![]() |
OSS本流のベンチャーとして日本からアジアへ展開--ミラクル・リナックス |
日本発のLinuxベンダーとして着実に成長しているミラクル・リナックス。日本からアジアへという課題を「Asianux」の開発、啓蒙という新たな枠組みの中で進めている。
日本発のオープンソースソフトウェア(OSS)ベンチャーであるミラクル・リナックスのビジネスは好調だ。OSS市場全体の成長率についてはだいたい20%程度という認識が一般的だが、同社のビジネスはそれを上回る。
同社の代表取締役社長である佐藤武氏は、「特にサポート&サービスが好調です」と言う。同社の売上げはライセンスビジネス、サポート&サービスビジネス、そしてコンサルティングビジネスという3つのカテゴリで構成されているが、その中で特にサポート&サービスが伸びている。
「最近、われわれのMIRACLE LINUXを導入する顧客の、サポート&サービス契約の締結率が上がってきています。これまでのようなインターネットのエッジ系で使われている状況から、ビジネス系のアプリケーション、さらにはミッションクリティカルの分野にまで足を踏み入れたなという感じを持っています」
MIRACLE LINUXはOracle製品との親和性から、Oracleデータベースが使われるケースが多く、特にサポート&サービスを要求するユーザーが多い。これまで同社の事業基盤はライセンスのビジネスであったが、継続して売上げが見込めるストック型のサポート&サービスビジネスの伸びは著しくライセンスのビジネスを上回るようになってきた。
「ビジネス系でのLinux利用が増えてくれば、当然サポート&サービスのビジネスは拡大します」というのが同氏の見方だ。
サポート&サービスといっても、アップデートサポートからプロダクトサポート、エンタープライズサポート、インシデントサポートなど多岐にわたる。特に、エンタープライズはカーネルのダンプ解析やパッチのリリースも含むもので金融系や半導体の生産管理、キャリア系など、ミッションクリティカルな業務では求められるものである。
「当初は、Linuxがかなりのスピードで伸びると見られていましたが、現在はゆるやかに、しかし着実に伸びているという感じです。インターネットのエッジ系にはどんどん入っていますが、今後はビジネス系や比較的大規模のハイエンド、そしてミッションクリティカル系にその戦場を移していくと見ています」
サポート&サービスのビジネスが拡大しているということは、Linuxが企業に導入され、Linuxに対するリテラシーが向上していることの証拠という捉え方だ。それが同社のビジネスの素地になるという。
こうした情報系でのLinuxの浸透に合わせて、今後はキャリア系の世界でもLinuxの利用が進むというのがミラクル・リナックスの考えだ。
「特に、最近のIPテレフォニーにおけるSIPサーバが今後普及していくと、そのOSはLinuxということになります。マーケットのボリュームが大きいことから、そこにもわれわれのビジネスの勝機があるのではないかと思っています」(佐藤氏)
同氏は、「この市場は何しろ台数が違うのです」と言う。その言葉にあるように、現在、国内市場で稼働するLinuxサーバの数はせいぜい数十万台というオーダーだ。しかしそれに対し、PBX(構内交換機)は2桁も違う1000万台を越えているというのが一般的な見方である。
「PBXがインターネットプロトコルを基盤としたSIPサーバに替わっていくときの、そのマグニチュードというのはすごいものがあると思うのです。そちらにも僕らは手を広げていきたいと思っています」と佐藤氏。
現実に、同社においてもキャリア系でのビジネスが始まっている。しかし、そこで求められるのがLinuxサーバOSである「MIRACLE LINUX」の信頼性や可用性、そして拡張性だ。いわゆるRAS、つまりReliability、Availability、Serviceabilityである。
「ここが僕らのテクノロジのキーポイントです。情報システムのサーバのLinuxであろうが、キャリア系のLinuxであろうが同じです。われわれの現在のMIRACLE LINUX 4.0(Asianux 2.0)は、OSDLが標準化を進めているキャリアグレードLinux(Carrier Grade Linux:CGL)をいち早く取得しているのです」(佐藤氏)
同社のLinuxは、いわゆるファイブナイン(99.999%)の可用性を備え、OSDLからはCGL、つまりキャリアでも使える信頼性を持っているLinuxであるという“お墨付き”をもらっている。これはキャリアだけでなく、その一方の、企業のミッションクリティカルな分野でもMIRACLE LINUXが十分その使用に耐えるということを示している。
佐藤氏は、今後のテーマとしてセキュリティを上げている。
「セキュリティは今日的なテーマです。今でもセキュアOSなどの取り組みがありますが、構造的に強いということでシンクライアントのモデルがあります。このシンクライアントへの対応という要望がわれわれにもかなり来ています」
すでに、同社は2005年からシンクライアントへの対応を積極的に進めている。USBメモリに同社のMIRACLE LINUX のコンパクト版を搭載、これをPCに差し込めばブートされそのMIRACLE LINUXのコンパクト版が自動的に起動するという仕組みだ。
ユーザーにはその状況が分からないものの、IDを入力すればセキュアな環境で作業が行えるようになる。今セキュア環境が必要なビジネス系で普及し始めているという。
「各メーカーが、さまざまなシンクライアントターミナルの開発を進めていますが、既存のPCを利用できてセキュリティに強いシンクライアント用のOSとしてLinuxが注目されています」と佐藤氏。同社がそのコンパクト版LinuxをOEM供給し、各ベンダーがこうしたソリューションをすでに提供している。これもLinuxの新たな応用分野である。
佐藤氏は、「このマーケットも非常に大きいのです。それぞれのPCがディスクを持っているのでセキュリティが問題になるのであって、シンクライアントにすればそうした問題が解決するわけです。Linuxのすそ野が広がっています」と今後に期待している。
このシンクライアントに代表されるように、これまでのような情報系のサーバ用OSとしての普及だけでなく、この分野は今後のLinuxの市場を拡大する大きな動きに結びつきそうだ。IT、コンピュータに加えて、家電分野にまでLinuxが広がればきわめて大きな市場が形成されることになる。
MIRACLE LINUXでは、次のバージョンで仮想化技術とともにセキュリティをさらに強化する計画だ。
市場には、Red Hat、Novell SUSEを筆頭に数多くのLinuxディストリビューションが存在する。そこでのミラクル・リナックスの存在意義は何か。
それに対し、佐藤氏は「日本にカーネルのディベロッパー集団を抱えているということです」と明確に答える。OSSの世界はオープンであるといいながらも、現実的にはベンダーロックインが進んでいると指摘する人も多い。
そこで、ベースはオープンソースでありながら、外字の問題などを含め、日本の要求をきちんと取り込めるディストリビューションは必要だ。さらにはキャリア系などを含め何かトラブルがあってもきちんと対応できる。すべてが米国ということでではなく、そうした基盤を日本として持っておくことはきわめて重要である。
さらにミラクル・リナックスは、この日本を基盤にして韓国、中国などアジアとの連携を深めている。日本OSS推進フォーラムでも北東アジアという枠組みでOSS推進活動を進めているが、結果的にはこれと同様に、同社も開発とハードウェアおよびソフトウェアのサーティフィケーション(動作保証)を中心に連携を進めている。これは同社の重要な活動のひとつだ。
「21世紀はアジアの時代と言われています。ITテクノロジにおいても同様なことが言えると思います。これまでの米国中心のITからOSSをベースとした新しいパラダイムシフトが始まろうとしているのです。日中韓が協業してアジア発のOSSテクノロジが世界をリードする、そんな夢物語が現実する日が必ず来るでしょう。そして中国のレッドフラッグ・ソフトウェア、韓国のハーンソフトの3社によるAsianuxプロジェクトがその中核的な役割を担うことができると考えています」(佐藤氏)
その取り組みは、2007年に設立される「アジアナックス・コーポレーション」という枠組みの中でより具体性を持つことになるだろう。
ミラクル・リナックスの代表取締役社長である佐藤武氏。
ZDNET Japanは、Ziff Davisからのライセンスに基づき株式会社4Xが運営しています。
ZDNET Japan is operated by 4X Corp under license from Ziff Davis.
Copyright © 2026 4X Corp, Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.