掲載日時: 2007-02-15 15:00

Second Life 新世界的ものづくりのススメ--その1:メーカー社員、ある昼過ぎのこと

今回からスタートした新連載「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」では、実際にSecond Life内に建設されたシーネットネットワークスジャパンのオフィスを、いかに構築していったのか、その具体的な方法を紹介する。

著者 : 大槻透世二(デジタルハリウッド大学院)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20343102/

メーカー社員、ある昼過ぎのこと

 昼を過ぎ、私はうとうととしていた。お昼のラッシュはいつもどおり大変な混雑だが、ランチを過ぎて仕事が再開される頃になると、けだるい空気が会社を包んでいる。ランチを終えた社員達は、午後のアポに備えネットで情報収集をしている。

 私はおもむろにPCを立ち上げ、あの世界に入ってみることにした。そう、最近話題のサイバースペースでビジネスができるという、アレだ。“Second Life(セカンドライフ)”だ。

 Second Lifeは、米国のベンチャー企業が2002年から提供し、ネットで2006年ごろから盛んにマスコミをにぎわしているているオンラインゲームのようなサービスだ。会社のPCにインストールをするのは、ちょっと気がひけたが、IBMやTOYOTAなども参入し、日本でも電通が本格的に参入するとなれば、これは放っておくわけにもいかない。

 わが社はメーカーとして商品を世界にも輸出する、大企業とは行かないまでも、そこそこの企業だ。これはちょっと調べてみなければならない……。とはいえ、昔はクリエイターを目指した者として個人的に興味があるのも確かだ。そして何より、面白そうだ。どれどれ……。

 そして私はあらかじめインストールした「Second Lifeビューワー」を立ち上げた。するとそこには、今まで見たこともないような3次元空間が現れた。現在、360平方キロメートルもの仮想空間が広がるSecond Lifeの世界が眼前に現れたのだ。今や360万人が居住するこの特異なサイバースペースは現在も週10万人ペースで住人が急増し、現実の経済を超え今や小国ほどの経済活動がバーチャルで行われている。

 「これがSecond Lifeなのか……」

 私は、圧倒的に広がるサイバースペースにわくわくした。しかし、だんだん近づいている足音が大きくなったとき、突然声をかけられた。

 「何をやっているんだ!!」

 それは上司の声だった。ゲームのような画面のため、いくらSecond Lifeにおけるビジネスの可能性を説明しても聞く耳を持ってくれない。

 「お前は何を昼真っから業務用のPCで遊んでいるんだ!」

 ひと通りの説教が続いた後、ため息をついて席に戻った。やれやれ、やはりそうか。最近の個人情報の流出に伴って会社内でのPCの用途に関しては以前と比べてずいぶんと厳しくなっている。ましてや、Second Lifeでは、傍目にはゲームをやっているようにしか見えない。いくらこの中に大きな“ビジネスチャンス”が眠っているとしてもだ……。

 頭を抱えながら私はインターネットでセカンドライフの情報を収集し始めた。ここ最近で日本の企業の動きが活発になっている。しかし、どうやら本格的にセカンドライフが騒がれだしたのは2006年の初めかららしい。

 「んっ?」

 「2006年のユーザー数は10万人そこそこ? それが2006年末には200万人突破だって!? すごい! これはまだ始まったばかりじゃないか。しかもこの企業の中にはメーカーが存在する。やはり、ウチのような企業でもチャンスがあるはずだ!」

 もしこれがインターネットが始まったばかりのころだと考えれば、これからこのサイバースペースでの取引が活発になるだろう。そして、おそらくこの3次元のサイバースペース中でメーカーとして“ここでしかできないこと”があるはずだ。

 「ようし! これはあの頭の固い上司を説得するためにも、まずは自分で作ってみよう。まずはそれからだ。それを見せれば上司も事態の重大さに気づくはずだ。そうと決まったら、この中で物を作るのはどうすればいいんだろう……? んっ? ZDNet Japanで連載をやるようだ。“Second Life 新世界的ものづくりのススメ”だって! これだ!」

セカンドライフ内のシーネットオフィス Second Life内に建設されたシーネットネットワークスジャパンのオフィス(Cyber Adventure 118, 30, 31) 。

 今回からスタートした新連載「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」(毎週木曜掲載)では、実際にSecond Life内に建設されたシーネットネットワークスジャパンのオフィス(Cyber Adventure 118, 30, 31) を、いかに構築していったのか、その具体的な方法を紹介する。

 「へぇー。すでにシーネットのオフィスがSecond Life内に建設されていて、しかもその建設方法を知ることができるのか……。これは凄いぞっ! これなら、自分でウチの自社ビルを立てることができるかもしれない! よし、まずはこれを見て勉強してみよう……。なになに……」

本連載の流れ

 この連載の主人公は、あるメーカーの社員である。そして上司、その次には会社を動かすために小規模プロジェクトを立ち上げた一個人だ。ここで紹介するのは、“プロジェクトX”にも似たつらく喜びにあふれたステップである。彼の小さく始まったプロジェクトの芽が、この連載を参考にセカンドライフ内でのモノづくりを学び、大きく花開く過程をストーリー形式で紹介する。この連載を参考に、読者の方々にもクリエイターとして“バーチャルなものづくり”をマスターしていただければ幸いだ。

 主人公は、まずは自社ビルを作るようだ。そしてその中で必要とされる機能は、この連載、そして「Second Life内に建設された実際のシーネットネットワークスジャパンのオフィス」を3次元空間内で見て、手に入れることによってマスターできる仕組みになっている。連載中で解説される建物を実際にSecond Life内で確認し、パーツを無料で手に入れることによってSecond Lifeでの“ものづくり”をぜひマスターしてほしい。

Second Lifeとは?

 Second Lifeは、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くベンチャー企業である「Linden Lab(Philip Rosedale, CEO、社員140人)」が提供する3次元インターネットサービス。1999年に創業したこのベンチャー企業は、ベータ版のSecond Lifeを2002年11月にリリース。その後2003年6月より商用サービスをスタートした。当初1SIM(シム:シミュレータの略、島のひとつの単位)で始まったこのビジネスは、2007年1月時点で3800SIMを超えるまで拡大し、現在も急激にユーザーアカウント数を伸ばしている(2007年2月時点で360万人)。

セカンドライフのホームページ Second Lifeには、2007年2月時点ですでに360万人が居住している。

 バーチャルな島(SIM)をユーザーに販売し(購入時:SIMあたり2950ドル)、その税金(月額295ドル)というビジネスモデルで成り立つ。そしてユーザーからの意見や要望をすばやく取り入れるコミュニティマネジメントによって、ユーザーの支持を受けて発展してきた。代表的な次世代のWeb2.0企業といえるだろう。

 Second Lifeのすべてのコンテンツは、ユーザーによって創り出された世界であり、いくつものグループがテーマをもってアイランドを設計/プロデュースしている。2006年には、米国で、IBM、TOYOTA、NISSANを含む多くの企業が支店を持ち、この世界に参入している。日本でも2006年末以降、デジタルハリウッドを始め、電通、アドブレインなどが相次いで参入を発表し、支援サービスが活発に展開されている。

リンデンラボのホームページ Second Lifeは、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くベンチャー企業である「Linden Lab」が提供している。

 Second Lifeを提供しているLinden LabのCEO、Philip Rosedale氏は、動画再生プレーヤー「Real Player」を提供するReal Networksの元最高技術責任者(CTO)であり、Second Lifeのボードメンバー、投資家達もそうそうたる面々が揃っている。投資家としては、Amazon.com創業者のJeff Bezos氏、そしてLotus Development設立者のMitch Kapor氏がいる。

 この3次元インターネットサービスは、無料アカウント(2007年2月時点で360万人)、または月額9ドルの有料アカウント(2007年1月時点で5万人)どちらでも開設可能。3次元仮想空間の世界を見るには無料のビューワーをダウンロードし、無料アカウントで入れば、すべて無料で楽しむことができる。

(第2回へつづく……)

大槻透世二氏
大槻透世二デジタルハリウッド大学院
次世代インターフェース研究室 研究員
Second Life研究室 研究員/プロデューサー
Linden社推薦 Second Lifeセミナー講師
サイバーアドベンチャーCEO

東北大学心理学専攻卒業。1年間のLA留学を経て、ソリッドレイ研究所でバーチャルリアリティのシステムインテグレーション、立体映像システム構築、HMDシステム構築などを経験。IT系コンサルティング会社を経て、デジタルハリウッド大学大学院コンテンツマネジメント修士課程修了(MCA)。その後、Linden Lab本社にてSecond Lifeカリキュラムのトレーニングを受ける。現在デジタルハリウッドにて「Second Life」セミナーを開催。また、バーチャルリアリティ、メタバース関連のシステム開発/プロデュースを行うサイバーアドベンチャーを設立し、そのCEO職に就いている。

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