本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの代表取締役執行役員社長を務める遠藤信博氏と、富士通の取締役執行役員専務、加藤和彦氏の発言を紹介する。
「NECがこれからビッグローブを伸ばしていくのは難しいとの感触を持っている」 (NEC 遠藤信博 代表取締役執行役員社長)
NECの遠藤信博 代表取締役執行役員社長
NECが先頃、2013年度上期(2013年4~9月)の連結業績を発表した。遠藤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、一部メディアが報じた子会社のNECビッグローブの売却をめぐる話について問われて答えたものである。
まずは連結業績の内容を記しておくと、売上高が前年同期比4.5%減の1兆3831億円となり、営業利益は同99.2%減の4億円と黒字だったものの、経常利益は前年同期から444億円減の145億円の赤字、当期純損益も同341億円減の262億円の赤字となった。
この結果について遠藤氏は「売上高は社内計画よりも300億円程度上ブレしたものの減収となった」と語り、パブリック(官公、公共、医療、金融、メディア向け)とエンタープライズ(製造、流通・サービス向け)の両事業は増収だったものの、スマートフォンから撤退した携帯電話事業や、前年同期に大型案件があったシステムプラットフォーム(ハードウェア、ソフトウェア、企業ネットワークなど向け)事業の落ち込みが響いたと説明した。
また、営業利益については黒字を確保したものの、携帯電話事業の赤字や、システムプラットフォーム事業およびテレコムキャリア(通信キャリア向け)事業の落ち込みにより大幅に減益。当期純損益の赤字は、携帯電話事業関連で約110億円の特別損失を計上したことが大きく影響したという。
このように上期の業績は厳しい結果となったが、遠藤氏は上期の受注状況として、パブリック事業が前年同期比18%増、エンタープライズ事業が同8%増と好調に推移していることなどから、売上高3兆円(前期比2.3%減)、営業利益1000億円(同12.8%減)という通期見通しは据え置くと説明した。
こうした業績の内容もさることながら、会見で質問が相次いだのは、一部メディアが報じた子会社のNECビッグローブの売却をめぐる話についてだ。遠藤氏は冒頭の発言の理由を次のように語った。
「ビッグローブを今後大きく伸ばしていくためには、インターネット接続サービスだけでなく通販などの一般消費者向けサービスをさらに強化していく必要がある。一方で、NECは中期経営方針として社会ソリューション事業への注力を打ち出していることから、目指す方向が違っていく形になる」
NECは現在、NECビッグローブの株式の78%を保有しており、売却先が決まればこれを手放す方針を固めているようだが、会見での遠藤氏は「どうすればビッグローブをさらに伸ばせるかを模索している」とのコメントにとどめていた。