掲載日時: 2005-06-01 12:10

ノートPCが身体に悪影響--米研究者が警鐘

シリコンバレーで働くあるソフトウェアエンジニアが仕事でノートPCを使い始めたとき、これが原因で3カ月の療養休暇を取るはめになるとは予想だにしなかった。

著者 : Alorie Gilbert (CNET News.com)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20084047/

 仕事でノートPCを使い始めたRam Viswanadhaは、古くさいデスクトップPCを棚にしまい込み、二度と使用しないと心に決めていた。ノートPCは、サイズにおいても、スピードやメモリ容量においても、これまでのPCとは比べものにならなかったからだ。

 30歳になるSilicon ValleyのソフトウェアエンジニアViswanadhaはしかし、4年間にわたりラップトップの前で背中を丸め続けた結果、同じ運動を異常なほど繰り返すことにより起こる反復運動過多損傷を負い、3カ月の療養休暇を取るはめになるとは予想だにしなかった。

 Viswanadhaのケースは、職場における人間工学の観点から見て最悪の例だが、国内の医師や人間工学専門家らは、今日ではこうしたことは珍しくないと話している。医師の話では、デスクトップPCの代わりにノートPCを使用して、1日の業務のすべてをこなすようになれば、痛みやこり、怪我などに悩まされるホワイトカラー労働者が増加するという。

 「ノートPCは、デスクトップPCの代替となるようにはデザインされていない」と語るのは、コーネル大学のHuman Factors&Ergonomics LaboratoryディレクターAlan Hedgeである。「ラップトップは、出先などで予備的に使用するために設計されたものだ。1日8時間、年間52週間、仕事で毎日使用するようには作られていない」(Hedge)

 米労働統計局の発表によると、民間企業に勤める9200人以上の労働者が2003年に、キーボードの使用に起因する負傷で1日以上仕事を休んでいるという。また、このうち92%は、仕事中の姿勢が原因でこうした負傷を負ったという。また、1カ月以上の休職に追い込まれるケースは全体の3分の1を占めた。

 ノートPCの使用に起因する負傷についての統計データはほとんどないが、医師らは、ラップトップを過度に使用し続けたと訴える新たな患者が引きも切らないと述べている。ノートPCの売れ行きが好調なことを考えれば、これは驚くには値しない。市場調査会社IDCによると、2004年のノートPC世界出荷台数はおよそ4900万台で、2000年から倍増しているという。またIDCは、現在のノートPC販売台数はコンピュータ市場の4分の1以上を占めており、2008年までにはアメリカ国内でデスクトップPCとのシェアの逆転が起きると予測している。

 ノートPCの最大の問題点は、画面とキーボードが非常に近くに配置されているということだ。周辺機器を利用しない場合、ユーザーには2つの選択肢が残されるが、そのいずれも姿勢の改善にはつながらない。すなわち、首を前に傾けてモニターを見るか、マシンを目の高さに合わせて使用するかということになるが、どちらにしても肩や腕に負担がかかってしまう。

 さらに、キーボードが非常に小さいため、手指の配置がおかしな格好になり、手首の損傷が起こる。

 ペンシルベニア州フィラデルフィアの郊外にあるハバータウンに在住する整形外科医Nicholas DiNubileは、「これらはすべて身体に、特にその筋骨格系にダメージを与えるための処方箋のようなものだ」と話している。

 ノートPCの使用は、ほかにも身体的な苦痛をもたらす。マシンが発散する熱で火傷を負うことがあるのだ。熱の問題はまた、膝の上でノートPCを長時間使用すると、男性の生殖能力に影響を与えるとも言われている。さらに、頻繁にノートPCを持ち歩くユーザーなら、持ち運びが原因で背中や手や肩を痛める可能性がある。

 Viswanadhaの場合、まず、症状は首のこりとして表れた。医師は、Viswanadhaがラップトップの前で長時間過ごしたことにより、首の筋肉が収縮して背骨に負担がかかり、手へとつながる神経が圧迫されたと説明している。Viswanadhaは、次第に手のしびれや痛みを自覚するようになり、最終的に反復運動過多損傷と診断された。これは、同じ動作を繰り返したり、不適切な姿勢をとり続けることで起こる疾病の一種である。

 だが悪い出来事は、Viswanadhaの身体にのみ降りかかったのではなかった。

 「数カ月の間、いったいどうすればよいのかわからなかった。わたしの家庭で、収入を得ているのはわたしだけだったのだ。軽い鬱状態になってしまった」(Viswanadha)

 Viswanadhaは今では職場に復帰し、疾病との付き合い方を学びつつあるが、事前に警告を受けていればと、ほぞをかむこともあるという。

ほんの少しの予防努力

 ノートPCの使用に起因する障害の大半は予防することが可能だ。首や肩の損傷を避けるには、ドッキングステーションや外付けキーボードおよびマウスを利用するのが最も簡単だろう。これらの周辺機器を用いると、モニターを目の高さに来るよう調整して、腕や肩を自然な位置で動かせるようになる。マシンを下から支え、好みの高さまで持ち上げるスタンドを販売している企業もある。

 Human Factors and Ergonomics SocietyのTom Albinによれば、モニタの理想的な位置は、目を正面に向けたところから20度下がった場所か、あるいは、20インチ(約50cm)離れた場所から見て目の高さから8インチ(約20cm)低い場所であるという。

 火傷や熱に関係する問題に対処するには、専用パッドやトレーを使用するとよい。中にはファンの付いているものもある。

 もっとも、こうしたかさばるアイテムは持ち運びには適さない。Hedgeは、ノートPCを肩から下げたり鞄に入れて持ち運んだりすれば、これらのアイテムを利用することで得られるメリットは相殺されてしまうだろうと危惧している。

 生活習慣を見直し、仕事中の姿勢に気を付けることも、PCの使い過ぎに起因するさまざまな症状を回避するうえで欠かせない。20〜30分おきに休憩をとってストレッチしたり、食事に気を付けたり、まめに体を動かしたりするなどの心がけ次第で、状況を大きく改善することができる。また、持ち運びが可能なノートPCを利用する人は、仕事を切り上げるタイミングをつかむことも重要だ。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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