掲載日時: 2007-04-03 08:00

フルボリューム暗号化でノートPCを守る!--VistaのBitLockerドライブ暗号化機能とは

コンピュータが盗難に遭ったとき、データを守る方法としてフルボリューム暗号化があるが、この機能のしくみとBitLockerドライブ暗号化について解説する。

著者 : 文:Deb Shinder 翻訳校正:アークコミュニケーションズ、磯部達也

URL : https://japan.zdnet.com/article/20345853/

 仮にコンピュータが物理的に盗まれたとしても、犯人がデータにアクセスできないような方法を開発することがハードウェアベンダーやソフトウェアベンダーにとって重要だ。この方法の1つとして、フルボリューム暗号化がある。

 モバイルコンピューティングがいたるところでますます普及するにつれて、こうした現象がもたらすセキュリティリスクがここ数年で広く知れわたるようになってきた。たとえば先月のComputer World誌の記事によると、事態はいくぶん改善されたとはいえ、行政機関によっては、職員が携帯用コンピュータを持ち出すことが問題になるケースが今も見られる。米国司法省が実施した監査の結果、FBIはここ4年間で月平均4台のノートパソコンを紛失し、中には機密データが保存されていたものもあるという。

 これは、公共機関に限った問題ではない。ビジネスの現場でも、仕事を家や外出先で処理することはよくあるが、ときには企業の機密情報を扱ったファイルを携帯用コンピュータにコピーすることもある。また、オフィス外部から会社のLANに接続するために、VPN接続IDやLANのログイン証明書などの機密情報を携帯用PCに格納することもある。顧客の個人情報の入ったノートパソコンを金融サービス企業が紛失したといったニュースは、数カ月に1度かもっと頻繁に目にしてはいないだろうか。

 モバイルコンピューティングが普及したことで、確かにいろいろ便利にはなったが、これらの携帯用システムを外に持ち出すことは、泥棒にとっても好都合となる。ノートパソコンは単にハードウェアが欲しくて盗まれることもあるが、産業スパイが横行する社会では、ハードウェアの中にある秘密情報欲しさで盗まれることもある。仮にコンピュータが物理的に盗まれたとしても、犯人がデータにアクセスできないような方法を開発することがハードウェアベンダーおよびソフトウェアベンダーにとって重要なのはこのためだ。この方法の1つとして、フルボリューム暗号化がある。

フルボリューム暗号化の仕組み

 サードパーティー製の製品に、オペレーティングシステムとデータが保存されているパーティション全体を暗号化できるものがある。これによって、目的のOSにログオンできない場合にコンピュータを別のOSでブートし、そこから元のデータにアクセスする行為を防ぐことができる。

 簡単にいえば、話はこうだ。ドライブ暗号化とか、(不正確だが)フルディスク暗号化とか呼ばれることもあるこの技術では、OSがインストールされているパーティションをAESなどの強力な暗号化アルゴリズムを使って暗号化する。ドライブ暗号化は「Data at rest(保存データ)」保護技術と呼ばれている。

 言うまでもないことだが、OSボリュームのすべてのデータを暗号化すると、許可を受けたユーザーがコンピュータをブートするためにデータを復号化する何らかの方法が必要になる。これにはOSのブートプロセスが開始する前に鍵情報を渡すことが必要だ。これを行うには、パスワードをユーザーに求めるブートタイムドライバを用意し、USBドライバまたはその他の取り外し可能なデバイスに鍵情報を保存するか、コンピュータのハードウェアにTrusted Platform Module(TPM)を設置する。TPMとはマザーボード上のチップのことで、暗号化キーを特定のコンピュータハードウェアに関連付けることも可能なため、泥棒がハードディスクをコンピュータから取り出して別のマシンに取り付けてからデータにアクセスしようとした場合、鍵情報があってもハードディスクは機能しない。

 盗まれるリスクが高いのは携帯用コンピュータであるため、フルボリューム暗号化は携帯用コンピュータにとって特に魅力がある。しかし、デスクトップコンピュータも許可を受けていない人物が物理的にアクセスできる状況にある場合、有用な技術となる。

Microsoftの取り組み

 Microsoftは新しいWindows Vistaオペレーティングシステムに、BitLockerというドライブ暗号化の実装を追加した。これはTPMに対応したコンピュータで使用できるが、TPMに対応していないシステムでもUSBポートがあれば大丈夫だ。BitLockerはVistaをインストールしたブートパーティションを暗号化する。BitLockerを使用する場合、システムボリュームという1.5Gバイトの別のパーティションをディスク上に用意する必要がある。このパーティションは暗号化されないため、データの保存には使用してはならない。フォーマット形式はどちらのパーティションもNTFSとする必要がある。

 BitLockerがあれば、フルドライブ暗号化を使って携帯用コンピュータを保護するため、サードパーティー製のソフトウェアを購入する必要はなくなるわけだが、ここで問題がある。BitLockerはVistaのEnterpriseバージョンとUltimateバージョンにだけしかついていないということだ。このことは中小企業にとってはあまりよろしくなく、Microsoftから事実上除外されたように感じる人もいる。BitLockerがVistaのHomeエディションにない理由は明らかなのだが、どうしてBusinessエディションにはないのか首をかしげる人も多い。ほとんどの中小企業ユーザーはBusinessエディションを使うと思われるが、これはEnterpriseエディションは小売チャネルでは手に入らず、Ultimateエディションはコスト高で、企業にとって不要でユーザーに利用させたくないMedia Centerなどの娯楽機能が付いているからだ。

 この疑問に気づいたのは、先週MicrosoftがBitLockerについて発表した後、同僚のIT専門家と話しこんでいる最中だった。もっともな理由付けはこうだ。BitLockerは付加価値の高い保護機能を提供するのだが、最大限の導入効果を発揮するのは、きわめて管理の行き届いた(大企業などの)環境で、技術に習熟した管理者が、復旧用のキーを作成して安全に保存し、いつでもアクセスできるようにしておけるような場合だ。管理があまり行き届いていない(中小企業など)では、ユーザー自身がボリュームを暗号化して復旧できないといった羽目に陥ることも大いに予見できる。あれこれ考えが巡るのだが、ではなぜUltimateエディションには入っているのだろうか。

 その質問の回答としては、Ultimateエディションは製品の性質(および価格)からして、他のエディションすべての上位集合となるように設計されたということだろう。大枚をはたけば、すべてもらえるということだ。また、Ultimateを購入するのは主に「パワーユーザー」や、企業のIT専門家のようにIT技術に精通している者であるから、BitLockerの実装にしくじってデータを紛失してしまったということもあまり考えられないからと論ずることもできる。

中小企業用のBitLockerがあるのか?

 MicrosoftがBitLockerをBusinessエディションに入れないというビジネス上の決定を下したとはいえ、中小企業はこれを、「フルボリューム暗号化は大企業専用のソリューションだ」というメッセージだと取るべきではない。EnterpriseエディションにはBitLocker以外にも、ワンランク上のサポートが受けられるなどの利点もある。BusinessエディションとEnterpriseエディションの価格差はおよそ100ドルだが、これは多くのサードパーティー製のドライブ暗号化製品の価格を下回っていて、なおかつOSを3年間使うとすれば、1年あたり34ドルにも満たない。

 もちろんサードパーティー製の製品を選ぶなら、フルボリューム暗号化による保護を受けるためにVistaにアップグレードする必要はない。旧バージョンのWindowsにも有償およびオープンソースのドライブ暗号化製品があり、Linuxが稼動するマシンにもソリューションが用意されている。

 以上をまとめると、機密データ(クライアントの秘密データだけでなくいろいろなデータを含む)が入ったすべての携帯用コンピュータにはフルボリューム暗号化を行うのが望ましく、企業の大小は関係ない。そしてBitLockerであれサードパーティー製の製品であれ、企業の多層的なセキュリティ戦略にこの価値ある階層を追加することでメリットの出るソリューションが存在するということだ。

ZDNET Japanは、Ziff Davisからのライセンスに基づき株式会社4Xが運営しています。
ZDNET Japan is operated by 4X Corp under license from Ziff Davis.

Copyright © 2026 4X Corp, Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.