IT系企業につきものなのが、カスタマーサポートだが、日本におけるPCメーカーのサポート対応は、日本勢と海外勢で2極化しつつあるようだ。
サポート満足度で最近元気なのは日本のメーカーだ。松下電器産業、東芝、富士通といった企業が日経ビジネスの2007年「アフターサービス満足度ランキング」で軒並み順位を上げている。例えば、松下電器産業。今年5月から法人ユーザーに出張サービスを開始、保証期間中なら無償で修理する。またウェブを見直して特に初心者へのサービス改善に取り組んだことが評価されているという。原点回帰でヒューマンタッチに力を入れた点が、日本勢の勝因だ。
一方、海外勢はどうだろうか?
1990年代後半から2000年代前半、札幌や宮崎、沖縄が雇用創出のためにサポート用のコールセンターを誘致するケースが多かったが、外資系PCメーカーはさらにコスト削減を図るべく数年前から海外にコールセンターを設置するケースが出てきている。そこで今注目を集めているのが中国東北部の大連だ。外国企業誘致に熱心な大連市には日本法人のデルと日本HPのコールセンターがあって、日本のユーザーから問い合わせを受ける体制になっている。
しかしその道のりは平坦ではない。現地スタッフの日本語能力がサポートの品質を左右するからだ。 そこで、デルの場合、国内の川崎にあるコールセンターで処理しきれなくなったときに大連に回すように優先度をつけて対応するようにしているという。大連でも日本語でのサービス向上のために手は打っている。モチベーションを高めるためにインセンティブ制度も充実させ、中国人の大卒社員の給料が平均月2,800〜2,900元(約44,000円前後)のところ、デルでは優秀な人は5,000元(約78,000円前後)をもらう例もあるという。また、他薦自薦問わず、優秀な人はグループ社内のイントラネットで「この人が良い仕事をしています」と紹介している。実際、顧客のアンケートを基にした「解決率」のスコアも上昇しているなど、人材育成への取り組みは着実に進んでいるようだ。
HPはどうか?HP関係者によると、問い合わせの電話の内容が高い技術レベルを必要とするときは日本国内のコールセンターで対応し、そこまでのレベルが要求されないときに大連で対応するように役割分担しているという。大連ではさらに給与水準も向上していて、地元では結構な人気企業になっているそうだ。ユーザー第一を考えることが結局好循環を生み出していくという、一つの典型事例だろう。
以上、企業の対応を概観してきた。ここでカスタマーサポートについてもう一度考えてみたい。PCは買いきり商品であり、ある意味消費財ともいえる。しかしPC上で大切な情報を扱うこともあり、サポート体制やアフターサービスが重要視される運命にある。また利用目的が多種多様にあり、ユーザーは決してハードとしてのPCを買うだけでなく、その使い勝手も買っているといえるだろう。サポート体制はとかくトラブルシューティングばかりに目がいきがちだ。しかし、あるパソコンメーカーでは、トラブル未然防止のためのリモート点検や電話による相談アドバイスを有料で提供しており、PCの使い方を拡げるための情報やサービス提供がすでにスタートしている。ユーザーのレベルに合わせたサポート体制に加え、有効に使い続けるための価値ある情報やサービスをタイムリーに提供していくことが求められているのだろう。とすると、まだまだ新しいビジネスモデルが実は隠れているのではなかろうか。
ユーザーに提供する価値をハードの提供に限らず、ポスト購買サービスに広げていく、それをトラブル解決に限定せず使い勝手の向上に広げていくことは、IT全般の課題であると同時に魅力的なビジネスモデルの発想につながる。ブランドという無形資産の形成を念頭に置くなら、サポートコストは「投資」であり、どんなリターンを得るべきか考察することが重要なヒントをもたらすだろう。技術トレンドも見逃せない。SaaSなどが本格化し、ユーザーがハードを意識せずに使いこなせる時代が到来すれば、サポートもそれに合わせて進化する必要がある。いずれにしても、ITベンダーは「買ってもらう」から「使い続けてもらう」に軸足を置いてサポートの将来を見越すことが重要だ。
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