掲載日時: 2007-05-07 10:32

OSSで新たなビジネスモデルを模索、商用ソフトとの“ハイブリッド”で差別化--シーイーシー

2008年には創立40周年を迎える伝統ある情報サービス企業のシーイーシー。メインフレームの受託開発で企業基盤を作り、独立系のSIerとして地歩を築き、そして2005年からOSSにも本格的に取り組み始めた。

著者 : 宍戸周夫(テラメディア)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20348232/

 2008年には創立40周年を迎える伝統ある情報サービス企業のシーイーシー。メインフレームの受託開発で企業基盤を作り、独立系のSIerとして地歩を築き、そして2005年からOSSにも本格的に取り組み始めた。

OpusSquareとOpusCoreでアプローチ

 シーイーシーがOSSに本格的に取り組み始めたのは2005年だ。

 「もちろん、以前からオープンソースには注目していたのですが、事業として立ち上げるということで、2005年にOSSのソリューション&サービスとしてOpen Source Expertを発表しました」と話すのは、同社の取締役で制御システムやITソリューション、ITマネジメントサービスなどの本部長を兼務する田原富士夫氏。

 この発表に合わせ、同社は組織も変更している。2005年下期にOSSのビジネス企画の組織を設立、2006年2月にOSSソリューション部を立ち上げた。それがこの2007年にOSSビジネスソリューション部と名称を変更、本格的なビジネスを展開するという形となった。もともとはOSSのコミュニティと通じて活動を展開してきたが、アプリケーションレベルのビジネスが増えてきたことでこうした組織を作ったのである。

 その中でのビジネスモデルについて、田原取締役はこう語る。

 「当社はOSSで2つのビジネスモデルを持っています。ひとつはOpusSquareで、海外も含めたOSSのアプリケーションを我々で品質保証も提供しながら日本に紹介するというものです。もうひとつはOpusCoreというSI部門を支援する、オープンソースの技術を生かしてお客様のシステムを構築するというものです」

 つまり、OpusSquareはいわゆるパッケージ製品をベースにした展開、そして独自にOSS技術を基盤に作り込むというのがOpusCoreである。そのソリューションを、OSSを現場で支えるITソリューション本部OSSビジネスソリューション部の土志田宏人部長はこう説明する。

CECの土志田氏 CEC ITソリューション本部OSSビジネスソリューション部 部長の土志田宏人氏。

 「OpusSquareシリーズでは、国内外の優れたOSSパッケージ製品の提供とともにお客様のITインフラ環境に合わせたシステム構築を行っています。CRMパッケージのOpusSquare CRM、ビジネスインテリジェンスツールのOpusSquare BI、コミュニケーションツールのOpusSquare BLOG、そしてOpusSquare SNSソリューションなど、OSS製品のラインナップも拡充しています」

 このOpusSquareシリーズは、SNSやブログなども見ても分かるように、同社はライト感覚でOSSのソリューションとして作り上げたという経緯がある。一方のOpusCoreは、顧客のソリューションの下支えをする基盤系のソリューションという位置づけだ。

ハイブリッドのビジネスモデルを創造

 こうしたOSSのソリューションで同社がターゲットにしているのは、「これまでシステムを導入しようとしてもなかなかアプローチできなかった方々です」と話すのは、ビジネスソリューション部の木村守宏次長である。

CECの木村氏 CEC ビジネスソリューション部 次長の木村守宏氏。

 シーイーシーは、もともとメインフレームを中心に大企業を相手にビジネスを展開してきた。しかしこのOSSでは、従来シーイーシーがソリューションを提供できなかった層にまで食い込むことができる。シーイーシーとしては、それも大きなメリットだ。

 「特にOpusSquareでは、このようにわれわれの力が及ばなかった中小企業の皆様にもソリューションを提供したいと思っているわけです。つまり、OSSはわれわれにとっては完全に新しいビジネスモデルを作り上げるという要素技術なのです」と田原取締役も言う。

 しかし同社は、このOpusSquareにしろOpusCoreにしろ、フルオープンソースにこだわるだけでなく、それはユーザーニーズに合わせるという考え方だ。当然ユーザが商用のデータベースを望む場合はそれに対応する。それを同社は「ハイブリッド」という言葉で表現している。実際、エンタープライズの場合、現在のところは完全にハイブリッドだという。

 「サブシステムではフルオープンも増えていますが、基幹系システムの場合は過去の資産もありますので、フルオープンソースは難しいというのが現状です」(田原取締役)という状況があるようだ。

 もともと商用製品で作られていたシステムをオープンソースにしても、性能が良くなるということは基本的に望めない。商用製品の方がやはり性能も品質も優れている部分がまだまだ多い。その一方で、コストという視点ではOSSが有利に働く。そこをどう見極めるかということになる。

 そこで商用のものを単にOSSにマイグレーションするのではなく、システムの上流工程から見直し、この部分は商用、この部分はOSSという判断が必要になる。

 「特に私どもは独立系ですので、基本的にお客様に最適なシステムをコーディネートしてお届けするというコンセプトを持っています。たとえばサーバは Linux、クライアントはWindowsというようなハイブリッドが中心になります。経験から、それが分かってきました」と田原氏は言う。

OSSを日本市場に合わせる

 シーイーシーが提供しているのはOpusSquareとOpusCore。簡単にいえば、OpusSquareはパッケージ、OpusCoreは手作りシステムである。もちろんこの2つでは、OSSといってもビジネスの考え方、進め方がまったく違うという。

 田原取締役は「品質保証や運用/管理という部分ではメインフレーム系のCOBOL技術者もいますが、われわれは以前からOSやミドルウェア、通信系などインフラの部分でオープン系をやっていたので、OpusCoreのようなシステムは得意な分野です。それに対し、OpusSquareの方は新しい分野といえます」と言う。

 土志田部長も、「ミドルウェアの技術は同じですが、OpusSquare系は若いエンジニアばかりです。新しい発想を持ってやっていかないと推進できないという部分があります。従来のビジネスのように、ごりごり作っていくというのではなく、広く世界を見渡して、どこかに新しいものがあるだろうとか、お客様のビジネスをいかに早く回すことを考えるとか、エンジニアの発想がだいぶ違っています」と話している。

 40年という歴史を持つ同社の中でも、現在のエンジニアはUNIX、Windows、 Linuxといったオープン系の人が圧倒的。しかし、そのオープン系の中でもこのOpusSquareはさらに新しいエンジニアがほとんどを占めているという。その意味で、OpusSquareのビジネスは事業領域を拡大する、同社の将来を担う部分ということができる。

 「しかし、その背景にあるのはシーイーシーの技術力です。OpusSquareシリーズもわれわれが選定した選りすぐりの商品、ある意味でグローバルスタンダードになり得るような製品を日本市場に持ってきています。またそのサポートではわれわれが独自に行える体制を持っていますので、いかにオープンソースといっても性能や品質はわれわれが責任を持ってやっています」と田原取締役。

 当然欧米のソリューションは、そのままでは日本市場に合わないものもある。それを日本市場に適した形でインテグレーションし、サポートするという点では、永年のSIerとしての実績が生きてくる部分だ。

自社ブランドを活用した攻めのビジネスに転換

 構築事例に関しても、すでにいくつかの実績がある。パッケージOSSであるOpusSquareの事例だ。そのひとつに、文化遺産国際協力コンソーシアムがある。

 日本は現在、国際的な文化交流を推進しているが、同コンソーシアムはその推進を担う中核組織である。そこで的確に情報交流を行うために、OpusSquare SNSを使ってOSSによるSNSの仕組みを作った。

 現在、SNSそのものとファイル管理の部分が稼働している状態だが、将来的には文化遺産に関するさまざまな資料や文献、研究発表資料に関する情報を広く提供できるよう、国際的な活用を支えるための基盤として、また文化遺産国際協力への理解度を高めるツールとして活用する計画だ。

 このシステムについて木村次長は「データを蓄積するところと、情報を共有するところを合わせたポータルのような形で、情報交流を促進するところをオープンソースでやっていこうというものです」と説明する。

 これはまさに同社のいうハイブリッドのシステムで、LinuxとWindowsの混在環境下での利用検証。それ以外でも、大手航空会社のブログサイトなど、いくつかの事例がある。

 またOSSの新たな展開として、IPAのオープンソースソフトウェア活用基盤整備事業でも検証をすすめている。IPAは2006年度から自治体でのOSS普及を目指して各地で推進しているが、大分県でも2006年度より職員認証基盤、電子決裁基盤、ファイル管理基盤の3つのシステムの実証実験を行っている。

 この認証基盤のモデル作りを同社の関連会社である大分シーイーシーが同県の財団法人ハイパーネットワーク社会研究所が中心となるコンソーシアムに参加し、担当している。

 そのほかOpusCoreを使ったシステムも現在いくつか構築中。具体名はまだ出ないが、品質保証のシステムや、インターネット系のビジネスを新たに始めるための基盤システムが開発されているという。

 シーイーシーがOSSビジネスを本格的にスタートして2年。スタート当初は「OSSとは」という説明から入ったが、すでに啓蒙活動は終わって、これからはどう活用するかという段階に入っているという。

 田原取締役は「この市場は日々変化しているが、SIerとしてはやりがいがあります。以前のようなシステム開発を請け負って、特注のソフトウェアを作るというビジネスから、Opusというブランドを持つことでメーカーとしてラインアップを持ち、活動できようになりました」と言う。

 受託開発を中心にスタートしたシーイーシーだが、OSSは40年を経て自社ブランドを活かした攻めのビジネスに転換している。

CECの田原氏 CECの取締役で制御システムやITソリューション、ITマネジメントサービスなどの本部長を兼務する田原富士夫氏。

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