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クラウド? それってうちの会社に関係あるの? |
今回は批判を覚悟してクラウドコンピューティングについて経営者が何を理解すべきかお話しします。研究者やITベンダーの方向けには書いていませんのでご了解の上、読んでいただければ幸いです。
ご存じの通り、クラウドコンピューティングに関しては、研究者を初めIT業界の先駆者やITベンダーがこぞって取り上げています。2008年のバズワード大賞に間違いなくランクインするでしょう。
クラウドコンピューティングは、研究者、ITベンダー、利用者の思惑が交錯しているという意味でバズワードの典型例です。もちろん、それぞれの思惑や期待が違います。研究者はクラウドコンピューティングという概念の夢と理想を追いかけ社会貢献をしたい、ITベンダーは話題性のあるうちに商売にしたい、そして利用者サイドは何か恩恵にあやかりたいと思っています。
結果としては、社会的に影響力のあるITベンダーがその発言力にものを言わせて自社の製品にバズワードをなんとか絡み合わせて公表し、利用者サイドは何か恩恵にあやかれそうだと必死にITベンダーが製品ベースで語るクラウドコンピューティングを理解しようとしている、というのが実態ではないでしょうか。そして、こうしていく中で、異なる製品を持つITベンダーは独自の解釈を発展させることになり、クラウドコンピューティングの意味がどんどんぼやけていってしまう。いろいろな話を聞かされ利用者はさらに混乱するという構図です。
クラウドコンピューティングは、対象とするエリアがとてつもなく大きい(大きそう)ため、市場はかなり大きい(大きそう)な訳で、商売人としてのITベンダーにとって格好のターゲット。なので激しいアピール合戦が巻き起こってしまっているのです。
まず最初に理解しなければならないのは、クラウドコンピューティングは来るべき理想を多分に含んだ概念、それが何かについて現時点では誰も明確な答えはもっていないという事です。
今、クラウドコンピューティングといえば、GoogleのCEOエリック・シュミット氏の名前が思い浮かぶでしょう。CEOという肩書きから経営者のイメージが強いのですが、彼はパロアルト研究所、ベル研究所出身の超一流の研究者です。バランススコアカードなどを使って経営をバリバリ行うというタイプではなく、夢を持った経営者です。Googleは夢を、未来を先取りしながら実現していく会社なので、CEOに求められる気質も一般の企業とは違っているのでしょう。そんなエリック氏が発言している事もあってGoogleの今の姿が、イコールクラウドコンピューティングの姿と解釈されがちですが、シュミット氏の発言を聞く限り、今のGoogleはあくまでクラウドコンピューティングの出発点であり、一部であると解釈すべきでしょう。彼自身も明確なクラウドコンピューティングのあるべき姿は示していません。むしろ、現時点では誰も示せないことを一番知っているのが彼なのかもしれません。
それでは、現時点で経営者はクラウドコンピューティングをどう理解すればよいのでしょうか?最初に理解すべきは、現時点でクラウドコンピューティングには実体がない、ということです。
まずは基本的な構成を理解しましょう。
クラウドコンピューティングは4つの構成要素から成り立っています。
ひとつずつ解説しましょう。
まず、クラウドコンピューティングの実行基盤となるクラウドの部分です。ITベンダーの製品はここに集中しているので、一番盛り上がっている部分になります。たとえば、IBMのBlue Cloudなどですね。
ここは、大量のデータを高速処理し、世界中の端末にサービスを提供するためのエンジンとなる部分です。サービスの満足度を落とさないための高いパフォーマンスと信頼性が要求されますし、無制限の設備投資をするわけにもいきませんのでコストを抑えるための技術も必要です。Googleは検索技術を柱に、メールや地図など、魅力的で世界中からアクセスできるサービス群を構築しており、現時点でのクラウドコンピューティングのお手本でしょう。
その時、技術的なポイントとなっているのが仮想化技術です(仮想化については次回解説します)。そのほかクラウドを支える技術としてSOA、グリッドや仮想化データセンターなどがありますが、これらの技術は必須ということではありません。
順番が前後しますが、次は端末です。ここは将来の可能性が大きく、楽しみなところでもあります。
端末はサービスとユーザのインターフェイスとなる重要な部分。最近では、iPhone等の次世代スマートフォンの登場で携帯端末でのサービスとPCでのサービスの境界線がほとんどなくなりました。また、WiiやDS、PS3やPSPなどといったゲーム機もインターネットに接続され新たな領域の端末として期待されます。次世代DVDと呼ばれるブルーレイもインターネット接続でのコラボレーションサービスが開始されていますので、ブルーレイ再生機、さらにはそこに接続されたTVも新しい端末と言えるでしょう。さらに先の話になりますが、ネット家電が普及すれば、家電製品も端末の仲間入り。とても期待感が高まりますね。Googleも自社で開発した"Android"プラットフォームの携帯電話“G1”を発表し、携帯の領域に進出を開始したのは記憶に新しいところです。
ネットワークのさらなる高速化と信頼性向上は、端末が処理できるデータ量を飛躍的に向上させるでしょう。このエリアは通信キャリアが積極的な製品展開を進める部分です。携帯系では3G、さらに次にくる4Gネットワークを中心に、固定系では携帯通信網の統合も含めてNGNが目玉となっていくでしょう。
構成要素で一番重要なのがサービスの内容と質です。経営層として知るべきは、自身がユーザとしてどんなサービスを受けられるか、それによってどんなメリットがあるのか、そして満足できる質が提供されるのかという点であり、決して最新のIT技術でも超高速ネットワークでもありません。あくまでサービスです。
最新のIT技術や次世代ネットワークはあくまで質の高いサービスの裏側に存在し、これを支えているだけです。ここを履き違えないで下さい。つまり、クラウドコンピューティングを経営者が理解しようとするときに、クラウドコンピューティングを実現するための技術であるグリッドや仮想化といった技術を理解しても仕方ないのです。まず、クラウドコンピューティングの全体像を理解し、あとは革新的なサービスが出現するのを待つというのが今とるべき姿勢でしょう。提供されるサービス以外は黒子―サービスを享受される皆さんが考えるのではなく、サービスを提供する側が考えるべきところなのです。提供されるサービスの内容や質に注目しながらメディアの情報を見ていただければ、不必要な情報は何かわかるはずです。
最近のITトレンドを牽引している企業のサービスにはある共通項があります。それは、どの企業も強いサービスを持っていると同時に、サービスを支える自社のインフラの強みを、外部の面白いアイデア(サービス)を取り込む仕組みとして活かしているということです。
Googleの"App Engine"、Appleの"App Store"、アマゾンの"EC2"、SalesForce.comの"AppExchange"といった、そうそうたるサービスを持った企業が外部サービスを提供するプラットフォームとしての機能も提供しているのです。狙いはただ一つ、次世代を牽引するサービスの青田買いなのです。つまり、彼ら自身、クラウドの可能性をはっきりとは把握できず、外部のアイディアを使ってマネタイズしようとしているのです。
エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。
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