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Linux/OSSでの教育の“スタンダード”を提供したい--リナックスアカデミー |
Linuxを中心としたオープンソースソフトウェア(OSS)を活用したいという企業のニーズは高まりつつあるが、そこで課題とされているのが、Linux/OSSを扱える人材をどれだけ育てられるかどうか、という点だ。この数年でLinux/OSSは、ウェブやメールなどのいわゆるエッジから、企業の基幹系システムにも採用されるようになっており、活用できる技術者が不足しているのである。
課題に対する解決方法はもちろん、地道な人材育成だ。人材育成はベンダーに加えて、ユーザー企業でも展開されているが、技術者を育成するための学校も存在する。濱野賢一朗氏が現在、学校長を務める「リナックスアカデミー」(日本ライセンスバンク運営)も、そうしたスクール(社会人向けの学校)の一つである。
リナックスアカデミーは、2001年4月にLinux講座を開設する形で開校している。それから半年後の10月にはJava講座を開設。そして2007年2月からは、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)やLAPP(Linux、Apache、PostgreSQL、PHP)を活用できる技術者を養成するために「リナックスアカデミー・LAMP/Webプログラミング講座」も開設している。
濱野氏は、2001年にびぎねっとを立ち上げてから、2003年にリナックスアカデミーの教務統括部統括部長に就任。その後、2005年4月に第2代学校長に就任している。その濱野氏は、2003年前後のことを振り返って、こう語る。
「もともとリナックスアカデミーは、“社会人を再教育する場”というコンセプトだったんです。いわば、英会話学校や、会計士などの資格を取得するための学校と同じような位置付けのスクールなのです。それだけに、オープンソース教育の学校にそれほど受講生は集まらないだろうと思われていましたね」
ところが、実際にフタを開けてみると年間600人もの受講生が入校。2001年の開校から、これまでに「合計で約3400人が卒業しており、そのうちの約2000人が、Linuxを中心としたOSSを活用する技術者として現在働いている」(濱野氏)という。
濱野氏が話すように、リナックスアカデミーのことを聞くと誰でも「SI企業やユーザー企業の情報システム部門にいる技術者がLinux/OSSを学んでいる」と思うだろう。しかし、実際のところ、リナックスアカデミーに受講しようと思ってやってくる「8割がコンピュータのことをまったく知らない人」(同氏)だという。
そうした人たちは「コンピュータのことはよくわからないけれど、“Linux”や“オープンソース”という言葉をなんとなく知っていて、それをきっかけにIT業界で働こうという意識を持っている」という。
「なかには、銀行に勤めていたものの、銀行の仕事があまり面白く思えずに、むしろIT業界で働きたいという思いから、リナックスアカデミーに受講しに来た人もいます。また、トラックの運転手だった人がIT業界に興味を持ち、そのきっかけとしてLinux/OSSを勉強したいという実例もあります」(同氏)
そうした人たちを迎える同校が現在開設している講座は主に3つある。一つが、「Linux/ネットワーク講座」であり、もう一つが「Java/データベース講座」、最後の一つが、先に挙げたLAMP/Webプログラミング講座だ。
Linux/ネットワーク講座には、Linuxサーバ構築やシステム管理を習得して、Linux技術者の認定資格である「LPIC」の合格を目指す「Linuxネットワークエンジニアコース」や、Linuxとネットワークの分野でプロを目指すための「Linuxネットワークエンジニア+CCNA資格合格保証コース」などが用意されている。
Linuxネットワークエンジニアコースはそれぞれ、平日の夜間と土日に受講する「夜間・土日クラス」が約6カ月、平日の日中に受講する「昼間部集中クラス」で約6週間の期間で学ぶことができる。なお、どちらも受講料は60万9000円だ。Linuxネットワークエンジニア+CCNA資格合格保証コースの場合だと、夜間・土日クラスが約7カ月、昼間部集中クラスが約7週間で、受講料は71万4000円となっている。
Java/データベース講座では、Javaの技術とSunが認定するJavaの資格である「SJC-P」を取得するための「Javaデータベースエンジニアコース」(夜間・土日で約6カ月、昼間部集中で約6週間、受講料は60万9000円)やシステム設計を習得して上級システムエンジニア(SE)を目指すための「Javaデータベースエンジニア就転職総合コース」(夜間・土日で約9カ月、昼間部集中で約9週間、受講料は92万4000円)などが用意されている。
LAMP/Webプログラミング講座には、開発言語のPHPを基礎から学んで開発演習でLAMPを習得するための「LAMP・PHPプログラマーコース」(夜間・土日で約6カ月、昼間部集中で約6週間、受講料は49万3500円)、PHPとデータベースの2つのライセンスを取得して即戦力を目指すという「LAMP・PHPプログラマー+PostgreSQL CE資格合格保証コース」(夜間・土日で約7カ月、昼間部集中で約7週間、受講料は59万8500円)などがある。なお、「LAMP/Webプログラミングは、昨年11月に発表して、今年2月から講座を始めていますが、これまでずっと満員の状態が続いている」(同氏)ほどの盛況ぶりを見せている。
こうしたスクールの場合、講座の中身は身に付いたが、そこで得たスキルが実生活での収入に結びつかないのでは、その存在意義を問われることになりかねない。リナックスアカデミーでは、受講生に対する就職支援活動もきちんと展開している。IT業界での動向や企業の現場がどうなっているのかなどの説明会が開催されるとともに、キャリアカウンセラーが受講生に個別にカウンセリングしている。
興味深いのは、このカウンセリングは、どうすれば希望の企業から内定を取れるかというよりも、「内定がたくさん取れたが、どの企業に就職すればいいのか困っているという相談が多い」(同氏)というものであることだ。毎年およそ200社、これまでの累計で600社弱の企業が、同校に求人票を送ってきている。
企業に即戦力となりうる技術者を提供してきているリナックスアカデミーだが、同校では、個人に対する講座とは別に、企業向けにLinux/OSSの研修も提供している。企業向けは、3年前から提供を始めているが、その件数は急増しているという。
開始当初は、製品やサービスを提供するITベンダーや通信企業向けに研修を行い、なかには、数百人単位での研修も行ったという。
「ITベンダーや通信企業の現場では、たとえばですが、これまでCOBOLしかやってこなかった技術者をLinux/OSSの分野で活用したいという、スキルチェンジを計画していたわけです。そうした企業側の狙いが成功しているために、最近は、ITベンダーや通信といった企業への研修は落ち着きを見せていますね」
そうした企業の動きが落ち着くのとは逆に、ユーザー系企業に手応えを感じていると濱野氏は語っている。「ITを道具として利用している企業、IT基盤の上でコンテンツを売り物にしている企業では、現場の技術者に対して、“LAMPを勉強してきて、自社のネットサービスの活力を高めたい”という狙いがあります」。
企業向けの研修では、企業ならではのニーズが存在している。SIベンダーの場合であれば、Linuxカーネルが障害を起こしたときに、そのダンプ解析をどうやって進めればいいのかというトラブルシューティングに関する情報を教えてほしいという要望がある。
また、ユーザー企業であれば、Linuxを基盤にしたシステムは、どのように管理していけばいいのかを知りたがっているという。どちらも、Linux/OSSがどういったものであるのかという知識よりも、活用するうえでのノウハウを学ぼうとしていると、濱野氏は見ている。
濱野氏は、この数年間でLinux/OSSを学ぶ個人、活用する企業のどちらも見てきているわけだが、そうした濱野氏から見て、今後のIT教育はどのようにあるべきなのだろうか。
「ITの世界には、技術者の力を証明するための資格は、たくさんあります。そうした多くは、ベンダーが認定した教材やコースに基づいたものです。では、Linux/OSSの場合はどうすればいいのか、という問題があります。Linux/OSSの分野で、何がスタンダードで、何が軸となるのかが決められていない。この問題は、Linux/OSSを中心とした教育を提供する側も受ける側も悩んでいる問題なんです」
たとえば、マイクロソフト製品ならマイクロソフトが認定する資格、シスコシステムズ製品であればシスコシステムズが認定する資格、といったように、それぞれの資格はそれぞれのベンダーが認定するものであり、そこには“スタンダード”とされる認定研修コースも存在している。だが、単一のベンダーではなく、基本的にはコミュニティーによって支えられているLinux/OSSの世界では、スタンダードな研修コース・資格が存在しにくいのである。
こうした課題に対して、濱野氏は「Linux/OSSの世界でも教える側も教えられる側も、悩まなくてすむようなスタンダードがあってもいいのではないか」と考えている。
「そうしたLinux/OSSの世界で技術者を育成するためのスタンダードは、リナックスアカデミーが提示できるのではないかと思っています。個人的な思いですが、そうしたスタンダードなものをリナックスアカデミーが公開して、みんなで共有してもいいのではないかと思っています」
「Linux/OSSの教育にもスタンダードを」と語る濱野賢一朗氏
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