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エンタープライズ分野において今やOSSでダメという弱点は見あたらない--NTTデータ |
日本を代表するシステムインテグレーター(SI)の一社であるNTTデータ。同社は、ビジネスの原点である「お客様本位」を企業理念に、「お客様にご満足いただける情報システムの提供」に全社を挙げて取り組んでいる。その取り組みのひとつがオープンソースソフトウェア(OSS)分野の普及促進である。
NTTデータでは3年前より、OSSを推進する部門を設立。現在「オープンソース開発センタ」と呼ばれているこの組織は、OSSによりシステムを開発する部門と、OSSの検証およびサポートを行う部門の2つの組織で構成。200名を超えるエンジニアがOSSの普及促進に取り組んでいる。
オープンソース開発センタの取り組みは、システムのすべてをOSSで実現する「フルオープンソース」が基本。オペレーティングシステム(OS)であるLinuxから、OSSミドルウェアのPostgreSQL、Apache、Tomcatまで、フルオープンソースのソフトウェアスタックを活用することが前提となっている。
「約50名で構成される評価・検証チームと、約150名で構成されるSIチームが一緒になり、毎年少しずつ規模の大きなシステムをOSSで構築することに挑戦しています。2つのチームが連携しながら少しずつ難しいシステム構築に挑戦し、うまく仕組みを作っていくことで経験を積み重ね、ノウハウを蓄積しています」と話すのは、NTTデータ 執行役員 基盤システム事業本部長である山田伸一氏だ。
NTTデータがOSS分野に注目したのには、3つの理由がある。山田氏は、「高尚な理由と低レベルの理由、そして中間レベルの理由です」と話す。
まず高尚な理由は、「ハードウェアをはじめ、さまざまなITリソースがコモディティ化していく中で、社会インフラとして誰もが必要とする(よく使われる)ソフトウェアもコモディティ化すればいいと思っていた」こと。低レベルの理由は、「タダ(無料)のソフトウェアが使えるといいなと思った」こと。そして中間のレベルの理由とは、「OSSを活用することで、自社の技術者のスキルを向上できるのではないかと考えていた」ことだ。
「そのほかにも、商用のソフトウェアを使用していて、その提供ベンダーから“このソフトウェアのサポートは終了です”と言われると、仕方なくお金を払ってバージョンアップをしなければならないという経験も何度もありました」と山田氏は言う。
このような経験から山田氏は、「OSSを有効に活用することで、ムダな仕事やムダな投資をなくすことができるのではないか?」と考えたという。
NTTデータでは、オープンソースソフトウェアの運用管理ツール「Hinemos」やPostgreSQLに高速で高精度な全文検索機能を提供するソフトウェア「Ludia」、複数のPostgreSQLサーバをひとつのデータベースとして仮想化し、並列分散動作させるソフトウェア「PostgresForest」など、OSS関連ソフトウェアを独自に開発・提供している。
これらのソフトウェアを開発するに至った経緯を山田氏は、次のように語る。
「OSSの利用を始めた当時、既存の仕組みだけでは足りない機能がありました。たとえば、OSSを使用したシステムで障害が発生した場合、それを解析する仕組みがありませんでした。そこで、VAリナックスと共同で“ミニカーネルダンプ”を開発し、オープンソースとして2004年10月に公開したのです」
また当時は、運用管理ツールもなかったので、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「平成16年度オープンソースソフトウェア活用基盤整備事業の委託(分散ファシリティ統合マネージャの開発)」を受けて開発したのがHinemosだった。
そのほか、PostgreSQL関連のプロジェクトも、PostgreSQL単体ではエンタープライズ分野における拡張性が不足していたので、クラスタリングなどの必要な仕組みを新たに開発し、エンタープライズ分野におけるOSSの適応領域を拡大することを目指した。
OSSでフルオープンソースソリューションを実現するための取り組みをNTTデータでは、Prossioneと呼ばれるプロジェクトにより推進している。このプロジェクトにより同社は、OSS環境のスタック整備とユーザー環境における実績の蓄積を目指している。
山田氏は、「スタックの整備については一定の成果を上げており、必要なアプリケーションのかなりの部分で使えるレベルに来ています。後は、とにかくこれらのツールを使って実績を積み重ねていくことです。実際の運用の中から、次に必要なモノが見えてくるので、そこをまた解決するという繰り返しが重要です」と話している。
実績面では、たとえばクレディセゾンの事例がある。クレディセゾンでは、会員向けの新サービス提供へ向けたNetアンサーシステムの再構築が課題となっていた。
「ハード的にもソフト的にも拡張性が限界に近づいており、スピーディーに新サービスを提供するための機能追加や業務代行への柔軟な対応が困難な状況にありました。そこで、経済性、スピード、柔軟な拡張性を求められることからもOSS活用が検討されました」(山田氏)
外部要件によって制約があるミドルウェア以外は全てOSSを採用し、Apache、Tomcat、LinuxによるOSSプラットフォームに、データベースにPostgreSQL、負荷分散にheartbeatという組み合わせで実現されている。
山田氏は、「大きな冒険をしたという感覚はありません。ほかにもフルOSS環境で実現したエンタープライズ分野における数多くの実績があります。また、阪神高速道路のように、一部に商用ソフトを用いたもののミッションクリティカルな基幹系システム(会計システム)をOSS環境で実現した(Apache、Tomcat、LinuxによるOSSプラットフォームにOracle Databaseという組み合わせで実現)という点で、大きな意味を持つ実績もあります」と話している。
OSS環境はまだまだ発展途上であり、いわゆる商用パッケージアプリケーションは、Windowsなどの商用OS上で動作しているのが一般的だ。しかし山田氏は、「逆に、OSSを利用すると“ここがダメ”という弱点はほとんど見あたらなくなってきました。OSSの有効性は使う側に“力”があれば、少ないコストで堅牢なシステムを実現できることです」と話す。
同氏はまた、「トラブルがあってもすぐに対応できること。長期的に安定してサポートができること」などもメリットとして挙げている。
OSS分野におけるNTTデータの強みは、OSS環境に必要なスタックを整備し、トラブルが発生した場合でもきちんとサポートができる環境を実現したことだ。たとえば、セキュリティパッチが公開された場合でも、現在動いている環境を変更したくないと顧客が思った場合には、別の方法でセキュリティ上の問題を解決できる経験やノウハウを有している。
今後はさらに、インフラの部分において、仮想化やSOA(サービス指向アーキテクチャ)などの技術に注目していくという。山田氏は、「世の中に公開されている仮想化やSOA関連のOSSの検証はスタートしています。変化の激しい分野なので、今後の状況を見極めながら取り組んでいきたいと考えています」と話している。
日本OSS推進フォーラムにおけるNTTデータの取り組みとしては、現在、山田氏が日本OSS推進フォーラムのステアリングコミッティ座長を務めている。また、サーバ部会、デスクトップ部会、人材育成部会における、さまざまなワーキンググループのリエゾン的な役割を担当しているNTTデータ社員もいる。
「3年前にOSSへの取り組みを開始したときから、他の会社の人たちを一緒に作業をすることで自社だけではできない発見がありました。こうした取り組みは、エンタープライズ分野にOSSを普及していく上で大きな意味があったと思っています。縦割りの組織になりがちな中で、技術者と技術者が会社の枠を越えてコミュニケーションできることには大きな価値があります」(山田氏)
市場が小さなうちは、いろいろな会社がバラバラに活動していても大きな動きにはなりにくい。そこで、みんなで力を合わせて取り組みましょうというのが発端だった。山田氏は、「世の中がどう評価しているかは分からないが、オープンソースに対して熱い思いをもってくれている人たちがたくさん集まってくれたおかげで、私自身はうまくいったのではないかと思っています」と話している。
今後の日本OSS推進フォーラムの取り組みについて山田氏は、「よく“ベンダー寄りの集まり”と言われることがあるので、ユーザー側にどのような価値があるのかが分かりやすくなるような方向に活動内容を変化させていくことが必要だと考えています」と話す。
「今後も、いろいろな人たちが競争と協調を合言葉に活動し、協調分野ではお互いに協力し合っていくことが重要だと思っています。たとえば、人材育成の分野では、大学や高校、専門学校などで、企業で即戦力になる人材をいかに育てていくかが、大きな課題のひとつとして挙げられます」(山田氏)
NTTデータ 執行役員 基盤システム事業本部長、山田伸一氏。
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