掲載日時: 2006-05-23 13:34

2006 JavaOneレポート--Javaのオープンソース化に反応するSOAベンダーら

2006 JavaOneで注目されたキーワードのひとつにSOAがある。このキーワードを中心に、JavaOneに参加した各社の動きを探った。

著者 : 徳田浩司(Fusion Reactor)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20118388/

 システムの総所有コスト(TCO)削減などの要請に伴い、今後のエンタープライズ向けシステム開発の重要な手法として期待されるサービス指向アーキテクチャ(SOA)。5月16日より米国サンフランシスコにて開催された「2006 JavaOne Conference」でも、このキーワードを中心としたテクノロジセッションや展示が行われていた。JavaOneのセッションや展示会場を通じて、各ベンダーのSOA対応製品およびJava関連技術の利用状況について探った。

展示会場 世界60数カ国から1万4000人もの参加者を集めた2006 JavaOneの展示会会場

 Javaは当初、Sun MicrosystemsのフェローであるJames Gosling氏らが、コンピュータネットワーク社会で使うことを考慮して、組み込み機器向けに開発していた言語が進化して生まれたものである。元々ゲーム機をはじめとする情報家電や携帯端末などで普及してきたが、その後栄枯盛衰を経て、エンタープライズ領域でウェブアプリケーションを動かす重要なプラットフォームとしての位置づけを得ることとなった。

 現在、Javaの利用は新たな局面を迎えており、その取組みはエンタープライズ向け、特にSOAの実現に向けて大きな注目を集めている。

 SOAは、企業内にあるさまざまな既存システムをそれぞれ汎用のサービス単位として捉え、ビジネスの変化に合わせて短期間でシステムを再構築するものである。英調査会社Butler Groupの調査結果によると、SOAを導入した場合、1から新しくシステムを立ち上げる従来の開発手法と比べて58%ものコスト削減が実現したとある。インターフェースには、インターネットの進展で発達してきたウェブの標準技術を使うことが主流で、SOAを実現するプラットフォームとしてもJavaが脚光を集めることとなった。

 今回の2006 JavaOneで発表されたJavaアプリケーションプラットフォームの最新版「Java EE 5」については、Sun MicrosystemsがSOAへの対応と明言するプレゼンテーションを披露したほか、複数のオープンソース化計画も発表しており、各ベンダーの取り組みが期待される。

Java EE 5をアピールするSun Microsystems

Sun JavaOne主催者のSun Microsystemsのブース

 Javaの開発者であるSunは、SOAを今後のビジネスの柱と考え、新CEOのJonathan Schwartz氏の下、オープンソース化戦略を推進中である。同社はこれまで長らくオープンソース化には消極的だったが、今回のJavaOneではオープンソース化を前面に打ち出しており、2005年のJavaOneで発表になった「Participation Age」(参加の時代)と称する時代へのサポートを、より具体化している。

 今回発表になったJava EE 5は、ウェブ環境での開発トレンドを大きく盛り込んだのが特徴で、J2EEと呼ばれていた時代も含めこれまでのJava EEにおける約7年間の歴史の中で最大のバージョンアップとなった。

 Java EE 5プラットフォームは、動作環境のサンプルを豊富に提供する「Reference Implementation」、Java仕様準拠評価用の「Technology Compatibility Kit」、ソフトウェア開発キットの「Software Development Kit」から構成される。企業内ネットワークはクライアントサーバ型からWebサービス型へと移行中で、ウェブアプリケーションの開発はJavaの利用が増えている。Java EE 5はこうしたトレンドを踏まえ、さらにEoD(開発容易性)を意識したものとなった。

 SOAベースのインテグレーションを実現するプラットフォームとしては、「Sun Java Composite Application Platform Suite」(Sun Java CAPS)が展示されていた。これは、SOAにおいて各サービス同士を再定義し、それをつなぐシステムを開発するツールである。今回のJavaOneで一部オープンソース化が発表され、広く普及することが期待されている。

Gupta氏 Project TangoのリーダーであるSun MicrosystemsのArun Gupta氏

 しかし、従来の企業内システムのアーキテクチャは、データとビジネスプロセスが複雑に絡まった状態で、SOA導入の事前準備としてそれらの分離と整理が必要だ。そのための教育とコンサルティングが欠かせないとして、Sunのブースでは開発ツールのトレーニングコースを紹介していた。また、日本を含め海外の開発においても、各地でコンサルティング部隊を配備し、十分サポートできることをアピールしていた。

 また、JavaプラットフォームとMicrosoft .NETとの互換性を実現するため、Sun MicrosystemsはMicrosoftの協力を得てProject Tangoを実施した。その中で、両プラットフォームの互換性を実現する技術「Web Services Interoperability Technology」(WSIT)がオープンソースとして提供されることになった。ほかにも、複数のプロジェクトでオープンソース化宣言がなされ、オープン化を通じてSOAの普及を推進していくことになる。

xfyで展示ブースを賑わすジャストシステム

ジャストシステム ジャストシステムのブースにて

 エンタープライズソフトウェアベンダーとしてJavaOneでブースを持つ日本企業は数少なかったが、日本からの出展で目立っていたのはジャストシステムだ。同社は、2004年11月にJavaベースのXML文書作成・編集ツール「xfy」を発表しており、今回のJavaOneでの展示もxfyが中心だ。同社は、米国市場でのXMLの活用が日本より進んでいることから、すでに米国拠点での営業活動も開始している。

 今回展示された統合XMLアプリケーション開発・実行環境「xfy Enterprise Solution 1.0」は、IBMやOracleなどのデータベースのさまざまな仕様の違いを吸収し、XMLの初心者でもXML文書が作成できるものだ。同ツールが発表された2005年11月には、xfyとIBMのデータベース「DB2」の次期バージョン「Viper」(開発コード名)を連携させ、ネイティブXMLアプリケーション用のプラットフォームを提供すると発表している。

 具体的な事例としては、株式や為替など、金融情報サービスのアグリゲーションがあげられ、マッシュアップサービスを実現するツールとしても期待されている。

OracleのSOAへの取り組み

 Oracleは、データベースビジネスだけでなく、ERPソフトを提供するPeopleSoftやSiebel Systemsを相次いで買収し、垂直統合化を進めてきた。既存のデータベースのリプレースや新規投資案件への提案だけでなく、SOA時代による既存資産との融合を意識せざるを得なくなってきたOracleは、SOAをビジネス戦略の柱と考えている。統合ツールとしては、Oracle製品同士を統合するツールのみならず、DB2やSybaseを使ったシステムを統合するためのツールも提供している。

Oracle Oracleのブースでは、Oracle SOA Suiteの実演が行われていた

 SOA向けのプラットフォームとしては、Webサービスを通じて画面上でのドラッグアンドドロップだけでシステム同士の統合を実現する「Oracle Service-Oriented Architecture Suite」(Oracle SOA Suite)が提供されている。これは、SOA実現に向けたサービスの作成や管理ができる、サービス基盤のコンポーネントセットだ。

 Oracle SOA Suiteは、いくつかのOracle独自の技術で構成されている。そのひとつである「Oracle JDeveloper 10g」は、アプリケーションの作成、構成のための包括的な統合SOA開発環境で、基盤となるものだ。また、2004年のCollaxaの買収によって手に入れたBPEL(Business Process Execution Language)の実行環境「Oracle BPEL Process Manager」は、Webサービスとの協調を可能にした最初のネイティブBPELエンジンで、ビジネスプロセスの設計、定義、実行が可能だ。

 Oracleの主席ソリューションアーキテクトClemens Utsching氏は、同社デモブースにて「サポートされているミドルウェア、プラットフォームとしては、Oracle Fusion Middlewareのみならず、IBM WebSphere、BEA WebLogic、JBoss Application Serverなど、他社のミドルウェアプラットフォームとも幅広く互換性があり、適用範囲が大きい」と盛んにアピールしていた。

 またOracleは、オブジェクトの永続化機能を提供するAPIであるJava Persistence APIへの参照実装例をオープンソースで公開するとしている。Javaとオープンソースコミュニティにオブジェクト関連マッピングと専門知識を与えることで、開発者がエンタープライズアプリケーションを容易に開発できることを狙っており、Javaのオープンソース化に積極的に対応している。

IBMは「SOAを使って勝つために革新する」

IBM SOAへの取り組みに積極的なIBMのブース

 IBMでは、ブースのテーマを「Innovate to Win with SOA」として、SOAを前面に押し出した展示を行っていた。統合技術に強いIBMにとって、SOAの展開は大きなビジネスチャンスとなる。

 従来より同社は、ウェブ環境構築のためのプラットフォーム製品群「WebSphere」などによりSOAへの取組みは積極的だったが、今回はJavaとの関連を強調していた。

 そもそもIBMは、JavaコミュニティにおいてJava EEの標準化作業の80%を担ってきており、Sunに対してもJavaのオープンソース化を強く要請してきた。今後のSunのオープンソース化の動きに対して、IBMはその恩恵を受ける1社となる。

 IBMの展示は、WebSphere関連はもちろん、ソフトウェアの分析や開発、テストなど、開発者が必要とするツールの総合的なパッケージ製品「IBM Rational Suite」、DB2の次期バージョンViperなどが展示されており、IBM Theaterにて休みなくプレゼンテーションを実施していた。

 Webサービスをサポートする代表的なIBMのソフトウェアは、「IBM WebSphere Application Server」で、現在バージョン6.0が提供されている。それに対応する開発ツールは「IBM Rational Web Developer for WebSphere Software v6.0」となる。同製品は、JavaやEJBからウィザードでWebサービスを作成したり、WSDLからWebサービスに接続するためのクライアントを簡単に作成したりすることができるものだ。今回特に新しい発表はなかったものの、Java関連技術を使ったSOA関連ツールが充実していることをアピールしていた。

OSSと商用ソフト共存の仕組みを提供するBEA

 BEA Systemsは、エンタープライズ向けインフラソフトウェアベンダーとして、ウェブアプリケーションプラットフォームを提供してきた。

BEA Think Liquidを標語にオープンソースと商用ソフトの両方を活用したSOAを実現するBEA

 BEAは「BEA WebLogic Server」をウェブアプリケーションプラットフォームの中心としており、SOAの基盤として提供している。同社は、米IDG Researchによる最新の調査で、SOAの技術パートナーとしての支持率が業界トップとなっているが、同社のシニアプロダクトマーケティングマネージャー Mike Stamback氏は、支持率が高い理由について「データベースソフトベンダーでもあるIBMやOracleとは異なり、中立的な立場でJava EEアプリケーションのリーダーとして力を発揮できることが強みだ」としている。

 今回のJavaOneでは、Enterprise JavaBeans 3.0対応のオブジェクト永続化エンジン「Kodo 4.0」と、「BEA WebLogic Server」の技術プレビューを公開した。オープンソース活用の時代ではあるが、オープンソースだけでは企業のニーズを全てまかなうことは不可能だとして、開発者がオープンソースソフトウェアと商用ソフトの両方を自由に「混合して活用(Blended Approach)」できる仕組みを提供している。オープンソース時代の新しい戦略のひとつと言える。

展示ブースなしのMicrosoft

 Microsoftは、.NETとJavaの互換性を実現するため、Sun Microsystemsと共同でProject Tangoに取り組んでいる。ただ、同プロジェクトはSun主導となっていることもあり、Microsoft側からの展示はなく、Sunのブースを紹介された。オープン化の対極にあるMicrosoftの姿勢とも言うべきか、若干取り組みの温度差が感じられた。

注目されるSOAベンダーの戦略

 Sun Microsystemsは、SOA関連のプラットフォームなど、自社開発のツールを徐々にオープンソース化しながら、Javaの利用者を増加することによって、Javaのライセンスフィーやハードの売上を拡大していく戦略だ。IBMやOracleは、Javaのオープンソースソフトウェアを活用しつつ、SOAを実現する自社の豊富なミドルウェア群の提供で収益に結びつけたいと考えている。

 一方BEA Systemは、オープンソース志向のユーザーを取り込みながら、同時に商用ツールを提供する機会を狙い、収益化を図っている。

 SOAベンダーは、各社各様のアプローチでオープンソースを取り込みながら収益化を目指しており、今後の動向は注目される。

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