2002年からIT業界で注目されていたキーワードのひとつとして、グリッドコンピューティングが挙げられるだろう。2003年からは大手ベンダーがグリッドに関連する製品やサービスを相次いで発表していた。
2003〜2004年のグリッドは、サーバ群を有効活用できて素早い処理ができる、さらには情報システムの存在そのものをも変えるとまで言われ、ベンダーの熱は高まっていたのである。
しかし、2005年になるとグリッドコンピューティングはあまり注目されなくなっており、もちろんベンダーの取り組みが全くなくなったわけではないが、以前ほどの勢いはなくなりつつある。代わりに話題になっているのが、システム基盤技術で言えばSOA(サービス指向アーキテクチャ)、Xenなどに代表される仮想化ソフトウェアといったところになるのではないだろうか。
何がグリッドか
企業の情報システムにグリッドが普及しているのかどうかについて、ガートナー ジャパンで企業向けシステムの基盤技術を調査する亦賀忠明氏は「普及していない。グリッドは、ガートナーのハイプ曲線で言えば、幻滅期に入ったということになるだろう」(亦賀氏)という見方を示している。
「グリッドに対する期待が大きかっただけに、幻滅も大きかったと言えるのではないだろうか。現在、グリッドというキーワードは忘れかけられている」(亦賀氏)
グリッドが忘れかけられている理由のひとつとして、亦賀氏は「もともと定義がはっきりしていなかった」ことを指摘している。グリッドについては、IBMやSun Microsystems、Hewlett-Packard、Oracleなどベンダーごとにその定義が異なっている。一般的にはクラスタと呼ばれるものをグリッドとしているベンダーも存在する。
IBMやOracle、富士通、NECなどの企業や研究機関で組織される団体「Global Grid Forum」(GGF)は、グリッドの国際標準規格を定めており、2003年にグリッド技術のフレームワークでもある規格「Open Grid Services Architecture」(OGSA)が決められている。
このOGSAは、グリッドとWebサービスを結びつけることを目指していたのだが、これにより「グリッドとはどういうものであるのか混乱が大きくなってしまい、グリッドの定義やメリットはますます分からなくなってしまった」(亦賀氏)。このような混乱が原因となって、「ベンダーに聞いてもグリッドがもたらすメリットがあまり明確ではない。その結果として、ユーザーにとって目に見える形でのメリットがなくなってしまっている」と亦賀氏は分析している。
仮想化やSOAとの共通項
2003〜2004年に比べて注目されることが少なくなってきているグリッドだが、今後はどうなるのだろうか。グリッドの行方について亦賀氏は、こう語る。
「かつてグリッドとクラスタは、どこが違うのかという議論があった。もちろん実装という点で両社は違う。しかし、グリッドとクラスタは概念として明確に分ける必要がない。というのは、どちらも複数のノードをつなげて処理するという点で、同じことをやっているからだ」
確かに、グリッドもクラスタも、実装に使われる技術、全体の規模感などでは異なるのだが、ネットワークを通じて複数のノードをつなげるという根本思想は同じといっても言い過ぎではないだろう。もちろん現段階で、「信頼性で比較すると、クラスタという選択肢にならざるをえない」(亦賀氏)。
続けて亦賀氏は「考え方や概念としてグリッドが生き残るのは確実」と言い切る。今後普及すると見られる「センサーネットワークの可能性を考えても、グリッドが必要になることは確実だ」(亦賀氏)。
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