掲載日時: 2010-07-14 07:00

クラウドコンピューティングとオープンソースの関係--IT運用における役割の変化

クラウドコンピューティングとオープンソースソフトウェアは、クラウドの登場以来密接な関係にある。現在のクラウドはオープンソースに依存している部分が大きいと言えるが、いずれクラウドがオープンソースの未来を大きく左右することになる。

著者 : 文:James Urquhart(Special to CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル

URL : https://japan.zdnet.com/article/20416305/

 クラウドコンピューティングとオープンソースソフトウェアは、クラウドの黎明期から密接な関係にある。Amazon.comやSugarCRM、Rackspaceなど、数多くのベンダーが、仮想化からデータストア、ユーザーインターフェースまで、あらゆることに関してオープンソースの選択肢を活用してきた。

right 提供:Geograph/Ray Jones

 現在クラウドが成立しているのは、オープンソースソフトウェアの経済性と柔軟性によるところが大きいと言ってもいいだろう。しかし、オープンソースソフトウェアはクラウドコミュニティーで広く採用されているにもかかわらず、オープンソースソフトウェアの将来はクラウド運用モデル自体によって大きく左右されることになる。

 LAMPスタックの将来に関する最近の興味深い議論について考えてみよう。LAMPは、Linux、Apache Web Server(またはTomcat)、MySQL(またはほかのオープンソースデータベースエンジン)、そしてPerl、Python、PHPといったスクリプティング言語で構成されるスタックであり、ウェブアプリケーションの世界では極めて重要な役割を果たしている。しかし、筆者が先ごろ指摘したように、LAMPはクラウドではそれほど重要でない可能性がある。

 オープンソースがクラウドコンピューティングから大きな影響を受けるとき、その中心的な要因となるのは、IT運用の分野における役割の変化だ。クラウドによって、運用チームの注力すべき対象がサーバからアプリケーションへ移るということを、筆者は従来より指摘している。これは、アプリケーションが依存するインフラストラクチャコンポーネントと、アプリケーション自体の運用を、別々のチームが担当するようになったことを意味している。

 ITインフラストラクチャの定義は、この15年間ほどで大きく変わった。今やITインフラストラクチャという用語は、ハードウェアだけでなくソフトウェアも含むことが多くなっている。クライアント/サーバ型の世界では、OSは長い間インフラストラクチャと見なされてきた。J2EEアプリケーションサーバやリレーショナルデータベース管理システムなど、ミドルウェアやデータベースも、主に共通インフラストラクチャとして扱われている。

picture2 提供:James Urquhart

 実際に企業のIT組織でよく見られる慣習は、重要なソフトウェアインフラストラクチャスタックの標準ビルドを作成して、共通の運用フレームワークを作り出し、アプリケーションコードを(少なくとも理論上は)唯一のバリアントにするというものだ。

 これらのインフラストラクチャコンポーネントの多くはオープンソースの選択肢へシフトするにつれて、アプリケーション開発者から大きな注目を集めるようになった。この理由には2つの側面がある。1つめは、これらのプロジェクトが無料でダウンロード提供されていたということだ。開発者は一般的に、無料で公開されているツールやインフラストラクチャを好むものだ。2つめは、開発者がやろうと思えば、ソフトウェアインフラストラクチャスタック全体に自由に手を加えることができたということだ。ただ、実際に全体に手を加える開発者はほとんどいなかった。

 重要なのは、開発者がインフラストラクチャコードに手を加えたいと思った場合、以下の2つの理由からそれが可能だったということだ。

  1. ソフトウェアの構築に必要なソースコードと説明が無料で手に入り、開発者自身のシステムで手を加えるために使用できた。

  2. その後、開発者はそのシステム上でソフトウェアの構築と導入を行い、テストした後で、あらゆる変更点を利用することができた。

 クラウドコンピューティングが異なるのは、インフラストラクチャソフトウェアの導入がクラウドサービスプロバイダーの厳格な統制の下で行われることだ。例えば、筆者が「Google App Engine」のユーザーなら、同社の管理システムのソースコードにアクセスして、何かを自分に都合のいいように変更し、それをもっと広範囲のGoogleサービス環境に適用する、といったことはできない。

 もちろん、それでいいと思う。「App Engine」の仕組みを変えたいというユーザーすべてに対して、その環境のほかの全ユーザーに影響を及ぼす行為を認めるのは馬鹿げている。起こり得るセキュリティ関連の問題を考えるだけでも、そんなことは到底実現不可能だ。それによって生じるであろう運用上の問題を考えれば、なおさら無理な話だ。

 つまり、パブリッククラウドにおけるオープンソースインフラストラクチャプロジェクトのユーザーは、クラウドプロバイダーしかいなということだ。クラウドプロバイダーは自らを責任あるオープンソースユーザーと見なして、恩返しをするかもしれないし、しないかもしれない。いずれにせよ、平均的なアプリケーション開発者がインフラストラクチャのコードを徹底的に研究する動機は、なくなったとは言わないまでも、かなり弱くなっている。

 明るい材料もある。Rackspace、Terremark、Amazonといった「IaaS」企業は、ソフトウェアインフラストラクチャのかなり多くの部分(OSやミドルウェアなど)を顧客に任せているため、大半のプロジェクトにこの影響が現れるのは、まだかなり先の話だということだ。実際のところ、短期的には、急速に関心を集める可能性もある。

 しかし、「PaaS」の提供が拡大し、法人開発者が抵抗の最も少ない道を選ぶことが多くなれば、ほとんどのクラウドインフラストラクチャが、クラウドサービスを支えるプロの運用チームだけでサポートされるようになるのも、時間の問題かもしれない。

 筆者は、最終的に2つのシナリオのうち、いずれか1つが現実になると考えている。1つは、オープンソースのインフラストラクチャプロジェクトをエンドユーザー側からはっきりと目に見えるものし、さらに大きなコミュニティーによる革新を促す方法を、クラウドコミュニティーが見つけるというシナリオだ。もう1つは、そうしたプロジェクトの大半を、(競合企業として)差別化の機会を模索するクラウドプロバイダーだけがサポートするようになる、というシナリオである。後者が現実になった場合は、そのような企業にとってのオープンソースの利点が実際に消失し、オープンソースプロジェクトのさらなる分化、あるいは放棄さえも起きるかもしれない。

 今後、これらすべてがどう展開していくのかは分からないが、共通のオープンソースのインフラストラクチャプロジェクトに積極的に寄与する企業の数は少なくなっており、それらの企業間の競争が激化する可能性に、筆者は期待している。今後、オープンソースが苦しむことになるのだろうか。それとも、クラウドサービスを利用するアプリケーション開発者が今後もオープンソースインフラストラクチャへアクセスできるようになる革新的な方法を、開発者コミュニティーが見つけるのだろうか。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japanは、Ziff Davisからのライセンスに基づき株式会社4Xが運営しています。
ZDNET Japan is operated by 4X Corp under license from Ziff Davis.

Copyright © 2026 4X Corp, Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.