上の今日の企業内で、集合知を実現しようとすると。幾つかの工夫が必要となる。

■社内Blog、SNS、Wiki成功の3つのポイント

 私はコンサルタントとして、様々な企業のBlog、SNS、Wikiプロジェクトの事例を見てきたが、成功している企業には共通の「成功のポイント」があるようだ。それは、

1)今の業務がラクになること

2)柔軟に場が切り分けられること

3)無理せず知識がたまっていくこと

 の3つである。この3つについて説明していこう。

1)今の業務がラクになる

 「社内Mixiをやろう!」だけでは、会社内で全員の賛同を取るのは難しい。今実施している何らかの業務がラクになったり、便利になったりする。そのための解決策としてBlog、SNS、Wikiを活用したい。こうした業務改善の位置づけで展開することが1つの成功のポイントである。

 あるお客様の事例をご紹介したい。この企業では、社内にBlog、SNSを入れようということになったが、単にBlog、SNSというと社内に理解が得にくい。そこで考えたのが、Blog、SNSと融合した電話帳、いわば「SNS電話帳」である。

 この企業で、社内システムで最も使われているシステムを調べた所、それは電子電話帳であった。平均して社員の1人あたり1日3回は利用する、いわば「生活必需品システム」であった。この電話帳にBlogやSNSの機能を付与すれば、生活必需品としてBlogやSNSも浸透するのではないか。そこで、電話帳にBlogとSNSを付加したシステムを提供した。

 利用者はいつもどおり電子電話帳を使って他の人や組織を探していく。電話帳の部分はとにかくスピーディに組織のドリルダウンやキーワード検索で人と組織を探すことができることが重要である。

SNSPB1.gif

 人を探し当てたら、その人の名前をクリックすると個人のBlogページへと飛ぶ。そこでは個人のプロフィールに加えて、個人のBlogが公開されているイメージである。また、自分と関係のある人をマイネットワークとして登録をする、いわば社内のマイミク登録も可能であるし、助けてもらった人にフィードバックのポイントを送ることも可能である。

snspb2.gif

 電話帳という非常に視聴率の高く、その人を探してコンタクトをしようとしている人が見るページにBlogがついていることで、Blogを書く人も気合いが入る。使う方も、Blogを使うというよりは、電話帳を使って人を探しているうちに、その人の人となりがBlogから見て取れる。いわゆるKnowWho(誰が何を知っているか)がBlogで明らかになるわけである。打ち合わせの前にその人のページを見て「ああ、この人だったか」と確認したり、「へえ、先日会ったあの人ってこんなことやってるんだ」と社内の理解が深まるわけだ。

 更に個人のBlogページだけでなく、組織のBlogページもある。部門毎にその部門から発信したい情報をBlogで発信する。いわゆる組織Blogである。これで全社に対してその部門が扱っている商品・サービスを公開して社内の取引に活用したり、これまでメールで全社に発信していたコンテンツをBlogで公開することができる。

 この会社では電話帳という業務必須のシステムにBlogをうまく組み合わせることで「業務がラクに便利になる」というメリットを見せながら、Blogを効果的に全社展開することができたわけである。

 ついつい勢いあまって長くなってしまった。また、あとの2つのポイントは次回に。また、企業内におけるあるべきBlog、SNS、Wikiの位置づけについても試案を提示してみたい。

吉田健一@リアルコム

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