掲載日時: 2008-11-10 17:00

企業内コラボレーションはソーシャルメディアだけでは不十分--ZDNet Japanイベントレポート

さまざまな言語や文化的背景を持った社員を抱えるOracleでは、効率的な社内コラボレーションが不可欠だ。そこで同社では、ブログやWikiを中心としたコラボレーション環境を構築することになった。

著者 : 谷川耕一

URL : https://japan.zdnet.com/article/20383194/

 Oracleには、アジアパシフィック地域に7つの研究開発センターがある。アジア開発センターのジェネラルマネージャーとして、技術開発と運営全般の責任を持つ同社バイスプレジデントのPascal Sero氏は、複数の研究開発拠点でのナレッジ共有に課題があったと話す。重複作業をいかにして防ぐのか、異なる文化的背景を持つメンバーから新しいアイデアを引き出すにはどうしたらいいのか。そのためには、「柔軟性の高い方策が必要だった」と、ZDNet Japan主催のイベント「ZDNet Japan Social Technology Conference 2008」にて同氏は語った。

Sero氏 Oracle Software Research and Development Center バイスプレジデント Pascal Sero氏

 Sero氏がこうした課題解決の方策として注目したのが、Web 2.0的なコミュニケーション手段だ。つまり、SNSやブログ、Wiki、メッセンジャーなどの活用である。しかし、既存の技術は企業で利用するには不都合があった。そこでOracleでは、企業の研究開発という特殊な環境でも活用できる、新たなコミュニケーション方法を模索している。

セキュリティの確保と多様な言語、文化への対応

 研究開発業務では、情報の機密を守ることが強く求められる。Oracleの企業ルールやコンプライアンスはもちろん、法律などの規制もあり、それらをきちんと守れるコラボレーション方法でなければならない。「業務はステルス型で進められる。社内にさえ知らせない情報もたくさんあるのだ」とSero氏は言う。

 もう1つ解決すべき要素が、多言語および多文化への対応だ。異なる言語や文化のメンバーが効率的にコラボレーションすることは難しい。Oracleの研究開発部門のメンバーは、基本的には英語で会話できるとはいえ、英語が母国語でなく話すよりも読み書きのほうがやりやすいメンバーも多い。さらに、時差や地理的な距離もあり、直接会話する機会が少ないというのが現状だ。

 これらの課題解決策として、ブログやWikiを中心としたコラボレーション環境が構築された。単にブログやWikiのサーバを立ち上げるだけでなく、シングルサインオンを実現し、ユーザーアクセス管理機能を加え、詳細なID管理を実現。さらに、セキュアコンテンツマネジメント、バージョンコントロールとロールバック、セキュアエンタープライズサーチ、既存のITソリューションへのコネクタといった機能も加えていった。

 「企業における利用では、Facebookのようなソーシャルメディア機能だけでは不十分。ERPやCRMから情報を抽出する機能も欲しいし、セキュアサーチやコンテンツマネジメント機能も必要だ」(Sero氏)

 Oracleが自ら手を加えたこの仕組みを導入したことで、まずは社内におけるブログの利用が急速に伸びた。研究開発センターでは2008年6月現在650のブログが開設されており、ブログ開設から同時期までの総ページビューは480万を超える。そして、これまでに蓄積された総情報量は136.58Gバイトにも至った。こうした情報の活用で、2007年9月から2008年6月の期間にストレージ、印刷、通信、技術サポートなどさまざまな面でコスト削減が実現し、その合計は249万ドルに上るという。

 投資対効果だけが重要なのではない。人は、共通の関心事があれば意味のある会話ができるものだが、直接だと意見を言わない人も多い。これが、ブログだとどんどん出てくるのだ。「誰でも自分の意見を簡単に発信でき、組織や階層を越えてコメントできるのがいい」とSero氏は言う。

 Oracleでは、過去3年間に40社を超える企業買収を実施しており、当然ながら研究開発チームにも新たに加わる人がいる。彼らは、いち早くOracleのカルチャーに溶け込まなければならない。面と向かってのコミュニケーションだけではお互いを知るために時間がかかっても、各人が情報を発信することで誰が何を考え、何に興味を持っているかがわかり、組織も階層も超えたコラボレーションができる。そうすれば、溶け込むのも早いとSero氏は分析している。特に、最近の若いエンジニアはこのようなコミュニケーション手法に慣れているので、効果は高い。こうした目に見えないメリットも重要だとSero氏は指摘する。

自社の成功事例を元に製品化へ

 この研究開発センターでの取り組みが、「Oracle Social Suite」という製品になりつつある。シングルサインオンの機能を搭載し、何千ものブログやコミュニティを企業ポリシーに沿って効率的に運用できる製品だ。「Oracle Database」や「Oracle Fusion Middleware」などのテクノロジ基盤の上に、ソーシャルコラボレーションのさまざまな機能が載る構造となっており、ブログのサーバ機能部分にはSix Apartの「Movable Type」を利用する。評価の高い既存製品は積極的に取り込み、Oracle技術を用いてエンタープライズ利用に耐えうるよう拡張しているのだ。

 また、同製品にはタグ付けによるセマンテックサーチ(意味検索)を実現し、検索を柔軟にしてリコメンドする機能もある。さらに、タグからコンテンツの意味を解析して意味ネットワークを作成し、そこから該当情報を発信している人を「興味」でひも付けする。これで、キーワード検索だけでなく、自分と同じ興味を持つ人をネットワークから見つけることができるのだ。また、メンバー間の興味の関連性をグラフ化する機能もある。

 「社員を引きつけるものが必要だ。そのためには参加意識が重要であり、それがあってこそ新しいアイデアが生まれる」とSero氏。ブログやWikiの活用、そしてリコメンドや人現関係のビジュアル化といった方法は、従来の検索で欲しい情報を探すというワークスタイルとはまるで違う、参加意識の高い「仕事環境」を生み出す。ここには、新たなアイデアを生み出す大きな可能性が秘められているのだろう。

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