掲載日時: 2007-07-23 17:30

日本国内での普及拡大を目指しつつ、世界への発信も--日本PostgreSQLユーザ会

OSSのデータベースとして、企業の選択肢のひとつになっている「PostgreSQL」だが、その普及拡大の一翼を担ったのが、ユーザー団体である「日本PostgreSQLユーザ会」だ。

著者 : 田中好伸(編集部)

URL : https://japan.zdnet.com/article/20353218/

 オープンソースソフトウェア(OSS)のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)である「PostgreSQL」は、高機能化・高性能化することで、今や商用のRDBMSと比較してまったく見劣りしないものとなっている。確実に、ユーザー企業の選択肢のひとつとしてリストアップされている。

 実際に、リクルートが運営するウェブサイトR25.jpとL25.jpでは、PostgreSQLを採用している。これらのウェブサイトは、月間ページビュー(PV)1億2000万、1秒間に約100クエリのトランザクションを処理する大規模サイトという。PostgreSQLは、こうした大規模サイトでの運用に耐えられる堅牢なRDBMSとなっているのである。

 PostgreSQLがこうした大規模サイトで採用されるようになるまでに、日本国内で、その普及拡大の一翼を担ったのがユーザー団体である「日本PostgreSQLユーザ会」(JPUG)だ。

PostgreSQLはチューニングが必要

 JPUGの発端は、1996年にメーリングリストとして始まったことにある。それから1999年に任意団体としての活動が始まり、2005年に特定非営利活動法人(NPO)に形態を変えている。JPUGの目的について、理事長の片岡裕生氏は、こう語る。

 「認知度を上げることが活動の目的です。それとともに、企業でも使えることを証明したいと思っています。その一環としてJPUGでは、活動が始まった1年目の1999年から、勉強会やセミナーなどで企業での事例を紹介しています」

 企業でも使えることを目指しているJPUGにとって、障害となっているのが「“PostgreSQLは遅い”という誤解」(片岡氏)だ。この“誤解”を解くのも、JPUGの活動となっている。

 「PostgreSQLをほかのRDBMSと比較した記述が、サイトで多く見られますが、そうした比較は、PostgreSQLをチューニングせずに実施されています。ですが、PostgreSQLにはチューニングが絶対に必要です。つまり、まともな比較がされていない」

MyNAとの共同作業

 そうした問題意識を持っている片岡氏は、有志の集まりである「データベース性能検証会」を続けている。性能検証会は、OSSのRDBMS「MySQL」や「Firebird」とPostgreSQLの性能を比較検証するという活動を展開しており、片岡氏のほかに、JPUG会員、MySQLのユーザー団体である「日本MySQLユーザ会」(MyNA)の会員、そしてFirebirdのユーザー団体「日本Firebirdユーザー会」の会員などで構成される、偏りのない団体だ。

 MyNAの参加者から「PostgreSQLの専門家がいないので、一緒に比較検証をしませんか」という声をかけられたことで始まった性能検証会の活動を続けるなかで、片岡氏はPostgreSQLは遅いという誤解を解くことに成功している。その性能検証会の成果の一端は、3月に開催されたJPUGの沖縄支部セミナーで紹介されている(同セミナーで利用された資料がPDFファイルで公開されている関連記事=「PostgreSQLは遅い」は本当か?:OSSデータベース比較)。

 「性能検証会の活動のなかで印象的な出来事として、MyNAの方から“チューニングする人がすると、PostgreSQLの性能が違うなぁ”と言われましたね」

 JPUGの理事長である片岡氏は、性能検証会の活動も続けることで、JPUGの目的であるPostgreSQLの普及拡大を狙っているのである。

拡大するMySQLのシェア

 JPUGでは、下部組織としていくつかの分科会を抱えている。日本語での各種マニュアルやドキュメントなどの翻訳を担当する「文書・書籍関連分科会」、JPUGのウェブサイトを管理運営する「コンテンツ管理分科会」(仮称、2007年度新設)、ソースコードやドキュメントを活用してPostgreSQLの内部構造やアーキテクチャを研究する「PostgreSQLのしくみ分科会」などである。

 性能検証会では、MyNAと共同で活動を行っている片岡氏だが、PostgreSQLの普及拡大という狙いを考えると、どうしてもMySQLの拡大ぶりが気になるところであり、「ある調査によれば、日本国内のシェアを見ると、PostgreSQLとMySQLが対等になりつつあるという結果が出ている」(同氏)という。

 企業でもOSSのコンテンツ管理システム(CMS)の利用が拡大していることが背景にあるのでは、と片岡氏は見ている。というのは、CMSに組み込まれているRDBMSが「大体MySQLになっている」ために、MySQLのシェアが拡大の動きがうかがえるのである。

日本の動きに驚く海外勢

 JPUGの活動によって、PostgreSQLは企業にも利用されるようになってきているが、こうした拡大ぶりは、海外では驚きを持って迎えられているようだ。

 「1996年に誕生したPostgreSQLは、2006年に10周年を迎えました。その昨年7月にカナダで開催されたカンファレンスで、日本でのPostgreSQLの利用度合いを紹介したら、海外勢は驚いていました。というのは、PostgreSQLのシェアは世界全体ではおよそ20%とされているからです」

 また、海外勢が驚くのは、日本国内でのシェアだけではない。JPUGに協賛する企業の数にも驚くという。現在、JPUGに協賛する企業は、NECソフトや富士通、サン・マイクロシステムズなど23社に上っている(2007年度の協賛会員数から)からだ。

 JPUGでは、そうした企業からの協賛金を得て、世界のPostgreSQLコミュニティーが開催するイベントにも参加している。2007年5月にカナダ・オタワで開催されたイベントに、JPUGから5人が参加している(うち3人は自費参加)。また今後、イタリアとフランスのPostgreSQLユーザー団体が合同でイタリアで開催するイベントにも、JPUGが参加することが予定されているという。

 日本国内のOSS関連コミュニティーというと、どうしても海外から発信された情報を、日本国内にもたらすという活動が中心になってしまいがぢだ。しかし、JPUGでは、こうした海外でのイベントに参加していくなかで、「今後は、日本から世界に対して情報を発信していくべきではないかということを検討している」(片岡氏)ところだという。

今後は開発にコミット

 “日本から世界への発信”を検討しているというJPUGだが、今後PostgreSQLのさらなる普及拡大を狙ううえで、どういった活動を行おうとしているのだろうか。

 「PostgreSQLが企業でもどんどん利用されているという事実がある一方で、MySQLも、その勢力を拡大しているという事実があります。つまり、OSSのRDBMSを巡る流れがどんどん変わってきているわけです。そうした状況で、何が求められているのか、何をなすべきかを見極めたうえで、今後の活動を展開していきたいと思っています」

 そうしたなかでも、JPUGの理事会では今後の方向性として、「開発にコミットしていく」(片岡氏)ことを決定しているという。

 「具体的にどういった形でPostgreSQLの開発にコミットしていくのかは、現在議論しているところですが、日本の優秀なデベロッパの“開発をしたい”という意欲に、何らかの形で応えたいと思っています」

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