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エンタープライズソーシャルコンピューティングの導入に立ちはだかる10個の問題 |
ZDNetの編集長であるLarry Dignanは7月下旬の記事(英文)で、企業におけるソーシャルメディアへの取り組みとその業績との興味深い関係に関する最近のレポートを分析している。このレポートは、Altimeter GroupのCharlene Li氏とWetpaintによるものであり、その主なポイントは以下の通りである。
具体的に言えば、ソーシャルメディアに対して幅広く、かつ深く取り組んでいる企業は、売上と収益性のいずれにおいても同業他社を大幅に上回る成果を上げている。
このレポート(その詳細と、PDFファイルでのレポート提供についてはこのページを参照のこと)は、ソーシャルソフトウェアを自社のさまざまな部門に適用すべく取り組もうとしている企業にとって励みとなるだろう。しかし、Larryが指摘しているように、こういった数値はさまざまに解釈することができるのである。このため、ソーシャルメディアというものに対する投資収益率(ROI)が本当に算出できるのかという疑問を投げかけられることは減ってきているものの、今日における一般的な企業がソーシャルメディアに取り組んだ場合、根本的な業績向上に結びつけることができるのかという疑問はまだ残されている。
こういったことは、2009年6月に開催された「Enterprise 2.0」カンファレンスのあちこちで話題に上っていた次のような疑問を際立たせるものとなっている:ソーシャルコンピューティングは本当に企業業績の大幅な向上をもたらすのか?あるいは、軽微な改善を付加的にもたらすだけなのか?という疑問である。
有望な事例研究や証拠、調査が積み重なってきているとはいうものの、ソーシャルコンピューティングがビジネスにもたらす完全な影響というものについては、残念なことに現在のところまだ結論が出ていないのである。また、ソーシャルコンピューティングへの投資に対するリターンは企業によって大きく異なるはずであり、その理由については以下で考察している。現時点では、ソーシャルコンピューティング(ソーシャルネットワークやエンタープライズ2.0から、クラウドソーシングやソーシャルCRMに至るまで、企業によって採用されるあらゆる種類のソーシャルソフトウェアを含んでいる)を採用している企業の数が少ないため、同じ分野の企業同士を比較することでソーシャルコンピューティングの功罪を把握することができない状態なのである。また、ソーシャルコンピューティングを採用している企業であっても、実際に効果を把握できるほど長期間にわたって使い込んではいないのである。
とは言うものの、企業が試験的な導入や、イニシアチブの発揮を始めるようになったことで、ソーシャルツールによってもたらされる文化的な影響や、IT部門やビジネスへの影響がより明確になってきている。そしてそれに伴い、一連の問題も浮き彫りにされつつあるのである。
補足:ソーシャルコンピューティングとは何なのだろうか?これは企業内における、あるいは他の企業や従業員、顧客、ビジネスパートナーといった利害関係者との間においてソーシャルソフトウェアを利用することである。以前の記事(英文)で説明しているように、ソーシャルコンピューティングは生産能力やイノベーションに大規模な変革をもたらす魁となる可能性がある。企業はいずれも、エンタープライズソーシャルコンピューティング用のツールを各社少しずつ違ったかたちで採用していくことになるはずである(関連英文記事)。そしてたいていの場合にはとりあえず使ってみることから始めて(手始めとして、広く利用可能なコンシューマーツールを採用するということが多いはずだ)、より進化したオープンビジネスモデルを採用するようになるだろう(関連英文記事)。なお、2009年時点で、大企業の約半数が何らかのかたちでソーシャルコンピューティングツールを導入している。
以下に挙げている問題は、筆者のクライアントや業界内の知人を始めとする、この分野に詳しい人たちからの話を総合してまとめたものである。
ソーシャルコンピューティングにまつわる以下の10個の問題は、筆者が最もよく耳にするものである一方、読者の方々の感じ方はそれぞれ異なっているはずである。とは言うものの、筆者はこれらの問題が2009年における現状を反映したものになっていると確信している。なお、こういった問題は乗り越えられない障壁などでは決してなく、アーリアドプターたちがソーシャルコンピューティングの採用曲線(上の図を参照のこと)を登り始める際に直面しそうな代表例を描写しているにすぎないという点に留意してほしい。
1.ソーシャルメディアを使いこなせる従業員が少ない。事例を参考にして述べるならば、テクノロジ業界から遠い分野の企業ほど、現場の従業員が最新のソフトウェアイノベーションに詳しいという確率は低くなる。ブログの運営や、Wikiサイトの更新、ソーシャルネットワークの利用、社会との情報共有といったことを行っていない従業員は、そういったことを行っている従業員よりも手厚い教育が必要となるはずである。彼らは、データ間の関連の蓄積や、情報のタグ付け、ネットワーク越しの「弱い絆」の確立といった、ソーシャルコンピューティングプラットフォームを最大限に活用するうえで重要となるテクニックだけではなく、ネチケットの基本でさえも、よく理解していないことが多いのである。そして、ソーシャルコンピューティングツールを普段から利用しているユーザーの中にも、こういったことを理解していない人々がいるのだ。要するにほとんどの企業では、ソーシャルコンピューティングを効果的に活用するうえで、何らかの教育が必要となるのである。こういった状況はちょうど、従業員にPCスキルを教える必要があった数十年前とよく似ていると言えるだろう。
2.ソーシャルツールがうまく機能しない業界もあるという認識がある。ソーシャルツールは特定の業界にうまく適合しない、すなわちビジネスプロセス自体が特殊なせいでソーシャルビジネスモデルはある意味において不適切、もしくは役に立たないという認識が、薬品業界や製造業界を始めとする(例として無作為に挙げただけである)さまざまな専門業界に存在している。エンタープライズWeb 2.0の普及(関連英文記事)は、業界によってその進み具合に差があった(アーリーアドプターとして先陣を切った企業はメディア業界や金融サービス業界に多かった)ものの、すべての業界とは言わないまでもほとんどの業界においてソーシャルコンピューティングツールに利用価値があるという事例証拠が集まってきている。ただ、他社との競争がそれほど激しくなかったり、特殊性が高かったり、テクノロジの採用にあまり積極的ではない企業では、ソーシャルソフトウェアが日常生活の場に浸透してから5年以上経過しているにもかかわらず、そういったツールに対して抵抗する文化(こういった抵抗は、変革というもの一般に対してよく見受けられるものであり、エンタープライズソーシャルツールに対してのみというわけではない)が未だに根強く残っているという例をよく見かけるのである。
3.ソーシャルソフトウェアを事業の中核アクティビティに利用するにはリスクが大きすぎるという認識が未だにある。筆者と話をした多くの人々の間でも、ソーシャルコンピューティングアプリケーションはむしろ、企業のミッションクリティカルな業務に直接携わっていない知識労働者向けのもの、あるいはマーケティングや広告といったより独立した業務で利用するものであるという認識が未だに一般的である。ソーシャルコンピューティングは基幹業務、すなわち企業の屋台骨を支える業務には向いていないと捉えられているのである。こういった認識が生まれる原因として、不確実性や統制不能な状況の発生に対する懸念に始まり、企業損益を含む事業の状況に直接的かつ即時に影響を及ぼすようなマイナス要因を企業活動にもたらしかねないという憂慮まで、さまざまなものが考えられる。しかし興味深いことに、事例研究に基づく筆者の分析や実際に導入した人たちとの議論では、ソーシャルツールを配備することで最も大きな影響がもたらされるのはまさにこういった領域だという結論に達したのである。具体的には、意思決定の質が向上したり、重要なデータ(あるいは必要な情報を握っている専門家)の検索/アクセスが可能になるわけである。実際のところ、筆者はソーシャルツールによって職場に大きな混乱がもたらされたという事例を見つけることができなかった。また、ほとんどすべてのレポートは肯定的なものであり、その中には基幹業務にソーシャルツールを実際に組み込んでいるケースについて言及したものも含まれている。とは言うものの、こういった懸念は、それを払拭する調査結果や社内での運用結果が数多く出揃うまで、今後もしばらくは残り続けるだろう。
4.上級幹部にソーシャルツールを使ってもらえない。筆者は以前から、大企業におけるほとんどの上級幹部のITシステム利用が、Microsoft OutlookであれBlackBerryであれ、あるいは業績情報画面であろうと閲覧のみに終わることが多いと述べてきている。企業におけるソーシャルツールの採用は、その企業の上層部が率先して利用する場合に大きな効果を発揮するということが初期のエンタープライズ2.0に関する事例研究からも確認されているものの、上層部の人々はそういったものの利用に割ける時間が最も少なく、実践的な利用経験もほとんどないことが多いのである。(備考:エンタープライズ2.0は、エンタープライズソーシャルコンピューティングのごく一部でしかないものの、非常に重要な地位を占めている。)上級幹部が、公私を含むほとんどのソーシャルコンピューティングへの取り組みに参加していないという話を近頃しばしば耳にするようになってきている。ソーシャルコンピューティングには、組織内およびネットワーク間に存在する「思考の余剰」(cognitive surplus)を利用するという意味合いが強くあるため、長期的な観点から見た場合、上述したことがソーシャルコンピューティングの成否に重大な影響を与えるかどうかについて、筆者は自分の意見を決めかねている。とは言うものの、短期的な観点から見た場合には、社内における採用の効果を失速させる原因となるため、重要なファクターであることに間違いはないだろう。
5.IT部門と、ソーシャルコンピューティングのイニシアチブをとる業務部門との息が合っていない。IT部門と業務部門の間に存在する悪名高い溝のせいで、ソーシャルコンピューティングのイニシアチブが何カ月も、場合によっては1年以上も進展しなくなることがしばしばある。IT部門はその間も、ソーシャルコンピューティングにおける最新のベストプラクティスを提示し続けながら、社内のソフトウェアやアーキテクチャ、セキュリティ、ガバナンス基準が求める要件を満たすようなソーシャルコンピューティングアプリケーションを見つけ出そうと(そして場合によっては開発しようと)するわけである。また、優れたソーシャルコンピューティングアプリケーションの多くが、新興の小規模企業によって開発されており、エンタープライズにおいて従来から提示されている要件をあまり重視していないということも、こういった問題に拍車をかけている。またIT企業も、ソーシャルコンピューティングのビジネスにおける側面をあまり理解できておらず、手元にある既存のソリューションを用いてビジネスニーズを解決しようとする傾向にある。こういったこと自体はバッドプラクティスであるとは限らないものの、感情的な問題に発展し、解決されるまで取り組みが進展しなくなることもしばしばあるのである。このことは、SharePointとエンタープライズ2.0の有名な一件を見ても明らかであるはずだ(関連英文記事)。
6.ソーシャルソフトウェアに対するサポートを取り付けるには、ROIを明示する必要がある。こういったことは、エンタープライズにおける一般的なソフトウェア買収(特にエンタープライズ2.0)で見られる典型的なアンチパターンである。ソーシャルコンピューティング固有の特異性というものも確かに存在しているとはいえ、成功事例が増加している現状において、ROIが明確ではないという反対意見は力を失いつつある。
7.セキュリティに対する懸念のせいで、パイロットプロジェクトや採用計画が滞る。ソーシャルツールによって、通常であれば社外に公開されないようなこと(企業ポリシーや手順、重要な手法、企業データ、知的財産など)も一般の目に付きやすくなるため、多くの企業はこういった重要な問題に対処するためのベストプラクティスが確立されるまで、ソーシャルコンピューティングの本格導入を見送ろうと考えている。ソーシャルコンピューティングツールにおけるセキュリティとガバナンスのいずれにも対処するツールが好意的に受け入れられる例が、このところ驚くほどに増えている。こういったツールについては、今後の記事で取り上げていくつもりである。
8.コミュニティマネジメントにまつわるニーズの発生が驚きをもって受け止められる。ソーシャルツールによって、理解を共有し、一体感を持つだけではなく、コミュニティ自身に内包される方向性に従った顧客コミュニティが生み出されるようになる。こういったコミュニティはいずれ一人歩きを始めることになるだろう(そしてそうあるべきだ)が、適切なマネジメント(支援やサポート、指導、介入、管理、計画)を行わなければ、あなたの関与できないところで進んでいくことになるはずである。コミュニティマネジメントとは、コミュニティ自身の要求を満たしつつも、彼らを企業やその目標/ニーズにつなぎとめておく能力のことである。エンタープライズソーシャルコンピューティングのあらゆる観点から見たニーズに対応できる人材マネジメントスキルや、チームの規模、技術、コミュニティマネジメントのためのツールといったテーマは、業界としてまだまだ学習する必要があることなのである。なお、筆者としては、多くの企業でソーシャルコンピューティングが成熟しつつある現状を踏まえ、2009年中にこの話題について取り上げようと考えている。
9.持続的に社外のマネジメントを行うことの難しさがある。2008年の記事「オンライン顧客コミュニティのための12のベストプラクティス」で述べたように、多くの企業が独自のソーシャルコンピューティングイニシアチブを推し進めながらも幅広い顧客層を巻き込むことに難渋している。彼らがコミュニティを構築しても、彼らのターゲットである顧客層は自分たちが構築したコミュニティの方を好むという結果に終わることもしばしばあるのである。特に、企業の構築したコミュニティのアプローチに疑念を抱いたり、自分たちのニーズに対応しきれていない(特定のジャンル全般を扱ったり、ニッチなものを対象とすることなく、特定企業の1つの製品に焦点を当てているなど)と感じた場合にその傾向が強くなる。活気のあるソーシャルコンピューティング環境の構築は未だ科学に負けないほど芸術の比重が高く、顧客の関心を引きつけることは従来からある高価なマーケティング手法やPRチャネルを通じていつでも可能である。とは言うものの、ソーシャルビジネスにとっての新たな法則を学ぶということは本当の意味で役に立つはずなのである(関連英文記事)。
10.予想以上の成功を収めたことにより、継続が困難になる。エンタープライズソーシャルコンピューティングが早い段階で大きく、かつ予想以上の成功を収めたという話を最近よく耳にするようになってきている。しかし、こういった成功によって、企業内から大きな注目が集まるようになり、その後社内での勢力争いや、主導権の奪い合い、競合する取り組みとの対立が起こるなかで、急速に成長する野心的な事業の資金確保に苦労するようになったという話も聞こえてきている。多くの企業にとって、ソーシャルコンピューティングというものは事業を進めるうえで、まったく馴染みのない方法であるため、新たな取り組みが急速な成長を遂げた場合、きっちりした管理や、計画の立案、期待レベルの設定を行わない限り、災いの元凶となりかねないのである。社内で味方になってくれ、周囲からの尊敬も得られている後援者の強力なネットワークを作り上げることが、この問題に対処するうえで特に有効となるはずである。
2009年に入り、数多くの企業がより高度なソーシャルコンピューティングを模索するようになってきている。このため、本記事で挙げている問題は氷山の一角に過ぎないはずである。筆者は本記事の一環として、そしてソーシャルコンピューティングコミュニティ全体がどういった問題に直面しているかを知るために、エンタープライズソーシャルコンピューティングの世界で起こっていることをより完全なかたちで把握したいと考えている。そこで読者の方々にお願いがある。これら以外にも問題があるという場合、コメント欄を通じてそれを教えてほしい。教えていただいた問題については、今後の記事でまとめる予定である。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ
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