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「ソニーのサイトはブランド力なし」--企業サイトのブランド力調査を行ったフォレスター |
2005年12月に日本企業のウェブサイトのブランド戦略を分析したレポート「How Japanese Brands Succeed Online」を発表したForrester Researchのシニアアナリスト Ron Rogowski氏。日本での勤務経験も豊富で、日本語の文学学士号を取得しているRogowski氏は、特に日本語やスペイン語圏のウェブサイト分析やコンサルティングを行っている。
同氏は、過去に企業サイトの分析を実施していた際、企業がサイト構築においてブランド戦略を非常に重視していることに気がついた。そこで、そのブランド戦略が正しく実施されているかに焦点を当てたのが今回発表したレポートだ。
Rogowski氏は、企業の打ち出すブランドの位置づけを調査し、そのブランドに合ったサイト作りができているかどうかを評価した。残念ながら、その結果はあまり良いものではなかった。
レポートの調査対象となった企業は、三洋電機、シャープ、ソニー、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、松下電器産業、マツダ、みずほ銀行、三井住友銀行、UFJ銀行(現 三菱東京UFJ銀行)、りそなグループだ。このレポートの詳細をRogowski氏に聞いた。
Forrester ResearchのRon Rogowski氏。ZDNet Japanのサイトの評価を聞くと「分析には1日かかることもあるので」と、コメントは得られなかった。
このレポートは、日本のオンライン上でのブランド力について調べたものです。日本では特にブランドが重視されています。各企業はブランド戦略を重視し、ブランド調査も頻繁に実施されています。今回調査対象となった企業も、皆ブランドについて非常に気にしていました。
Forrester Researchはウェブサイトの分析をよく実施しますが、サイトを分析する際、主にユーザビリティなどの指標を重要視していました。しかし、企業側にサイト構築の際何を重視しているか聞いてみると、ユーザビリティが良いことや、ユーザーの目的に合ったサイトを作るといったことはもちろん、企業ブランドに合ったサイトであるかどうかを非常に重視していたのです。サイトの位置づけや意義についても、売上アップを望むケースや、見込み客を呼び込みたいというケース、製品情報を提供するなどと同様に、「オンライン上でブランド力をつけたい」という答えが返ってきました。そこで、サイトのブランド戦略が成功しているか、分析することにしたのです。
難しいのは、企業がサイトでブランド力をつけようとする目的と、ユーザーがサイトに来る目的が必ずしも一致しないことです。
まずここで、ブランドとは一体何か考えてみましょう。ブランドは、トレードマークのこともあれば、感覚のこともあります。Intelの場合、テレビコマーシャルなどで使われているあの「タンタンタンタン」というインテルサウンドもブランドの一部といえます。Tiger Woodsのように、人そのものがブランドとなることもあります。つまりブランドというのは定義しにくいものです。
ひとつ言えるのは、コンシューマーにとってブランドは「体験」だということです。広告やサイトなどで見たもの、聞いたものなどから、人々は印象やイメージを植え付けられます。その印象やイメージに合った体験ができるかどうかで、ブランドができあがるのです。
例えば「Evian」という水の広告を見て、人はフレッシュでさわやかな水をイメージします。これは「ブランドイメージ」です。そのイメージを持ってEvianを飲んだ時、想像通りにフレッシュでさわやかであればブランドは確立されますが、逆に泥のような味がした場合、いくらイメージは良くてもブランドは成立しません。このように期待通りのものが得られるかという体験の部分は「ブランドアクション」です。今回の調査では、このブランドイメージとブランドアクションという指標を中心として、各企業のブランド戦略を分析してみました。
調査した企業の多くは、ブランドイメージにはかなり注力しているのですが、ブランドアクションについてはあまり成績が良くありませんでした。サイトを訪問した際、大きな写真やイメージがまず登場し、実際の情報へのリンクはページの下の方に小さく貼られているだけということがよくあります。あれはブランドイメージのみを重視してページを作った例です。
例えば、各社はブランドに対する位置づけや意味を持っているのですが、そのブランドの位置づけとサイトの中身に一貫性があるかどうかを評価しました。つまり、ブランドイメージがサイトの中に正しく表現されているかということです。
この点においては、調査対象となったサイトの中では日産が最も良い評価を得ることができました。日産はサイトの中で、車をライフスタイルの一部として提供することで人々の生活を豊かにすると説明しています。そのイメージに合うよう、例えば同社の「Wingroad」のページでは、車のトランクルームに格納されている背もたれを引き上げ、ピクニックのベンチとして利用できることをビデオとテキストでうまく表現しています。サイトのイメージとオフラインの広告イメージも一致しており、一貫性があります。
逆に、この分野において一番評価が低かったのはソニーです。それはまず、ソニーがブランドの位置づけとして掲げていることが非現実的なところにも理由があります。ソニーでは、ソニーブランドを打ち出すことの意味として、決してユーザーを失望させることなく、常に新しいものがあるとしていますが、これはブランドというよりも会社のミッションそのものです。サイトに来て常に新しいものに出会えるかというと、そうではありません。
先ほどブランドの位置づけとサイトの中身に一貫性があることが大切だと言いましたが、実はソニーのブランドの位置づけである「予想もつかないこと」や「論理的ではないこと」といった内容は、サイトのどこに何があるのかわかりにくいという内容と一致しています(苦笑)。ソニーのサイトばかりを悪く言うつもりはありませんが、この一貫性はあまり良い例ではありませんね。
特徴的だったのは、日産以外にも、マツダ、トヨタなど、自動車メーカーの評価が高かったことです。マツダは「スタイリッシュで洞察力があり活発だ」というブランドの位置づけをしていますが、「zoom-zoom」という合い言葉や、切れ味のある画像などでそれをうまく表現しています。一方トヨタのブランドの位置づけは、「環境に優しく安全な車社会を作り出すこと」ですが、サイト全般に渡って自然を背景にした描写が多く、環境に優しい企業であることがわかりやすく表現されていました。
ブランドアクションでは、ユーザーがサイトに来て目的を果たせるかどうかを評価しました。サイトで自分の欲しい情報が見つかりにくいと、ユーザーがイライラして企業ブランドの低下につながりますからね。
ここでは、三井住友銀行のサイトが一番良い評価を得ました。銀行のサイトの評価にあたっては、ユーザーがローンを組むことを想定して評価したのですが、三井住友銀行はローンのタイプやサービス内容について、利率から申し込み方法、支払い額の計算など、必要な情報と機能をすべて備えていました。
残念なことにブランドアクションに関しては、合格点と見なしたのは三井住友銀行だけでした。他のサイトで評価を下げた一因となったのが、特に日本の自動車メーカーや家電メーカーに多く見られる製品別のミニサイトです。製品をひとつのブランドとしてアピールするために個別のサイトを作るのはわかりますが、こうしたミニサイトのほとんどは企業のメインのサイトと一貫性がないだけでなく、ミニサイト同士や企業ブランドとの一貫性もありません。製品ごとにマーケティング担当者やミニサイトの運営者が違うために起こることです。
ミニサイトでは、新しいページがどんどん開いて、ユーザーは今自分がどこにいるのかわからなくなります。しかも、せっかく製品のアピールをしているのに、商品を購入するためのECサイトへの導入がよくないのが現状です。サイトの情報を見て、すぐに購入したいというユーザーを逃がすことになります。
そうかもしれません。しかし、一般の人が企業のサイトを訪れる際、広告を見に来るつもりで訪れる人はいないと思います。すでにどこかでその企業の広告などを見ていて、より詳細な情報を求めてサイトに来るのです。そうなると、繰り返し広告を見ることは無駄な作業になります。
広告では、例えばデジタルカメラの見た目や印象はわかるものの、スペックの詳細はわかりません。店頭に行けば、実際のモノをさわることもできます。ウェブサイトはこの中間の役目を果たしています。ユーザーがサイトに来るのは、広告を見たいからでもモノにさわりたいからでもありません。情報を求めているのです。これを理解しなくてはなりません。
この評価項目の中には、業界の専門用語を使うことなくユーザーにわかりやすい言葉で説明しているかということも含まれていましたが、特に自動車メーカーは技術用語を使いたがる傾向にあり、この項目の評価が低かったですね。
また、当たり前のことに思えるかもしれませんが、読みやすい文字の大きさを使っているかどうかも調べたところ、ほとんどの企業はマイナス評価でした。皆、1ページにできるだけ多くのテキストを入れようとして、文字が小さくなっているのです。
同じ内容が書かれたテキストを、フォントの大きさだけを変えてユーザーに読ませるという調査をしたところ、全く同じ内容が書かれているにも関わらず、フォントが小さいテキストの中身がよくわからないという結果が出たこともあるのです。文字の大きさにも意味があるということです。
まずは、ブランドイメージばかりに注力せず、ブランドアクションについて考えてみてほしいということです。サイトのブランド力は、イメージだけでは決まりません。いくらブランドの位置づけに合った雰囲気のサイトを作っても、必要な情報がどこにあるのかわからないようでは、サイトのブランド力そのものが低下してしまいますから。
また、先ほど例に出したミニサイトの統一感のなさについても言えることですが、企業全体のブランド戦略と一致したサイト作りをすることが必要です。そのためには、すべてのサイトを把握している責任者が必要でしょうね。ミニサイト同士があまりにも独立してしまっては、企業レベルでのブランドの意味が薄れるだけでなく、混乱を招くだけです。
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