ソフトウェアでストレージ・サービスを実現する、あるいはソフトウェアでストレージを抽象化・仮想化して統合管理する、そうしたソフトウェア主導のストレージ、SDS(Software Defined Storage)にいち早く取り組んできたのがIBMだ。
ここでは、主要なストレージの課題解決に役立つIBMのSDSソリューション、
「IBM Spectrum Virtualize」と「IBM Spectrum Scale」を紹介しよう。
SDSの領域を包括的にサポートする「IBM Spectrum Storage」ファミリー
x86が標準となってコモディティ化が進んだサーバーと異なり、ストレージの世界では、ベンダーごとに異なるアーキテクチャーの製品が現在も主流である。その独自性は、性能・コスト・管理などの差異となり、ベンダーの競争力を生み出す原動力になっているわけだが、同時にストレージのハードウェア依存という問題の原因にもなっている。ハードウェア依存から生じる問題は、ベンダーやモデル毎に運用・管理が異なり、データも分断されるサイロ化の問題と、性能や拡張性がハードウェアによって制限されるスケーラビリティの問題に大別できよう。これらの問題は、運用・管理のコストや効率性、データの量や質の増加への対応、システムの信頼性・可用性、災害対策、セキュリティなどに少なくない影響を与える。
こうしたストレージの問題を解消する切り札として注目されているのが「Software Defined Storage」(SDS)、ストレージの機能をソフトウェアに分離することで、ハードウェアに依存しないストレージを実現するアプローチだ。
そして、SDSへの期待が高まる中、IBMが2015年2月に発表したSDSソリューション群が「IBM Spectrum Storage」ファミリーである。現在、同ファミリーには下表の6製品がラインアップされている。
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登場から間もない「IBM Spectrum Storage」だが、この名前はブランド統一のために与えられたものであり、それぞれの製品はSDSという用語が生まれる以前から顧客に提供され、国内外で豊富な実績がある。
以下では6製品の中でも、先ほど挙げたサイロ化の問題と、スケーラビリティの問題を解決するソリューション、「IBM Spectrum Virtualize」と「IBM Spectrum Scale」を紹介しよう。
ストレージのサイロ化を解消する「IBM Spectrum Virtualize」
「IBM Spectrum Virtualize」(以下、Spectrum Virtualize)は、マルチベンダーのSANストレージの統合運用を可能にする仮想化ソリューションだ。
2003年から「IBM SAN Volume Controller」(SVC)の名前で提供されてきた製品であり、対応するSANストレージは300種類以上、機能や容量の異なるSANストレージを束ねて、仮想的なストレージ・プールを構成することができる。仮想化を導入するために新しいストレージは必須ではなく、既存のSANストレージが対応していれば投資を抑制することができる。従来であればストレージ・ システムに個別に導入されていた多くの機能がサイロ化を引き起こす原因にもなっていたが、Spectrum Virtualizeは仮想化ストレージ全体にわたって機能を標準化し、柔軟性を高めてコスト削減ができるのだ。その特長は、単にSANストレージを仮想化するだけでなく、高効率なリアルタイム圧縮機能や階層化機能も備えていること。
まず、高効率なリアルタイム圧縮機能は、オンライン・データやバックアップ・データを問わずストレージの物理容量の最大5倍のデータを収容可能にする。また、Spectrum Virtualizeの階層化機能は、ハードウェア自体が階層化に対応していないストレージも、最新のオールフラッシュ・ストレージも、ストレージ・プールの階層に組み込むことができる。
これらの機能は、ストレージの経済性を向上し、過去の投資を保護するうえで非常に有用である。例えば、最近は大量データの高速な分析を可能にするIT基盤としてオールフラッシュ・ストレージが注目を集めているが、コスト高であることは否めない。Spectrum Virtualizeを使えば、圧縮機能により実質的な容量単価を下げることができるほか、従来のディスク・ストレージと組み合わせることで、高速かつ大容量な階層化ストレージをコスト効率よく構成することもできる。
一方、旧型になった既存ストレージの延命にもSpectrum Virtualizeは有効である。通常、性能や機能、容量が見劣りするようになった旧型ストレージは、システム更改のときに置き換えるものだが、Spectrum Virtualizeを使えば、そうしたストレージでもリアルタイム圧縮やシンプロビジョニングなどの最新ストレージ機能が利用できるようになり、無駄なく使い続けることができる。
なお、管理者はアプリケーションを稼働させたまま、ストレージ・プール内の異なるストレージ間での透過的なデータ移動ができるため、ビジネスを中断させることなく、ストレージの柔軟な管理が容易に行えるようになる。
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ちなみに、可用性・対障害性を高めるために、Spectrum Virtualizeのコントロール・ノードは、複数ノードによるクラスター構成を取ることもできる。また、災害対策のために遠隔地にあるデータセンター間でレプリケーションを行うことも可能だ。