掲載日時: 2006-02-06 21:35

IBMが大型x86サーバにこだわる理由

IBMのxSeriesサーバ事業責任者がCNET News.comのインタビューに応じ、大型サーバに関する戦略や、IBMがAMDに対して冷淡な理由などについて語った。

著者 : 文:Stephen Shankland(CNET News.com)
編集校正:坂和敏(編集部)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20095867/

 Susan Whitneyが、IBMのIntelチップ搭載サーバ事業を率いるようになって5年--この間に、同社はいくつもの大きな変化を経験した。しかし、決して変わらなかったものもある。それは大規模なx86サーバに対するIBMのこだわりだ。

 Intelの「Xeon」チップは、Advanced Micro Devices(AMD)が投入した「Opteron」の猛追を受けながらも、サーバ向けx86プロセッサ市場で首位を堅持している。現在、Xeonは主にデュアルプロセッサ仕様の小型サーバに採用されているが、IBMは企業の基幹オペレーションを支える大規模なマルチプロセッサシステムにもXeonは適していると考えている。

 IBMは最大で32基のデュアルコアXeonプロセッサを搭載したサーバを販売しているが、x86サーバ市場でIBMの上位にいる2つの企業--市場首位のHewlett-Packard(HP)と2位のDellは、IBMとはまったく異なるアプローチを採用している。両社は8プロセッサ搭載サーバの販売を打ち切った。両社が現在取り扱っているサーバは、最大でも4基のプロセッサしか搭載していない。

 Dellは、サーバ市場のハイエンドはより小型のサーバで構成されるクラスタに移行すると考えている。一方、HPの考えは、大規模なタスクには、IntelのItaniumチップを搭載したサーバがふさわしいというものだ。ItaniumチップはXeonよりも安定性が高く、データの転送速度も速い。

 IBMに近い考え方を持つ唯一の企業はSun Microsystemsだ。Sunがx86チップへの対応を決めたのは比較的最近のことだ。ただし、同社が8基を超えるプロセッサをx86サーバに搭載する見込みはない。また、Sunは、IBMとは異なり、Opteronチップを採用している。IBMの販売するハイエンドのx86サーバには、Xeonのみに対応するx3チップセットが搭載されている。

 WhitneyはCNET News.comのStephen Shanklandのインタビューに応じ、大型サーバに関する戦略や、IBMがAMDに対して冷淡な理由やその他の事柄について語った。

--昨年は「xSeries」のサーバが登場しました。2005年はどんな年でしたか。また、2006年には何が待ち受けているのでしょうか。

 2005年は、何といってもブレードサーバ事業の成長が印象的でした。第3四半期も、われわれはこの市場で首位を維持することができました。xSeriesは電力効率の点でも、冷却効率の点でも、非常に優れた製品です。消費電力と冷却は相変わらず大きな問題となっており、企業とのミーティングで、この2点が話題に上らないことはありません。

 エコシステムが順調に構築されつつあることも嬉しいニュースです。現在は350社のパートナーが、BladeCenter向けの製品を開発しています。ブレードサーバの設計仕様を公開した後は、新たに300社がこの仕様をダウンロードし、BladeCenter向け製品の開発に取り組むようになりました。

 また、われわれの「x3」アーキテクチャなら、IntelのXeonアーキテクチャで、2ウェイシステムから32ウェイまでのシステムに対応することができます。これは膨大なチャンスをもたらします。

--x86サーバの主流は小型サーバです。なぜ、IBMは大型サーバに力を入れているのですか。

 私は多くの企業--通常はグローバル企業と話をしてきましたが、これらの企業はハイエンドのx86サーバを、主に3つの用途に利用しています。「SQL Server 2005」、SAP(の財務ソフトウェア)、そして1台の大型サーバをさまざまに切り分け、組み合わせて(多数の小型サーバの代わりに使って)いる顧客です。企業は64ビット対応のSQL Server 2005が登場するのを待っていました。これが登場した今は、どのサーバを使用するかを検討しています。」。またSAP製品の実装を検討している企業も多くあり、今後の方向性を決定しようとしています。

 新興市場にも需要はあります。ロシアの銀行はその一例です。この地域の企業には既存のインフラがありません。非常に魅力的な価格で、強力な機能を手に入れることができます。

--x86サーバの売上のうち、ハイエンドの割合はどのくらいですか。

 そのような分類は行っていませんし、セグメントごとの売上も公開していません。しかし、IDCのデータを見ると、ほとんどの企業は2ウェイシステムを採用していることが分かります。この状況は今後も続くでしょう。しかし、ハイエンドの大型x86サーバ市場も着実に成長しています。これは64ビット機能の登場によるものです。プロセッサ分野でも、アプリケーションやオペレーティングシステムの分野でも、さらに多くの変化が起きるでしょう。

--x86サーバの性能が向上すると、IBMのUNIXサーバと競合することになるのでは。

 UNIX市場のローエンドでは、確かにLintel(Intel+Linux)への移行が大規模に進んでいます。しかし、ハイエンドの価値基準はローエンドとは違います。ハイエンドでは、ひとつのベンダーがハードウェア、プロセッサ、サーバアーキテクチャ、マイクロコード、オペレーティングシステムなどを提供します。すべてを一カ所から調達することで、マルチベンダーでは得られない相乗効果や堅牢性が手に入るのです。x86の世界の価値基準はこれとは違います。この分野にはさまざまなアーキテクチャが混在していて、オペレーティングシステムを提供するコミュニティや企業もさまざまです。

--昨年と比べて、今年は何が変わるのでしょうか、あるいは変わらないのでしょうか。

 昨年と変わらないものはいくつかあります。たとえば、企業と話をすると、消費電力と冷却の問題が依然として大きなテーマとなっていることが分かります。当社のBladeCenterは、業界で最も高密度なブレードサーバです。われわれは顧客企業と協力して、BladeCenterを測定器につなぎ、他社製ブレードサーバとの性能比較を行いました。その結果、当社のブレードは待機時、通常使用時、フル稼働時のいずれにおいても20%から30%効率的であることが分かりました。この点は理論上だけでなく、実際に証明されています。

 統合と仮想化(に関する取り組み)も進行中です。これは大きなチャンスをもたらすでしょう。企業は常に、より高い投資効果を求めています。物理的な統合、仮想化、自動化、グリッドといったシナリオを説明し、「現在、御社はどこまで実現していますか」と尋ねると、Fortune 10や100に名を連ねる企業でさえ、「まだ全体の3分の1といったところです」と答えます。技術の問題もありますが、大企業の場合はガバナンスの問題もあります。Intelベースのサーバは、社内のさまざまな事業部門で利用されおり、システムのオーナーが誰なのかはあいまいです。会社全体のものなのか、それとも「うちの事業に関するものだから、うちで管理する」のか・・・といった点が課題となります。

 さらに運用コストの削減も引き続き求められています。管理用ツールが近年大きな注目を集めているのはこのためです。具体的には、完全自動のデータセンター、店舗の集中管理、ビジネスポリシーと作業負荷に基づくブレードの自動割当などです。

 つまり、消費電力と冷却、ROIを改善するために、サーバの稼働率を15%から60%、70%、80%に引き上げること、サーバを少人数で管理できるようにすること--こういった要望は2006年も変わらないでしょう。

 では、昨年と何が変わるかというと、さらに多くの64ビットプロセッサと、デュアルコアプロセッサが登場すると思います。消費電力と冷却に対する要望は、プロセッサメーカーの耳にも入っているはずですから、電力効率と冷却効率を最適化したプロセッサが登場すると思います。たとえば、Intelは新プロセッサのSossaman(開発コード名)などについて、さまざまな発言を行っています。プロセッサ性能に対する要求は、かつてないほど高まっています。

--プロセッサの消費電力は大幅に減少するのでしょうか。それとも、10%程度の小幅な減少にとどまるのでしょうか。

 かなりの規模の削減が期待できると思います。

--低消費電力という意味では、OpteronはXeonを上回っています。いずれは高性能コンピューティング用サーバだけでなく、一般的なビジネス向けのサーバにもOpteronが搭載されるようになるのでしょうか。

 サーバはさまざまなパーツで構成されています。プロセッサが使用する電力は、全体の約3分の1にすぎません。残りはファンやその他のモータ、機械類が使用するものです。つまり、プロセッサはもちろんですが、それ以外のもの--その他の50%、60%、70%のものも最適化する必要があります。当社はパッケージと冷却の観点から、この部分に投資を行ってきました。

 Opteronに対する当社の態度は一貫しています。それは特定の用途--大きなメモリ帯域幅を必要とする処理や解析作業には、AMDプロセッサは非常に適しているというものです。当社はeServer 326を発表したとき、この製品はHPC(高性能な科学技術計算分野)を対象としたものだと述べました。需要はあると確信していました。市場を見ていると、HPCの商業利用が急速に進んでいることが分かります。医薬品の開発、リスクの軽減、衝突のシミュレーションなど、解析処理は産業分野でも広く活用されるようになっています。

--一般用途向けのサーバ、たとえばMicrosoft Exchangeやデータベースを走らせているサーバには、Opteronは適していないのですか。

 そのような要望を企業から受けたことはありません。

--HPとSunは、Opteronは一般用途向けのサーバに適していると主張しています。

 他社にはx3アーキテクチャがありません。x3アーキテクチャがなければ、高い性能を実現するために、別の方法を探さなければなりません。

--BladeCenterのOSにSunのSolarisを採用したのはなぜですか。今後も積極的にSolarisをサポートする予定ですか。

 当社の行動の動機となるのは、市場が何を求めているかです。BladeCenterの初期の顧客の多くは、金融サービス企業と通信企業でした。これらの企業は当初「ローエンドのUNIXアプリケーションはLintelに移す」といっていました。ところが後になって、こう持ちかけてきました。「社内にはそのためのスキルもないし、必要なプログラムも、ドキュメンテーションもない。プログラムもそれほど頻繁に使うわけではない。となると、Lintelに移すのはコストに合わない。Solarisでこれができないか」。われわれは市場の声に耳を傾け、Sunとパートナーシップを結ぶことにしました。

--あなたがxSeries事業のリーダーになって5年が過ぎました。新しい分野にチャレンジしたいという気持ちはありませんか。

 市場を見渡しても、これほど活気にあふれ、またこれほど動きの速い分野はありません。大きなやりがいを感じていますし、やるべきこともたくさんあります。サプライヤーとの関係、他社とのパートナーシップ、またサプライチェーンの「速度(velocity)」)」の点からも、この市場には独特のおもしろさがあります。大いに刺激を受けています。私自身がこの仕事を楽しみ、会社も私の仕事を認めてくれている間は、この仕事を続けたいと思います。

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