エンタープライズ2.0に求められるアーキテクチャとは

吉田健一(Kenichi Yoshida) 2007-04-24 11:34:30

 今日、リアルコムの新製品発表会があり、エンタープライズ2.0に求められる新製品群を発表した。製品についてはおいおい紹介していきたいのだが、今日はそれに先立ちエンタープライズ2.0時代にどのようなアーキテクチャが求められるかについて論じてみたい。

■情報系のERP

 今日の企業情報システム環境で情報・ナレッジ・人の統合的管理が求められていることは、疑う余地がない。

 グループウェア導入から10年たち、メール、ファイルサーバー、ナレッジ管理、コンテンツ管理と次々と情報系システムが投入され、システムのつぎはぎ・乱立が進んできた。更に近年は、グループ連結経営や社外コラボレーションの増加、ASP・SaaSへのシフトを受けて、ファイヤーウォールを越えた社外システムとの連携も加速度的に進んできた。情報・ナレッジ・人は、社内外の様々なシステムに管理されずにばらばらに存在するようになっている。

 このようにシステムがばらばらな状態が、人と人、人と情報がうまく連携できずに、業務非効率をもたらしている。膨大な情報から欲しい情報を探したい、散在した情報を整理して活用したいといったニーズは、どこの会社でも聞かれるようになった。そして、なによりコンプライアンスという外部要因から、情報を統合的に管理することは避けて通れない時代になりつつある。

 こうした状況は、90年代のERPの状況と似ている。ERPは、当時ばらばらであった販売、配達、請求、製造、在庫、会計等の業務系システムを統合的に管理することで、全体最適の企業計画を実現するというものであった。そしてそのERPを爆発的に普及させたのは、四半期決算を義務付けられたという外部要因があったからである。

 現在、情報系システムが飲み込まれつつある大きなうねりは、まさに「情報系のERP」といってもよいだろう。

■スイートか、ポータルか、サーチか?

 こうした「情報系のERP」に対して、各ベンダーがソリューションを提供している。しかし、それは顧客のニーズを満たしてはいるとはいいがたい。

 マイクロソフトをはじめとする大手ベンダーは「スイート」の発想で「情報系のERP」を提案している。「メール、ファイル、ナレッジ、コンテンツ管理全てを当社のソフトウェア製品群に乗せ替えてください。そうすれば、夢の世界が待ってます。」というセールストークは一見美しく見えるが、既存のシステムを全て捨て去り、全面移行を強いることによる膨大な負荷とコストを考えると、現実的な選択肢ではない。また、グループ会社や無数に存在する取引先にまで「スイート」の環境を押し付けることも不可能である。

 一方で分散したシステムを表示レイヤで統合するために、システムの玄関=ポータルを構築しようという動きもある。ポータルに加えて、サーチによる統合という流れも出てきた。しかし、単なる表示レイヤの統合では、真の連携は実現できず、利用者の利便性が高まらない。また、情報実体の管理ができるわけではないため、コンプライアンスのニーズに答えるものでもない。

 このように「情報系のERP」に対する答えは中途半端なもので、ユーザーのニーズとベンダーのソリューションの間に深い溝があるのである。

■ログとメタデータによるソーシャルアプローチ

 それでは、エンタープライズ2.0にもとめられるアーキテクチャとは何であろうか?我々は次のような世界になると考えている。

aurora.gif

 既存のシステムを捨てて「スイート」に乗り換えることは現実的ではない。そこで、既存システムはばらばらのままで、あたかも1つのシステムとして統合的な管理を行う仕組みが必要とある。ポータルやサーチといった表示レイヤにおける統合も必要であるが、それに加えてコアとなるデータについてはマッシュアップを行うことで、真の情報の統合管理が可能となる。

 エンタープライズ2.0環境でマッシュアップすべきコアデータ。それは、アクティビティログ(活動履歴)と、メタデータ(属性情報)と、アイデンティティ(ユーザー情報)である。この3つのデータをばらばらのシステムから切り離して統合的に管理することで、社内外の様々なシステム間をつなぎ、あたかも1つのシステムかのように扱い、情報を最適に管理することができるのである。

 ポータルやサーチによる表示レイヤ統合とコアデータのマッシュアップはどう異なるのか。ポータルやサーチは、いわば言語ベース連携(「テキストアプローチ」)だが、コアデータのマッシュアップは利用者の利用状況や情報の属性による連携(「ソーシャルアプローチ」)なのである。

 例えば、検索サービスでは言語解析による「テキストアプローチ」をとっていたのがInfoseekであったが、GoogleはPageRankという「みんながリンクしているサイトは重要」というメタデータを活用した「ソーシャルアプローチ」を取り検索の世界に革命を起こした。また、これまでの本屋は単に本をキーワードで検索して表示する「テキストアプローチ」であったが、Amazonは利用者のアクティビティログを元にその人にベストな本を薦めるという「ソーシャルアプローチ」で大成功を収めた。

 GoogleとAmazonがやっきになって集めているコアデータが、アクティビティログと、メタデータと、アイデンティティである。この3つのコアデータを活用した「ソーシャルアプローチ」を取ることで、表示だけでなく情報実体そのものを管理し、人と情報、人と人を最適につなぐことができるようになるのである。

 リアルコムでは、このコアデータをマッシュアップする基盤、Aurora Platformをベースに、Enterprise2.0時代の「情報系のERP」を考えている。それは、既存の情報系システムになんら手をいれることなく、資産を最大限活用しつつ、情報の統合管理を実現するものである。具体的な新製品の内容について、次回述べたい。

 


 

吉田健一@リアルコム

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