Web2.0がインターネットに変革をもたらしたように、その波は企業内情報システムにも及び始めている。「エンタープライズ2.0」の起源―Web2.0のツールを企業内に活用することをハーバード大学ビジネススクールのアンドリュー・マカフィー准教授が2006年春に提唱して以来、アメリカでは特にIT業界や金融業界で活発な取り組みが進んでいる。今年5月の報告(Nemertes Research)によると、ブログを採用した米企業は20%弱、Wikiは32%、RSSは23%に及んでいる。また、別の調査(Forester Research)では、従業員500人以上の米企業では約3分の2がこうしたツールを導入したか、導入することを検討している。
従業員16万人の米銀行大手Wells Fargoでは、新たな社内コミュニケーション・ツールとしてブログとWikiを導入し、商品情報からマーケティング資料、ニュース、報告書まで自立的に情報共有が進んでいる。また、従業員5万5000人の米証券大手Morgan Stanleyでは、クライアントも参加してのオンライン・コミュニティーやWikiなど、Web2.0を活用した社内プロジェクトが現在70-80も進行しているという。
こうした企業が目指すのは、単にテクノロジーやツールの導入による社内ナレッジの有効活用に止まらない。もともとWeb2.0は、ユーザーが管理されずに自発的に発信していくオープン志向・分散型・双方向・参加型といった環境下で生まれてきている。その考え方や文化を企業は社内に持ち込み、セクションごとの垣根を取り払い、社内ネットワークで集合知を活用することを目指している。
しかし、こうした狙いが実現するかどうかは、導入する企業の意識しだいだ。従来のナレッジ・マネジメントはナレッジを管理することを前提としてきた。一方、Web2.0は自主的で管理とは無縁の開放されたネット社会で実現した。エンタープライズ2.0をナレッジ共有のツールとして、もしくはコストダウンの一環として導入することも可能だが、「本物の2.0の果実」を得るには、導入する側の相当の意識変革が必要となってくる。
エンタープライズ2.0は、日本でもようやくブログやSNS、Wikiを社内で導入する企業が出てきたばかりだ。しかし、そうしたツールを導入したからと言って、すぐにその効果や金銭的見返りを期待できるものではない。導入する企業に求められているのは、閉鎖的で中央集中型、一方的な上意下達、言われなければ動かない、そんな従来の社内風土から脱却する、企業の意識変革だ。経営陣あるいはCKO (Chief Knowledge Officer)は、ナレッジを管理するのではなく、ナレッジを持つ社員がより効率的に自主的に働きやすい環境を整え、従来の組織とは異なる社内コミュニティーに参加しやすい環境を作ることが肝要だ。そうして利用者が主体的に皆で作り出すものから、「本物の2.0の果実」が生まれてくるだろう。
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