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クラウドコンピューティングにおける「商品化」と「コモディティ化」 |
筆者のお気に入りのブロガーの1人Simon Wardley氏(古くからのクラウド専門家でもある)は、以前執筆した短編記事で、クラウドコンピューティングの価値を理解するに当たって鍵となる2つの言葉の意味を明確に示した。
この2つの言葉の意味の違いを初めて明らかにしたのはDouglas Rushkoff氏だったが、ここではその違いをもう一度確認しておこうと思う。
商品化(commodification:1970年代中期〜後期、一般語)は、経済的な価値を持たなかった物が価値を持つようになり、それ故に市場価値がほかの社会的価値に取って代わるようになるプロセスを表すのに用いられる。これまで商売と無縁だった関係が商業的な関係に変容することを表す。
コモディティ化(commoditization:1990年代前期〜中期、新造語)とは、経済的な価値を持ち、属性(独自性やブランド)という点で差別化を実現していた商品が、最終的に市場や消費者の目から見てありふれた商品(コモディティ)になるプロセスのことを指す。市場が差別化による価格競争から差別化のない価格競争へ移行すること。また、独占的競争から完全競争へと移行すること。
提供:Wikimedia Commons
Wardley氏の記事全文を参照して、この2つの言葉がそれぞれどのように使用されているかを明確にすることをお勧めする。ここでは、これら2つの概念を確認するために、その定義を紹介した。というのも、コモディティ化と商品化がクラウドコンピューティングにどう適用されるかについて、いくつか興味深い議論がなされているからだ。
まず、一方の見解を紹介しよう。一般的なネットワークベースのソフトウェアすべてに当てはまるわけではないにせよ、少なくとも法人向けソフトウェアに関して、クラウドコンピューティングはインフラストラクチャの差別化の終焉を意味している、と考える人々がいる。その理論は以下のように展開される。
クラウドコンピューティングが、可能な限り広範囲の市場に向けて、中核的な機能(基本的なサーバ機能、さらにはJavaアプリケーションの実行まで)を提供するようになる。
その市場で、クラウド製品間で可能な限り容易に移植でき、可能な限り安価に実行できるアプリケーションが構築されるようになる。
そうなれば、インフラストラクチャは共通のアーキテクチャと運用標準に集約され、そうした中核機能に関しての差別化が排除される。
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筆者はこのような見解を「底辺への競争」理論と呼ぶ。
これと比較してほしいのが、クラウドにおけるコモディティ化はもっと細かいレベルで起こる、という見解だ。詳しく説明すると、テクノロジによってさまざまな構成要素や機能が標準化されるが、サービス自体を差別化することは可能であり、それは多くの場合、基本機能の上に大きな付加価値を付ける形になる、ということだ。
この理論は以下のように展開される。
アプリケーションの分野で、コンピューティング環境の一部の要素が、明確なインターフェースを持つコモディティになることが求められる。
クラウド市場全体で、基本的なコンピューティング機能に対する付加価値となる革新的なサービスが求められる。
そうなれば、クラウドサービスはインフラストラクチャ、メタストラクチャ、インフォストラクチャのさまざまな要素で構築されるようになる。サービスプロバイダーやエンドユーザーはこれらの構成要素を再結合して、さまざまな需要に対処することができる。
こちらの見解は、「底辺への押し込み」とでも言うべきアプローチだ。つまり、最も革新的なサービスは時間の経過とともに商品化され、やがてコモディティ化されるが、一方で、その基盤の上に新しい機能が開発され続けるということだ。筆者はこちらのコンセプトの方にはるかに大きな共感を覚えるが、そういう筆者の見方を偏っていると評する人もいるかもしれない。なぜなら、筆者は大手システムベンダーで働いているからだ。
しかし、それよりもはるかに重要なことに、サービスプロバイダーも後者の見解に大きな共感を覚えている。例えば、Amazon Web Services(AWS)について考えてみてほしい。Amazonは、「Elastic Compute Cloud(EC2)」(コンピューティングがコモディティ化へと向かう動きと言ってほぼ間違いないだろう)や「Elastic Block Storage(EBS)」、そして「Simple Storage Service(S3)」(コンピューティングストレージボリュームを商品化する2つの手段)に加えて、開発者や彼らが開発したサービスを使用する事業者を支援するために、さまざまな付加価値サービスも提供している。「CloudFront」「DevPay」「Simple Queue Service」などがそうだ。
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現在Amazon環境で作業し、これらのサービスを直接利用している開発者は、比較的移植性が高い「準コモディティ」サービスと、(少なくとも実装に関して)真にAmazon固有のサービスを組み合わせて使用していることに気づくかもしれない。
2つめの理論では、クラウドプロバイダーはサービスだけでなく機能も革新することが可能で、そのような革新的な機能を高めの料金で提供できる可能性もある。市場がその革新に価値を見いだせば製品は売れる。価値を認められなければ無視される。市場に受け入れられない場合、サービスプロバイダーはその機能の価格を下げるか、あるいはその機能自体を廃止するかの選択を迫られる。
とはいえ、この2つの理論は共存できないというわけではない。例えば、クラウドサービスブローカーの参入により、他社の純粋なコモディティサービスを利用して付加価値サービスを提供するプロバイダーが出てくるかもしれない。また、「最小公倍数的」なコモディティインフラストラクチャサービスの周辺で、処理能力当たりのコストやストレージ容量当たりのコストを大幅に節約するためのサービス設計を行う開発者の市場が生まれる可能性もある。
ここで重要なのは、市場がその決定を下すということだ。しかし、市場の大部分がまだ評価を下していないトレードオフも存在する。今の時点でいずれかの結果を全面的に支持してしまうことは、極めて接戦の選挙において、まだ5%の票の集計しか終わっていない段階で当選者を確定するようなものだ。
クラウドコンピューティングがITのコモディティ化(そして、おそらく商品化)にどのような影響を及ぼすのかについて、読者の皆さんの考えを知りたいと思う。もちろん、「クラウドコンピューティングは失敗する」という可能性もある。ただし、そういう見解の人は、クラウドが失敗する理由、そして、コモディティ化や商品化がその失敗に及ぼす影響についての考えを教えてほしい。皆さんの考えを聞くのを楽しみにしている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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