Googleのエンタープライズ向けビジネスが好調に推移している。海外では医薬品事業を手掛けるRocheグループが9万ユーザー、スペインの銀行BBVAがGoogle Apps for Businessを採用する11万ユーザーと大規模事例が登場したが、国内でも損保ジャパンが3万アカウントと大規模採用を決定。「変化の波が訪れている」とエンタープライズ部門のマネージングディレクター、阿部伸一氏は話す。
企業に提供するサービスもGoogle Apps for Businessだけでなく、拡大しており、「製品の機能を販売するのではなく、顧客のビジネスバリューをあげることにつながる提案ができる体制を目指す」という。Googleが実現しようとしている企業のビジネスバリューアップとはどんなものなのか。
好調に導入進むGoogle Apps for Business
エンタープライズ部門のマネージングディレクター、阿部伸一氏
Googleのエンタープライズ向けビジネスは、検索機能を企業向けに販売する「Enterprise Search」からスタートした。しかし、現在のエンタープライズ向けビジネスの主力商品となっているのは検索よりもGoogle Apps for Businessである。
「2011年もビジネスは好調だったが、2011年実績では規模が大きかったケースが2012年はミドルクラス。より規模の大きなお客様が増えてきた」とエンタープライズ部門のマネージングディレクターである阿部伸一氏は説明する。
ワールドワイドで400万社、5000万ユーザーという実績を持つGoogle Apps for Businessだが、国内でも、損害保険ジャパングループ3万ユーザーの導入が決定。国内では最大規模の導入となる。
規模の大きなユーザーが増えた理由は、阿部氏の次の言葉から分かる。
「見込み客から必ず聞かれるのは実績。オンプレミスの実績はないが“クラウドの中では?”となれば、間違いなくGoogleはこの分野では一番の老舗。クラウド分野でのリーダーであり、将来に向けた確実なビジョンも持っている。オンプレミスとの比較をせず、クラウド導入を前提とした企業ユーザーが増えた。導入規模も、特定部門だけではなく、最初から全社規模での導入を決定するケースが増えてきた。変化の波が訪れている」
ちなみに、意外にも思えるがGoogle Apps for Businessは直販しない。オンライン経由で申し込みがあった場合も、パートナー経由で販売する。販売パートナーとして、大企業向けには伊藤忠テクノソリューションズ、ソフトバンクテレコム、日立システムズ、富士ソフトなどの名前が挙がり、中小企業向けには、各地域の販売パートナーが担当する。
「販売はパートナー経由だが、通常のエンタープライズ向けシステムの販売同様、Googleの社員自身によるプリセールス活動も行っている。私自身も中堅以上の規模向けのプリセールス活動を担当している」
Googleのエンジニアというと、全てインターネット経由でビジネスを行い、スーツではなくラフな服装をしているイメージがある。だが、エンタープライズビジネスに関しては他のベンダー同様、スーツを着た社員がプリセールス活動を行っている。好調の要因は、このように社内体制が拡充してきたこともあるだろう。