体験したから見えてくる── OpenStackの検証・選定 「ここがポイント」

フリービットは2016年、レッドハットのOpenStackディストリビューション「Red Hat OpenStack Platform」を用いたプライベートクラウド基盤を構築した。オープンソースソフトウェア(OSS)であるOpenStackには複数のディストリビューションが存在する。その中から、どのようなプロセスを経てレッドハットのディストリビューション採用へと至ったのか。今回は、その選定と検証のプロセスを掘り下げる。そこからは、OpenStackという新技術を導入するうえで留意すべきポイントが鮮明に見えてくるはずだ。

内藤 聡氏
レッドハット株式会社
テクニカル・セールス本部
シニアソリューションアーキテクト
OpenStackチームリード
井口 幸一氏
フリービット株式会社
YourNet事業部
副事業部長
亀田 和大氏
レッドハット株式会社
エンタープライズ営業統括本部
第3営業本部
セールスマネージャー

経済的合理性の観点から候補にふるいをかける

 インフラ運用管理の負担を軽減し、本来業務であるサービス開発に専念できる環境を構築する──。この目的の下、フリービットではレッドハットのOpenStackディストリビューション「Red Hat OpenStack Platform」(以下、RHOSP)を導入、同プラットフォームを使ってプライベートクラウド基盤を構築した。

 このプロジェクトの概要を紹介した前回の記事『OpenStackによる革新に踏み切ったフリービットの選択と戦略』では触れられていないが、フリービットではOpenStackの採用を決意したのち、およそ半年の期間をOpenStackディストリビューションの選定・検証に費やしている。

 このプロセスにおいてまず行われたのは机上で候補を絞り込む作業だ。こうした机上選定では一般的に、導入候補が持つ機能を列挙し、サポートする機能の多い少ない、あるいは優劣で候補が絞り込まれていく。しかしフリービットは今回、そうした機能的な「星取り表」に頼った選定は行わず、実際の運用を想定した独自の基準で候補の取捨選択を行った。この点について、OpenStack導入プロジェクトを指揮したフリービットの井口幸一氏(YourNet事業部 副事業部長)は、こう説明を加える。

 「OpenStackは新しい技術ですし、我々にとってまったく未知の存在でした。ですから、機能をいくら見比べたところで、実機によるPoC検証を行わないかぎり、実際の運用性がどうなのかはわかりません。そのため、机上選定の段階では、機能の優劣よりも、ライセンス体系やOpenStackに対するディストリビューターのサポート能力・技量といったポイントを重点的にチェックしていったのです」

 井口氏によれば、この評価の軸に据えたのは、経済的合理性であったという。

 「例えば、同じOpenStackのディストリビューションであっても、サーバ5台から運用できるものから、最低でも8台のサーバを必要とするものまでと多種多様です。加えて、各ノードに必要とされる最低CPUコア数にも差異があるほか、ライセンス体系についても、ソケット単位で課金されるものもあれば、ノード単位のものもある。そうしたディストリビューションの中で費用的に最も無駄の出にくいものはどれかという観点から候補にふるいをかけました。また、OpenStackを動作させるハードウェアの経済的合理性も重視しました。我々はコモディティハードウェアの特性を最大限活用し、仕様を満たす一番安価な提案を採用するため、調達するたびにベンダーが異なる場合があります。ですから、コモディティ特性を活かしつつ、それらのハードウェアとの互換性が確保されているかどうかも、ディストリビューションを選ぶうえでの大きなポイントとなりました」(井口氏)。

ディストリビューターの技量をOSSへの貢献度で評価

 上述したとおり、井口氏らはOpenStackに関するディストリビューターの技量を推し量ることにも力を注いだ。その際に用いた指標はコミュニティへの貢献度だ。

 「OpenStackコミュニティの情報をチェックすると、各ディストリビューターがコミュニティに供出したコードの行数や、そのコードに対するコミュニティのコミット数がわかります。それを独自に集計し、それぞれの貢献度を定量的に可視化しました。また、そのときにはOpenStackのバージョンごとの集計値も出し、OpenStackに対して継続的に貢献しているかどうかも確認しました。これによって、OpenStackに対するディストリビューターの意欲やサポート能力、技量を推し量ることができるのです」(井口氏)。

 こうした机上選定によって、井口氏らは導入候補を2つのディストリビューションに絞り込み、最終選定の作業──つまりは、実機を使ったPoC検証のフェーズへと歩を進めた。PoC検証の対象とした2製品のうち一つは、もちろんレッドハットのRHOSPだ。レッドハットは、OpenStackのすべてのバージョンについて常に貢献度が高く、「貢献度の総合評価で第1位だった」(井口氏)という。またもう一つの候補は、OpenStackへの貢献度がレッドハットに次いで高かったベンダーのディストリビューションである。

実運用を意識したPoCを展開

提供:レッドハット株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2017年3月31日
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