
企業経営におけるITの活用といえば、ERPをすぐに思い浮かべるだろう。そのERPに加え、最近注目を集めているのがEPM(Enterprise Performance Management)あるいはCPM(Corporate Performance Management)と呼ばれる企業のパフォーマンスマネジメントだ。ERPは、発注から支払い、商品や部材の調達から支払いといった、個別業務プロセスを標準化し、それを最適化するものだ。対してEPMは、企業全体のパフォーマンスを最適化する仕組みだ。
日本オラクル 製品戦略統括本部 Grid/EPM/BIビジネス推進部 担当ディレクターの岩本浩央氏は、EPMが注目される理由は3つあると言う。
日本オラクル株式会社1つめは「企業の透明性」に対する要求だ。株主に対し財務情報を適切に開示するだけでなく、たとえば従業員もステークホルダーの一員と考え、情報を適切に公開し自分の業務がどのように業績に貢献しているかを測ってもらう。企業が規制や法律などに対応し受身で行動するのではなく、積極的な情報開示を行うことで、あらゆるステークホルダーと企業間で好循環を起こす。そのために、EPMが必要となる。
2つめの理由は、グローバル化への対応だ。成長企業のほとんどが、海外展開を積極的に行っている。昨今は、各国拠点の財務情報を統合し、迅速に開示する要求が日増しに強まっている。また、財務情報に加え在庫情報なども、本社だけではなく世界規模でリアルタイムに把握し、適切な管理を行いたい。各地のさまざまな情報を横串で見て、それをグローバル経営に役立てるために、EPMを活用するという。
3つめは、企業をとりまく社会情勢の変化がある。目前の日本版SOX法に対応し安心している暇はなく、企業は早急に国際会計基準に自社の会計の仕組みを適合させなければならない。
「企業は、日本会計基準と国際会計基準とのコンバージェンス(収れん)の必要性に迫られています。日本の会計基準は2011年6月までに、国際会計基準と基本的に同等なレベルになります。また、2010年4月以降は、事業活動別、所在地別、顧客別などさまざまな軸で集計した会計情報を開示する、セグメント情報開示も始まります。これらの実現には、EPMで経営とITの一体化を実現した柔軟な仕組みが必要となります」(岩本氏)
ERPで個別業務プロセスの最適化が進んでも、蓄積された情報を分析・管理する手法はシックスシグマやスコアカードなど、プロセスごとにさまざまなものが採用されているのが普通だ。これでは分析結果を個々のプロセスの範囲では活用できても、全社規模で情報を生かすことが難しい。また、このように業績管理プロセスが「サイロ化」してしまっては、全社規模で共通のKPIを持つことができず、分析結果に不整合や矛盾も発生するかもしれない。そして、多くの場合は限定的な情報の分析、見える化までは実現できても、その結果を経営管理のレベルから評価・分析・予測を行い、それを業務プロセスにフィードバックする機能は持っていない。
単にERPに分析機能を付加したものがEPMではない。まずは、現場担当者のコミュニケーションレベル、業務管理層のオペレーションレベル、そして経営層の経営マネジメントレベルという社内の組織的なピラミッドの各レベルで、「目標の設定」「計画策定」「モニタリング」「分析」「報告」「調整」という業績管理のサイクルを回す。最終的にはこれら3つのレベル全体で、マネジメントサイクルを構築し運用するのがEPMだ。
「Oracle EPMのビジョンを一言で表すと、戦略のゴールを実業務のオペレーションに反映させることです。他社のパフォーマンスマネジメントのソリューションの多くは、近視眼的に情報を見ることはできても、管理サイクル全体を実現するには至っていません。」(岩本氏)
ERPを用いグローバルで業務標準化と情報の一元管理を実現する。それに加えEPMでマネジメントサイクルを確立し、戦略ゴールを実業務オペレーションにリンクさせる。このとき始めて、グループ経営の最適化されたプラットホームが構築される。ERPとEPMの相乗効果で、企業価値が最大化されるのだ。