![]() |
クラウドコンピューティングと地政学的境界--「2つの現実」がもたらす運用面の課題 |
クラウドコンピューティングは運用モデルであって、テクノロジではない。クラウドコンピューティングモデルが分散型アプリケーションに数多くの課題をもたらし、同時に分散型アプリケーションよりも多くの点で優れているのは、この決定的事実のためだ。
提供:cc Doug/Picasa
また、既存のアプリケーションアーキテクチャコンセプトの多くがクラウドで機能するのもそのためであり、多くの開発者が、従来型ITの自己完結型環境では軽視したり、無視したりできるようなアーキテクチャの側面に対応することを余儀なくされるのもそのためだ。
クラウドがアーキテクチャの変化を強要する機能の中で、最も興味深い面の1つは、アプリケーションを取り巻く2つの頻繁に衝突しあう「現実」の相違点を、開発者が認識せざるを得なくなるということだ。2つの現実とは、われわれ人間が日々生きている物理世界の現実と、電子機器や電線、独自の規則で構成され、ソフトウェアという形式の中に封じ込められたコンピューティングの世界の現実である。
この2つの「世界」はよく似ている点もあるが、異なる点も多い。以下に例を挙げる。
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏と日立のキーパーソンが語る!
2010年企業クラウド元年 ビジネスニーズが企業のクラウド化を加速する
「現実世界」とインターネットの衝突は新しいことではないし、クラウドコンピューティングに限ったことでもない。これらの問題は、あらゆるグローバルな分散型コンピューティングパラダイムの中に存在している。
例えば、インターネットの黎明期、運動家の多くは、少なくとも言論の自由と政治組織という点に関して、インターネットを地政学的な境界線と政府の力に打ち勝つための手段だと見なしていた。それ以来、政府がそうした機能に対抗しようとしたり、物理的な境界線というものを本質的に認識しないメディア上でさえも、自らの物理的境界線の内側の人々や組織に対する統制を強化しようとしたりする事例を、われわれは幾度となく目の当たりにしてきた。
この問題は、クラウドコンピューティングの利点を活用しようとしている開発者やアプリケーション所有者にとって、特に深刻なものだ。よく知られている例としてプライバシー法がある。データセンターの場所は重要でないと見なされているにもかかわらず、政府が明示的に禁止された方法で「現実世界」の境界線を越えてデータを移動させた企業を起訴しようとする世界で、開発者はどうすればアプリケーションを運用できるというのだろうか。
(Forrester Researchは非常に興味深い地図を公開している。これは、世界の多くの地域に関して、プライバシー法の厳しさの度合いを色別に示したものだ。グローバルなクラウドコンピューティングサービスのユーザーが直面している実態を顕著に表した例だ。筆者も数年前に執筆した記事の中で、コードが自らのアルゴリズムを実行する過程で、法律の不一致を積極的に利用しようとする世界を描いている)
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏と日立のキーパーソンが語る!
2010年企業クラウド元年 ビジネスニーズが企業のクラウド化を加速する
アプリケーション運用者は、データが危険にさらされる国を通過しないようにしながら、ネットワーク的な意味でユーザーから「最短距離」の地点にアプリケーションを配置したい場合、どうすればいいのだろうか。もう一度言うが、データが2つの物理的地点を移動する際に選択する経路は、運用者が予期していた経路とは異なる可能性がある。
政府や企業がインターネットと「クラウド」を人間の地政学的な現実に当てはめようとする事例は、既にいくつかみられる。中国やイラン、パキスタンといった国々は、インターネットの「窓」を自国の国境線上でコントロールし、そうした検問所で、テクノロジを応用して「ボーダートラフィック」をコントロールすることに積極的な姿勢を見せている。
クラウドプロバイダーは、地政学的な現実に沿うように、サービスの提供範囲を明確に示している。Amazon.comの「Elastic Compute Cloud(EC2)」の対応地域がその格好の例だ。
しかし、インターネットとインタークラウド自体の内部に、人間世界をコンピュータ世界に「自動的」にマッピングする正式なインフラストラクチャが欠落している。そもそも、そんなことは可能なのだろうかと筆者はよく不思議に思う。コンピュータネットワークとアプリケーションが自己規制できるように、世界の法律や規制をデジタル形式に「コード化」することなどできるのだろうか(もっと端的に言えば、それに取り組むべきなのだろうか)。
仮にそのようなシステムが実現した場合、政治にどのような影響を及ぼすだろうか。
クラウドコンピューティングでは、「仮想的」な地理と「現実的」な地理の両方が極めて重要だ。そして、この2つをうまく連携させることは人間の役目である。これは複雑で、間違いも起こりやすい作業だ。それ故に、クラウドコンピューティングがITプラクティスを破壊している現状から発生する、素晴らしいビジネスチャンスの1つになるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏と日立のキーパーソンが語る!
2010年企業クラウド元年 ビジネスニーズが企業のクラウド化を加速する
ZDNET Japanは、Ziff Davisからのライセンスに基づき株式会社4Xが運営しています。
ZDNET Japan is operated by 4X Corp under license from Ziff Davis.
Copyright © 2026 4X Corp, Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.