吉田氏は「社外の知見をためらわず活用する」例のひとつとしてKPO(Knowledge Process Outsourcing)の活用を挙げる。
KPOとは、従来社内で抱えていたナレッジワークそのものを社外にアウトソーシングし、質の高い生産効率化を目指す取り組みのこと。そのKPOを担う国のひとつにインドがある。数値解析やデータマイニングなどの業務に強く、アメリカのビジネススクールを出てMBAやCPA(米国公認会計士)、LL.M.(Master of Laws)などの資格を取得している人材も多い。だが、人件費は先進国の専門企業に依頼する場合と比較して、時間当たりのコストが5分の1程度になるのも大きな強みだ。
例えば、米ウォールストリートの金融機関の大半はインドのKPOとともにグローバルでチームを作り、証券分析や金融シミュレーションなどに時差を活用した24時間体制で取り組む。製薬企業でもインドのR&D企業を活用する企業は数多い。また優秀なKPOを活用するにあたって、依頼主の企業のナレッジワーカーにも高いレベルの業務が求められるため、互いに切磋琢磨する効果もあるという。
「インドの潜在力を認めながらも、多くの日本企業は言語の壁を理由にKPOを見送ってきた。その間に、欧米企業はインド企業と密接な結びついて大きな成果を上げている」と吉田氏は危機感を滲ませる。また、日本人は器用であるがゆえに何かと自社で抱え込んでしまい、その結果必要以上の品質を作りたがるが、それは本当に付加価値業務となっているのか疑問だという。
しかし吉田氏は、「KPO活用は難しい」とも指摘する。単純にアウトソーシングを推し進めると、余剰人員のリストラにつながりかねず、アウトソースした後の業務の空洞化をどのように埋めて高い価値に変えるかの議論も必要となる。
「外に出せないクリエイティブな部分は残し、そうではない部分は潔く切り分ける、バランスを考えたナレッジ活用が求められる」(吉田氏)
そんな問題意識を持ち続けてきたリアルコムは、2008年11月から独自のKPOサービスを開始した。その内容は3つに分けられる。
1つは、「ナレッジマネージャKPO」だ。情報発信ルールに基づいたリアルタイムな情報流通モニタリングアセスメントや、情報ライフサイクル管理のプロセスに従った情報資産棚卸、社内の情報発信サイトやメールマガジン作成・更新を代行するライブラリアン派遣など、ナレッジマネジメント事務局の業務を引き受ける。
2つ目は、「社内ヘルプデスクKPO」。社内の専門業務の問い合わせ受付、回答業務の代行、蓄積された問い合わせ履歴のFAQ化、現場のニーズからの業務改善提案などを行う。
そして3つ目は、「ドキュメンテーションKPO」である。分かりにくい業務マニュアルの編集や提案書・成果物の作成代行、サニタイズ(顧客名の消去)、現場の知識をヒアリングにより吸い上げ体系化するといったメニューだ。
ただし、単に業務代行をするのではなく、顧客のレベルアップのために専門家によるトレーニングをはじめ、ドキュメントガイドラインやテンプレートの作成も並行して行っている。それを実践することで、ナレッジマネジメントのスピードアップ、スパイラルアップが可能になるという。
「KPOの目的は面倒な業務の安価な外部委託ではなく、現状の業務を定型化し切り出せるようにすること。そうすれば、仮にKPOを中止してもナレッジが社内に残り、知識の空洞化が起こらない」(吉田氏)
そして、今後リアルコムは、ITのクラウド(cloud)と人のナレッジのクラウド(crowd)がセットで提供されることの効果を期待して、さらにサービスを発展させていく考えを持っている。
例えば、データ分析業務をSaaSとセットで提供することで、オンラインでExcelデータを送信すると翌朝には分析レポートとして戻ってくるといったサービスや、Microsoft Exchangeと連動しアポイントのスケジュール調整をリアルタイムで行ってくれるオンライン秘書のようなサービスなどのアイデアがあるという。
このようなナレッジ活用は、とかくタテ割り組織で保守的な日本企業にとって大きなチャレンジとなるかもしれない。2010年からの新たな10年を歩むにあたり、リアルタイムなナレッジマネジメントを活用して、品質を保ちつつ、業務のスピードアップと選択、集中を図る企業が増えれば、日本も再び「高い品質と生産性」を兼ね備えた国として脚光を浴びることができるかもしれない。
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