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ガートナー、ASP市場の動向を語る:ソフトウェアのオンデマンド化を推進するASP(3) |
ASP特集の1回目と2回目は、Salesforce.comとNetSuiteの2社にフォーカスし、各社の戦略を探った。最終回となる今回は、このASP業界をアナリストがどう分析するかをレポートしたい。
ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ バイスプレジデント兼チームマネージャー 丹羽正邦氏一般的にASPを導入することによるユーザーにとってのメリットは、初期投資が少ないことや、最新のサービスを迅速に導入できること、アップグレードが容易であることなどが挙げられる。ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ バイスプレジデント兼チームマネージャーの丹羽正邦氏も、「ソフトウェアをパッケージで購入すると、数年で陳腐化するが、現場で手を加えることなしに常に最新の機能が使えるのはASPならではだ。同じサービスを利用していれば、他社との連携も容易となる。それに中小企業にとっては、やはり初期投資が少ないことが大きな魅力だ」として、特に中小企業での市場性の高さを指摘している。
ASPは、Salesforce.comが成長していることもあり、CRM関連の成功が際だっているが、NetSuiteがERPやEコマースツールを提供しているほか、プロジェクト管理製品やテストツールなど開発関係のASPサービスも存在する。ほかにも米国では、従業員の出張用に航空券やホテルの手配などをASPで実現するReaden Commerceや、内部統制やリスク管理のプラットフォームをウェブ上で提供するAxentisといった企業も存在する。
CRM関連のASPが成功している理由のひとつとして、丹羽氏は「タイミング」を挙げている。「1990年代後半に2000年問題対策としてERPを導入した企業が、次にCRMに注目しはじめた。時期を同じくしてASPが登場しはじめたため、CRMを導入する際にASPを検討するケースが多くなった」と丹羽氏は指摘する。
ガートナーでは、ITサービスの成熟度を示すハイプサイクルを発表しているが、同社が発表した資料によると、2005年6月時点のASPの位置づけは、幻滅期を過ぎ、啓蒙活動期に入っている。これは、日本においても米国においても大きな違いはない。(「図:2005年のASPのハイプサイクル」参照)。
図:2005年のASPのハイプサイクル市場規模も順調に成長することが予測されている。ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ リサーチディレクターの河本吉夫氏は、「国内におけるASPの市場規模は、2006年で820億円強になり、2007年は1000億円を超え、2008年には1400億円近くにまで成長するだろう」と見ている。
ASPの主な業界プレーヤーとしてガートナーでは、Salesforce.comやNetSuiteといったASP専業ベンダーに加え、Microsoft、IBM、Oracleなどの名前も挙げているが、既存のソフトウェアパッケージベンダーが同分野に参入することについて「パッケージベンダーの収益モデルはライセンスを販売することで、サービスを売るというASP専業ベンダーとは異なるため、新たなモデルをどこまで理解できるかが鍵となるだろう」と丹羽氏。同氏は、「まずASPで機能を使ってもらい、あわよくばソフトウェアの販売に結びつけたいという考えが全面に出てしまうと厳しいのではないか」と指摘する。ソフトウェアパッケージの販売は通常、販売に結びつけば目的が達成されたことになるが、ASPの場合は継続してサービスを提供し続けなくてはならない。こうしたモデルに我慢できるかどうかが、ASP市場に参入する既存のパッケージベンダーに問われてくる。
また、販売方法もパッケージベンダーとASPベンダーでは異なってくる。ASPの場合、IT部門にアプローチするのではなく、直接業務を行っている部門にアプローチするケースが多い。ASPでは、一部の機能を単体で利用することもできるため、現場レベルで「この機能だけが欲しい」となれば、IT部門を通じてカスタマイズすることなしに、すぐにでもウェブで利用可能なためだ。つまり、IT部門の仕事をASP業者が受け持ってしまうため「IT部門はある意味ASP業者のコンペティターだ」と丹羽氏は話す。
特に大規模なソフトウェアパッケージの場合、全社的な導入となるケースが多く、購入はシステム部門の責任で行う。そのため大手パッケージベンダーは通常システム部門にアプローチするが、これをASPの営業にもあてはめてしまう。こうした既存パッケージベンダーの営業方法について丹羽氏は、「本来業務アプリケーションは、実際に業務を行っている現場にアプローチする方が効率的。こうしたあたりまえのことができていないパッケージベンダーは数多い」と警告する。
成長が見込まれているASP市場ではあるが、成長の阻害要因がないわけではない。ガートナーによるユーザー調査では、「企業規模が大きくなればなるほど、ASPは浸透していない」と丹羽氏は言う。大企業は独自のシステムを持っているケースが多いことも理由だが、丹羽氏は「自社のデータを他社に任せることに不安を抱いていることも阻害要因となっている」と話す。
ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ リサーチディレクター 河本吉夫氏また河本氏も、「パフォーマンスや速度を気にするユーザーもいる」と指摘する。ネットワークの進化で大きく発展したASPだが、更なる発展もネットワークの進化にかかっているのだ。また同氏は、既存のアプリケーションとの統合がスムーズに行くかどうか、さらにはASP業者が買収されてサービスが消滅することへの不安、長く使い続けた場合の“レンタル料”が購入した場合より高価になってしまうことなども懸念材料として挙げている。
ASP専業ベンダーは、将来的にすべてのアプリケーションがウェブで利用可能となる世界を描いているが、実際にそのような時代はやって来るのだろうか。ガートナーでは、2010年までに新規ソフトウェアの30%がASPモデル経由で提供されるようになるだろうとし、このモデルを活用していないベンダーは活用するベンダーにシェアを奪われるとしている。
ただし丹羽氏は、「すべてがASPになるということはありえない」と話す。システムが一定規模以上になると、自社専用にシステムを作り込む方が安価で使いやすい場合があることや、これまでのシステム運用の考え方を変えられない大企業もいることなどがその理由だ。同氏は、「アウトソーシングと同様、企業のコアコンピテンシーとならない部分をASPにアウトソースするという形が主流になるだろう」と予測している。河本氏も、「ASPベンダー自身も、ミッションクリティカル部分には踏み込まないよう見極めているのではないか」述べている。
さらに丹羽氏は、現在のASPが「1 対 1」のきめ細かなサービスではなく、「1 対 多」となっているため、どうしても最大公約数的なサービスしか提供できていない点を指摘する。つまり、すべての顧客の個別のニーズに対してうまくカスタマイズできるところまでASPは発展していないということだ。「すべての顧客が満足できるようなサービスを提供することは難しい。特別な要求があると、ある程度は対応できても限界があるだろう」と丹羽氏。
例えば、ASPは常に最新機能を提供しようと頻繁にアップグレードを行っているが、変更を好まない顧客もいる。そのような顧客にどう対応するか、古いバージョンをサポートするための体制があるかなども課題となる。「既存のパッケージソフトも、どうしても旧バージョンを使用したい場合、別料金でサポートするという場合がある。このような値付けを考える必要も出てくるかもしれない」(丹羽氏)
「1 対 多」のASPに対し、「1 対 1」の対応を求める場合、「アプリケーションアウトソーシングという選択肢もある」と丹羽氏は言う。アプリケーションアウトソーシングとは、企業ニーズに個別に対応するASPサービスだ。現在アプリケーションアウトソーシングは、ガートナーの提唱するハイプサイクルにおいて、黎明期から過度に期待されるピーク期を迎えようとしているが、丹羽氏は「将来的にASPがアプリケーションアウトソーシングと二分化する可能性もある」との見解を示した。
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