アメリカの自治体によるIT化への取り組みが熱い。水道や電気のように、インターネットアクセスを公共サービスとして無線LANで提供しようとする自治体がすでに150を超えている。無料か低料金でネットアクセスを可能とすることで、住民の情報格差(デジタルディバイド)を解消しようとするだけでなく、行政サービスの画期的な向上が見込まれるのだ。警察は監視カメラの遠隔操作や、現場からの犯罪関連情報へのアクセスが可能となるほか、消防も現場建物の設計図や内部の要介護住民の情報も瞬時に現場の端末に表示できる。
テキサス州のコーパス・クリスティ市では、ガス・水道・電気メーターの検針作業も無線LANで自動化され、検針員2人分の働きをしている。また、信号の遠隔操作や救急隊員への患者情報提供などにも無線LANを利用している。
NYのとなり、ニュージャージー州オーシャンシティ市では「未来型のハイテクITビーチ」を目指し、無線LANインターネット接続とRFID(無線識別)タグを組み合わせたシステムを来年夏までに導入することを決め話題になっている。300万ドル(約3億6000万円)におよぶ大ITプロジェクトだ。ICタグの付いたリストバンドひとつで、クレジットカードに連携してビーチへの入場料や飲食の精算ができるだけでなく、ビーチの人出の数に比例した警察官の効率的配備、迷子のお知らせや親と離れて子供だけがビーチに出そうな時、登録された家族の携帯電話にメール送付することが可能となるなど、夏のビーチであたりまえの風景となっている多少の不便、不安、混乱が驚くほどに解決されてしまう。ビーチの運営業者は民間会社に委託され、一段と効率化が進む。結果として集客数の増大による入場料収入と広告収入の増大、公共ビーチ施設の活性化に結びつき5年間で数十億円規模の利益まで出るという。さらにゴミ箱にも太陽電池とセンサーを使用して収集時期を自動送信するなど、環境対策までも盛り込んでいるという。
IT化の波は、日本でも地方自治体に押し寄せ、地域住民への一層のサービス向上と業務効率化による財政コスト削減の両立が求められている。日本でもやっと「電子自治体」への取り組みが始まっているが、自治体がITをどう利用すれば画期的なサービス提供とコスト削減を実現できるのか、利用者住民にはまだ見えてこない。
ガートナージャパンが3月に発表した「IT投資目的の日米比較調査」によると、日本企業は「業務効率化」「コスト削減」「生産性向上」に集中し、現場体質強化のための「守り」の投資を重視しているのに対して、北米企業はこうした「守り」に加えて日本では重視されていない「顧客満足度の向上」「新規ビジネス・製品の開発」「新規顧客獲得」など競争優位を意識した「攻め」の投資を重視しており、IT投資の姿勢に日米で大きなギャップが見られた。IT投資は民間企業へのアウトソースに頼る自治体においても、この日米の差は顕著に表れていると言えよう。
ITをフル活用して「快適・安全・効率的で便利」、「生活者の困ったことを解決」といった視点が盛りだくさんの発想に転換すれば、公共サービスのコスト削減のみならず活性化や採算性の向上が実現する。公共施設はIT投資で息を吹き返す、こうした事例は日本でも早晩見られるようになるであろう。地方自治体にとって「三方一両得」のような発想で、行政、利用者、アウトソーサー(受託業者)ともに利益のある米国の方策は、日本の自治体の近い将来のモデルとなるのではないだろうか。
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