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「ちょっとお茶しない?」が事業化へ--「あったらいいな」を実現する企業:リクルートエージェント |
第9回目の「あったらいいな」は、リクルートエージェントの寺小屋的活動拠点「ちゑや」についてです。リクルート関連会社の人材サービスの専門企業として知られているリクルートエージェントは、Great Place of Work Institute Japan実施の「日本の働きがいのある企業」にて、2009年版で第2位に選ばれています。
| いろいろな社員と顔見知りになれる度 | ★★★★★ |
|---|---|
| 元気ハツラツ度 | ★★★★☆ |
| 社内コミュニケーションの潤滑度 | ★★★★☆ |
| 会社が楽しくなりそう度 | ★★★☆☆ |
| 社内マンパワーの有効活用度 | ★★★★☆ |
今回取り上げる「ちゑや」は、社員同士が部署や肩書きを越えて活発にコミュニケーションができる非公式の場でありながら、会社の組織として存在するユニークな活動です。自主運営時代からの経緯と現在の「ちゑや」の活動内容について、同社事業戦略支援ユニットグループマネージャーの中村繁さんと、同ユニットの中嶋由美さんにお話をお伺いしました。
事業の発展と共に組織が拡大し、従業員数が増えることは会社としては喜ばしいことですが、一方で組織が大きくなればなるほどお互いの顔を知らない、あるいは、知っていたとしても業務に関わる人以外とコミュニケーションを図る機会は減少して行きます。現在、従業員数1800名を有する転職エージェントの同社でも、同様の悩みを抱えていました。
2006年当時、営業企画担当者であった中村さんが、「コミュニケーションが取りにくい」という居心地の悪さを感じ、もっとざっくばらんに他の部署に人たちとも話のできる場を持ちたいと始めたのが「ちゑや」の活動でした。
リクルートエージェント「毎年数百人レベルで社員が増え続けた結果、知らない人同士がお互いに廊下ですれ違っても、挨拶さえままならないという状況になり、私自身何となく居心地の悪さを感じていました。もとから社内にいた自分がそうなら、新しく入って来た人はもっとコミュニケーションが取りにくいと感じているのではないかとも考えました。何か相談や悩み事があっても、誰に聞いて良いかも分からないといった状態では、お互いに培ってきた知識や経験の共有ができず、会社にとってもデメリットとなる。まずは自分の周りから、お互いを知らないなら知り合う場を作ればいいのではないかと考え、個人創業として『ちゑや』を創めたのが2006年の4月でした」と、中村さんは当時を振り返ります。
「お昼を一緒に食べよう」「お茶をしよう」といろいろな部署の人たちに声を掛け、1時間程度食事をしながら、ざっくばらんに話せる場を作ることからの始まりでした。当初は有志の集まりであった「ちゑや」の活動は、人材育成の場として、また、社内ナレッジの観点からも経営側に認められるようになり、2008年4月には事業戦略支援ユニットの一部門として組織化されました。
「ちゑや」の名称については、「活動を始めた当初、非公式の場であることのこだわりとして屋号っぽい名前にしたかったので、広告制作のディレクターをやっている知人に相談しながら、人の集まる場所、知恵の集まる場所を想定し、ゴロも良かったので『ちゑや』に決めました」と中村さんは説明しています。この創業当事からの風通しの良さやなじみやすさを大切にしたいという思いから、屋号「ちゑや」をそのままユニット名にして、部署が新設されたということです。現在、従業員同士をつないでいく組織として位置づけられた「ちゑや」部門の中村さん、中嶋さんのお2人には、「店主兼つなぎビルダー」、「女将」という肩書きが、組織図にも名刺にも大真面目に記されています。
現在の「ちゑや」の具体的な活動内容には、次のようなものがあります。
ようこそ先輩: ランチタイムを利用して、1回に7〜8人程度が集まり、部長、課長クラスの先輩たちから「ダメダメだった若手時代の話」を中心に、仕事のノウハウなどを聞く。
海老原塾&無手勝塾: 人気漫画「エンゼルバンク」に、カリスマ転職エージェントとして登場する「海老沢」のモデルとなった海老原嗣生氏をスピーカーとして招き、体験型「学びの場」を設けて、ケーススタディごとにテクニックを学ぶ。これまで東京、名古屋、京都、大阪などを含め20回以上開催し、その都度40〜100名近くが参加している。
スペシャルライブ: 社員に広い視野を持ってもらうことを目的に、ザ・リッツ・カールトンの日本支社長や元F1の総監督など、社外から著名人を講師として招き、その分野におけるエッセンスやノウハウを伝授してもらう。
よろず茶屋: 同じ趣味や興味を持つ社員が集まる場。普段知り合う機会のない社内の人材をつなぐために不定期で開催される従業員懇親会「夜会」や、15人程度が集まって行われる「ココロとカラダの元気術(ヨガの呼吸法を用い自分を取り戻す時間)」などがある。
社内オンライン上に「ちゑや」のホームページとブログを開設し、イベント告知や開催後の様子を伝える。
DVDレンタルで、参加できなかった社員のためにライブ活動の様子を視聴可能にしている。
「ちゑや」ライブイベントの様子社内での懇親会やヨガレッスンなど、趣味の集まりを具体例として挙げましたが、コミュニケーションの活性化のために同様の試みを行っている企業は決して珍しくはありません。では、「ちゑや」の試みは、どのような点が特徴的なのでしょうか。
「例えば『ようこそ先輩』は、先輩の表面的な功績ではなく人間的な魅力を伝えたいという思いがあって始めたことです。勉強会と称して成功例ばかりを聞くのでは正しすぎて面白くありません。失敗談やカミングアウト的な話を聞くことで、安心感や頑張ろうという気持ちになるのではないか、と考えました」と中村さんは話します。
「心掛けているのは、楽しくて怪しいイベントです(笑)。新入社員から経営人までの間に階層ができてしまい、その距離が遠くなればなるほど会話の機会が減ってしまう。会話の場となるための『ちゑや』ですから、聞きたいことを聞きやすくする場となることが大切です」
企画を作る時には、想定した参加者のゴールを設定した上で、「この人とこの人をつなげるといいのではないか?」と考えながら、また、「こういう会を考えているけれど、興味ある人は一緒にやらないか?」などと声掛けしながらセッティングするという中村さん。ただ単に楽しいことや面白いことをすることが目的なのではなく、現場の従業員が困っていることを解決するために何ができるのかを考え、その企画に楽しく参加してもらえる場作りが「ちゑや」のミッションであり存在意義なのです。店主と女将という役どころは、企業の組織の枠を超えて社員をつなぐための業務=商いをせっせと試みるお2人のイメージにぴったりと言えます。
「ちゑや」会場受付話が進むにつれて、イベントごとのネーミングにも込められた思いが伝わってきました。
「勉強会」や「セミナー」ではなく、「スペシャルライブ」と名付けていることについては、「講師と受講生ではなく、参加者になってもらう。そこで楽しんだことを、次のアクションのためのエネルギーに変え、すぐに実行してもらいたい。そんな意識でイベントを企画しています。求められているモノは一体感とスピードで、まさにライブコンサートをイメージしています。そして、参加者の皆が一緒になって、つながるように作るのがコンセプトです」と中村さん。「無手勝塾」は「難しい流儀を廃して」という意図からと命名し、「夜会」は、強制的な社内懇親会ではなく、「ゆるい場で集うことを目的としながら、怪しさや楽しさも漂わせる」といった意味合いが込められているそうです。
企画に関しては「社内でのコミュニケーションを円滑に図る上で、あるいは業務を遂行していく中で、自分自身が必要だな、やってみたら面白そうだなと思うことを洗い出し、現場の社員に課題や問題をヒアリングして企画を考えます。例えば「ココロとカラダの元気術」場合は、『日常の忙しい中で、ちょっと立ち止まって考える時間を作りましょう。時には心も身体を調和させてあげましょう』というコンセプトで始めました」と中嶋さんは説明しています。
非公式な形でのみ運営されていた活動を、組織力強化のための新しい手法として組織化してしまった同社経営陣の視野の広さにも学ぶところは大きいのではないでしょうか。「店主兼つなぎビルダー」、「女将」という肩書きを公式として認めていることは、経営陣、従業員からの「ちゑや」に対する信頼の証と言えるでしょう。今回の取材を通じて、非公式でも居心地の良い環境を自分達で作ってしまう社員のバイタリティと、それを認める会社としての視野の広さと、懐の深さを感じました。
最後に中村さんは「ちゑや」のこれからについての思いを「何だか分からないけど楽しいし、元気になれる。そして現場に戻ったら自力で走れる。そんな場を、これからも考えながら仲間と一緒に作っていきたい。そして、今後はもっと(「ちゑや」発ではなく)社内の現場から自然発生的な試みが持ち上がって来ればいいなと思っています」と語っていました。
それでは、今回はこの辺で! あなたの会社のユニークな制度についての情報も、ぜひお寄せくださいね。
| 「あったらいいな」を実現する企業:ファイル9 | |
|---|---|
| 社名 | リクルートエージェント |
| 事業内容 | 転職エージェント |
| 設立 | 1977年11月 |
| 従業員数 | 1800名(2009年4月) |
| 資本金 | 6億4335万円 |
| 本社 | 東京 |
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