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強い現場を実現する“見える化”:“見える化”を支援するテクノロジ(1) |
2006年に入り、新聞や雑誌、フリーペパーの記事など、またセミナーやイベントの講演など、さまざまなところで“見える化”という言葉を目に、耳にする機会が多くなってきた。なぜ今“見える化”が注目されるのか。また、“見える化”とは、何であり、どのような効果をもたらしてくれるのだろうか。
“見える化”をひと言でいえば、ビジネスにおける問題を常に見えるようにしておくことで、問題が発生してもすぐに解決できる環境を実現すると共に、問題が発生しにくい環境を実現するための取り組みだ。“見える化”の実現により、コスト上の無駄や改善の余地がどこにあるかなどを明確にし、強い企業を実現できる。
強いトヨタを作り上げた“見える化”
“見える化”は、何も新しい言葉ではない。そもそも“見える化”は、トヨタ自動車が企業改革における取り組みのひとつとして導入したことで広く知られている。トヨタの“見える化”で有名なのが「あんどん」方式や「かんばん」方式と呼ばれるものだ。
トヨタの生産ラインでは、問題が発生すると現場の担当者が「あんどん」を点灯することで、問題の発生を早期に知らせ、迅速に対応できるようになっている。また「かんばん」と呼ばれる仕組みでは、必要な部品や数量を書いた札(かんばん)を生産工程でまわしていくことで、必要な部品を、必要なときに、必要なだけ調達できる、ムダのないJIT(ジャスト・イン・タイム)生産を実現できる。
トヨタを強い企業にした要因のひとつが“見える化”だが、この“見える化”は生産の現場だけで有効なわけではない。たとえば、システム開発の現場を“見える化”することで、より効率的で高品質なアプリケーション構築が可能になるし、もっと身近に自分のやるべき仕事を“見える化”することで、より効率的かつ効果的に仕事を片付けることができるようになる。

このように“見える化”が製造業の現場だけでなく、あらゆるビジネスの現場で注目されるようになった要因のひとつに、ローランド・ベルガー取締役会長 早稲田大学大学院 教授である遠藤功氏の著書である「見える化−強い企業をつくる“見える”仕組み」(2005年10月発刊/東洋経済新報社)が挙げられる。
遠藤氏は“見える化”に注目するようになったきっかけを、「私の問題意識として、日本企業がもう一度原点に戻り、現場の競争力を高めて行かなければならないというのが根底にある。そのためには、“見える化”を避けて通れなかったことから、このテーマに取り組みはじめた」と話す。
“見える化”という言葉は、一見誰にでも分かる言葉であるために、各自の解釈により独自の取り組みが行われていることが多い。遠藤氏は、「独自の取り組みが悪いわけではないが、本質的な部分を勘違いしている取り組みが多い」と話している。
「“見える化”というコンセプトは、分かりやすそうで、実は奥の深いもの。本質を理解することなく、ただ闇雲に現場レベルで推進しても“見える化”を定着させることは難しい」と遠藤氏。それでは“見える化”の本質とは、いったい何であろうか。
身のまわりの“見える化”の例
“見える化”の本質を遠藤氏は、「共通の認識が持てること」と言う。
身のまわりで“見える化”を考えて見ると、たとえば信号機は、赤、黄、青という3つの色だけで、すべての交通を制御する非常に高度な“見える化”の例といえる。信号機では、誰もが、赤は止まれ、黄色は注意、青は進めという共通の認識を持っていることからたった3色で交通を制御できる。
また、野球場のスコアボードも“見える化”の好例といえる。スコアボードがあることで、今何イニングなのか、得点や打順、守備位置、アウトカウントなどはどうなっているのかなど、試合の状況を一目で把握することができる。これも野球のルールに対する共通の認識があることからスコアボードだけで試合の状況を把握することが可能になる。
それでは会社の中には、信号機やスコアボードのような仕組みがあるだろうか?
遠藤氏は、「あなたの業務上の問題は? となりの同僚は何を悩んでいるのか? ベテランはどんな知恵を持っているのか? 工場や営業所の問題は? 顧客の本音とは? このように企業の中は、実は見えているようで見えないことだらけ」と言う。
「問題や異常がタイムリーに見えれば解決できる。人間は、目に見える問題は解決しようとする。見えないから解決できない」(遠藤氏)
たとえばトヨタは、2004年3月期の純利益が1兆2000億円で、1年間に2300億円のコスト削減を実現している。この2300億円のコスト削減は、トヨタの現場の地道な改善提案活動により生み出されたものだ。業務の改善提案は、年間61万件提出され、そのうち91%は実行されているという。
また花王は、これまで24年連続で増益を続けてきた。この要因のひとつとして同社では、1986年より企業全体でTCR(Total Creative Revolution)運動を続けており、その成果として年間150億円のコスト削減を実現している。さらに在庫金額は、1998年を1とした場合、2003年は0.6に、欠品率は1998年の0.12に対し2003年は0.04になっている。つまり在庫を4割削減し、欠品率を3分の1にしている。
「トヨタが2300億円のコスト削減ができたのは問題が見えたから。花王がある製品の改良を25回も行ったのは、顧客のニーズが見えていたからだ。したがって、見えることこそが競争力の原点になる」(遠藤氏)

2つの“見える化”と3つのプラットフォーム
企業における“見える化”は、大きく次の2つに分類できる。
管理の“見える化”:BIツールなどで経営の問題を見えるようにし事業を最適化する。
現場の“見える化”:現場が自分たちの問題を自主的に解決できるようにする。
どちらも有効な“見える化”には違いない。しかし、「より“見える化”の本質に近いのは、現場の“見える化”だ」と遠藤氏は言う。いくら管理の“見える化”を実現し、経営状態を把握することができても、現場の“見える化”を実現しない限り本当の問題を解決することができないからだ。
「“見える化”の究極の目標は、共通認識を持つことだ。このとき現場や部門間で横断的に共通の認識を持つことが重要になる。同じ情報を持っていても認識がばらばらでは問題は解決できない。共通認識を確立することで、企業は目標に向かって一体行動が可能になる。これが“見える化”の最大の目的だ」(遠藤氏)
この“見える化”を実現するためには、次の3つのプラットフォームが必要になる。
“見える化”を実現するためには、ITのプラットフォームは重要になる。しかし、IT化だけで見える化が実現できるわけではない。遠藤氏は、「あくまで現場が主役であり、ITは支援の道具。現場の目線に徹底してこだわることが必要だ」と話す。
ITのプラットフォームで支援するのは、「見せる情報、見える情報の絞込みや情報のJIT化、個々の現場および個々のニーズに合ったパーソナライズとカスタマイズができる仕組みが重要になる」と話している。
“見える化”の根底にある現場力
「“見える化”の根底には、現場力があると考えている。企業の競争力を考える場合、まず現場の力を見直すのが私の考えだ」と遠藤氏は話す。
事業を構成する要素には、「ビジョン」「競争戦略」「オペレーション(現場)」の大きく3つの要素がある。
ビジョンとは、「なぜウチの会社は存在するのか」を明確にするもので、それぞれの会社の理念ともいえる。また、創業の思いでもあり、夢とか、目標と言い換えることもできる。企業とは、個人の集合体であり、個人の力を十分に生かしきるには、全員が共感できる求心力が不可欠になる。
しかし、ビジョンがあれば企業が成功できるわけではない。ビジョンを実現するためには、競争戦略が必要となる。競争戦略は、会社として何を具体的な価値として産み出していくのかを明確にするもので、競争戦略がなければ、市場における競争を勝ち抜くことはできない。
さらに、いくら競争戦略を策定したところで、実行できなければ意味はない。最終的には、現場に“力”がなければ、ビジョンは「絵に書いた餅」にすぎない。戦略は実行されて初めて企業に価値を生み出す。強い会社は、この3つの要素に整合性があり、磨きこまれている。トヨタや花王など、日本で勝ち組といわれる企業は、この3つの要素が非常に良いバランスになっている。
遠藤氏は、「そもそも企業の競争力とは、分厚い中期経営計画書や会議室の中にあるわけではない。競争力は、企業活動のオペレーションの現場に埋め込まれているはず。成果を創出するのはあくまでも現場だ。強い企業は、必ず強い現場を持っている」と言う。
グローバルに競争力を持つには、オペレーションの力というものを、今一度よみがえらせることが大きなポイントであり、そのためには現場の“見える化”が非常に重要な意味を持つ。強い企業を作るためには、自律的に問題を解決できる仕組みを作ることが必要であり、そのためには“なにが問題なのか”を見えるようにしなければならない。
「見えない問題は、解決できない。それを見えるようにするための仕組みが“見える化”だ」(遠藤氏)
■“見える化”10のポイント
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