気づいていますか?――IT設備の本当の課題

現在、日本企業のデータセンターの多くが、老朽化によって「移転か、延命か」の岐路に立たされているという。だが一方で、ITのトレンドは絶えず変化しており、自社のデータセンターをどうしていくかを正しくジャッジするのは簡単なことではない。だとすれば、企業は何を手がかりに、データセンター最適化のシナリオを描けばよいのだろうか--。以下、この難題への答えを、IBMの前田 啓介氏に求める。同氏は、ファシリティ・マネジメントのスペシャリストであり、データセンター改革のプロジェクトも多く手がけてきた人だ。

知らないことの危うさ

 「正直、日本企業のデータセンター施策には、かなりの危うさを感じています」――。

 こう語るIBMの前田氏は、一級建築士として建設業界でキャリアを積み、IBM入社後は、いわゆる「ファシリティ・マネジメント」のスペシャリストとして、インテリジェント・ビルや省電力データセンターなどのプロジェクトに数多く携わってきた。

 そんな氏が、データセンター改革のコンサルテーションを通じて目の当たりにしてきた日本企業の現実--。それは、ファシリティ・マネジメントの理想形からはほど遠いものであったようだ。

 果たして、日本企業のデータセンターが内包する問題とは何なのか。その問題を解決し、データセンターの最適化と、それによるビジネス・メリットの最大化を追求していくためには、何が必要とされるのか。

 編集部の問いかけに、前田氏が答える。

―― 担当直入にお聞きします。日本企業のデータセンターの何が問題なのですか。

前田氏(以下、敬称略):まず言えるのは、老朽化です。

 例えば、一部でのデータでは2012年の段階で、築20年を超えたデータセンターの割合が4割近くに達したとの見方があります。

 建造物としてのビルの寿命は40~50年とされていますが、24時間365日フルに稼働しているデータセンターの場合、ファシリティが酷使され、一般的なオフィス・ビルよりも確実に寿命が短くなります。ですから、築20年以上のデータセンターは、寿命が来る日もそう遠い話ではなく、「移転か、延命か」のジャッジを待ったなしで下すべき状況にあるのです。ところが、そんなデータセンターを保持する多くの企業が、現在の差し迫った状況に気づいていません。これは深刻な問題と言えるのではないでしょうか。

――建物の寿命が近いなら、「移転」しか道はないと思うのですが。

前田氏:仮に、「移転」を決断したとしても、すぐに移転が完了できるわけではありません。(システムの規模にもよりますが)大抵は、システムの移設には4年から5年の時がかかります。我々が遭遇したあるお客様の例では、移転に10年もかかることが判明し、結局、「延命」の道を選びました。

――つまり、最終的に移転を決断したにせよ、当面は既存のデータセンターを使い続けなければならないと

前田氏:それは確かです。また、コストや環境保護の観点から言っても、「延命」の措置によって、既存の建物を限界まで使い続けることは大切です。さらに今日、建設資材の高騰や建設業界の人手不足もあり、データセンターの新設コストが昨年比の1.4倍程度にまで膨らんでいると言われています。ですから、自社のデータセンターの限界に気づき、慌ててデータセンターを新設しようとしても、想定以上の金銭的負担を強いられるおそれもあるのです。

ITとファシリティ・マネジメントの隔絶

―― データセンターを「延命」すると言っても、単純な「現状維持」にも問題があると思いますが。

前田氏:それは当然です。大切なのは、ITとファシリティの計画を同期させ、しっかりとした延命のプランを立てることです。

 言うまでもなく、データセンター・ファシリティは、時とともに「物理的劣化」(物性的要因による建物躯体・構造物の劣化)が進みますが、併せて、「機能的劣化」も進みます。機能的劣化を簡単に言えば、ITサイドが求める性能と、実際のファシリティ性能とのギャップが広がることです。

 例えば、10数年前の19インチ・ラックは、必要電源が1ラック当たり4kVAでしたが、現在のラックはその5倍の20kVAに及んでいます。その変化にデータセンターの電源設備が追いついていないのであれば、それは機能的劣化と言えるわけです。

 データセンターにおけるファシリティ維持保全の基本フローは、5年~10年刻みで保全計画の見直しや小・中規模の改修を行いつつ、20年に1回程度の大規模改修によって、要求性能と実性能とのギャップを一挙に解消するというものです。そして、データセンター・ファシリティの「経済的劣化」が進み、修繕・改修コストが改築・更新のコストを上回るようになった段階で、データセンターは解体寿命を迎えることになります。

 このプロセスの中では、ITサイドの施策・計画をベースに、改修・リニューアルの適切なタイミング/コストを見定め、実効性のあるプランを立て、遂行していくこが重要です。仮に、ITとファシリティ・マネジメントの隔絶によって、適切な改修・リニューアルの機を逸すると、データセンターが、その解体寿命を迎える以前に、継続利用が困難になる場合もあるのです。

―― そもそもデータセンターは、ITを稼働させるための器です。そのファシリティの維持保全計画と、ITの戦略・計画は同期していて当たり前だと思うのですが、実際にはそうではないのですか。

前田氏:少なくとも、私が見てきた限りにおいては、ITとファシリティの計画を同期させている企業のほうが少数派です。

 例えば、大手の製造企業の場合、ITシステムはIT部門が管轄していますが、データセンターのファシリティはITの専門家ではない設備部門が取り仕切っています。そして大抵の場合、設備部門のほうがIT部門よりも発言力が大きい。ですから、IT部門がデータセンターのファシリティに危機感を抱き、改善の要求を出しても、設備部門サイドから「現状でも動いているのだから問題はない」と突き返され、ITサイドは不安の中でシステムを回し続けるケースが珍しくないのです。

データセンターは もっと高効率になれる

提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2015年4月30日
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