掲載日時: 2010-08-19 07:00

クラウドコンピューティングのリスクヘッジ--3つの環境の最適なバランス

クラウドコンピューティングの将来の役割は、絶えず変化しており、予測が難しい。クラウドのリスクを分散するため、従来のインフラストラクチャ、プライベートクラウド、パブリッククラウドという3つの選択肢を考える。

著者 : 文:James Urquhart(Special to CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル

URL : https://japan.zdnet.com/article/20418210/

 クラウドコンピューティングを「正しく」消費する方法は何なのだろうか。この問題については、絶えず白熱した議論が展開されている。パブリッククラウドプロバイダーは、データセンターを捨てて、ネットワーク経由で提供される従量課金制サービスを採用するよう勧めている。ハードウェアベンダーの多くは、企業のクラウドコンピューティングへの移行はプライベートクラウドの運用を通して実現されると主張している。また、クラウドという概念自体が虚構だと言い張る者もいる。

picture 提供:Flickr/Adrian Sampson

 どの主張に共感を覚えるだろうか。これからの3年、5年、さらには10年にわたって、ITリソースの導入と運用をどのように計画すべきだろうか。どの主張に将来を委ねればいいのだろうか。

 その答えは、部分的に考えると、あなたがどういう人間なのか、ITの提供や消費における役割、そして、データ消失に対する敏感さや規制要件、IT組織の成熟度など、よく知られた要因によって多少は変わってくるだろう。

 しかし、既存のIT投資がある場合、あるいは今日のクラウドコンピューティングテクノロジやビジネスモデルの限界を超えた要件がある場合は、何も選択しないことを検討すべきだと思う。

 筆者の主張は単純な事実から始まる。それは、クラウドコンピューティングには変動する要素が非常に多いため、クラウドコンピューティングへの移行が実際に行われたとしても、それがどのように行われるのかは誰にも予測できないということだ(筆者は、ゆっくりとではあるが不可避の変化がITに起こり、最終的にはパブリッククラウドサービスに支配されるようになるという確信を抱いている)。

 パブリッククラウドプロバイダーの主張が正しくて、ITに関するすべてがある時点でパブリックユーティリティになるのだとしたら、今後10〜20年の変遷を予測するのは不可能に近い。

 ベンダーの主張が正しくて、顧客企業がミッションクリティカルシステムをパブリッククラウドへ移行させる方法を理解する前に、既存の施設にクラウドを導入しなければならないのだとしたら、それをいつ、どのように行うかということ自体が複雑な問題になり、その答えは各々のビジネス要件によって変わってくるだろう。

picture 提供:James Urquhart

 「クラウドは一時的な流行である」と主張する人々が正しいのだとしたら、何らかのクラウド環境を導入することはすべて無駄な投資だということになる。

 すべてではないにせよ大半の企業で、実際には従来型のデータセンターとパブリッククラウド、プライベートクラウドの環境を組み合わせたものに落ち着く可能性が濃厚だ。「ハイブリッドITトライアングル」内のどこかに入ると考えてほしい。

 では、実際にどうするのか。現代的なIT組織が正式に慣習を改めて、運用モデルの不確かな将来に柔軟に対応できるようになるには、どうすればいいのだろうか。

 それを実現する最も簡単な方法は、いくつかの基本的な原則を把握することだ。その多くは何十年も前から知られているもので、中にはクラウドコンピューティングモデルで痛々しいほど明白になっているものもある。

  1. サーバではなく、アプリケーションに注力する。筆者は以前、開発者と運用チームの両方が仮想化とクラウドによって、「導入単位」をベアメタルサーバからアプリケーション自体へ変更することを余儀なくされている理由について説明した。これは重要な概念である。なぜなら、アプリケーションは先述のトライアングルに含まれる3つの環境すべてにおいて管理することが可能だからだ。

    それはどのようなものだろうか。仮想化はアプリケーション管理を大幅に簡素化する。単一のアプリケーション、あるいは単一のパーティションやサービスについて、VMイメージを構築できるからだ。その点においては、「運用」されている単位はVMではなく、ファイルシステムや、そのVM内で実行されているアプリケーションコード自体である。

    したがって、アプリケーションを社内のVMwareベースの環境からXenベースのクラウドプロバイダーへ移行する際に課題となるのは、単に同じファイルシステム、あるいはアプリケーション自体だけを新しいインフラストラクチャで機能させることだ。これは今日の大半のIT組織にとって自然なことだろうか。答えはノーだ。しかし、こういう考え方をするように努めることは、ハイブリッドIT環境において極めて大きな利点となる。

  2. ペイロード運用をインフラストラクチャ運用から切り離す。これも以前主張したことだが、クラウドによって、運用の役割は従来型の「サーバ、ネットワーク、ストレージ」のサイロから、より水平的な「アプリケーション」と「インフラストラクチャ」の指定へと変化することを余儀なくされている。

    インフラストラクチャ運用担当者は、データセンターやキャンパスネットワークなどを構成する「ハードスケープ(サーバ、ストレージデバイス、スイッチなど)」を運用する。さらに、仮想化プラットフォームやIT管理システムなど、リソース消費の自動化と監視を行うソフトウェアシステムの管理も行う。

    アプリケーション運用担当者は、ソフトウェア機能をエンドユーザーやほかのアプリケーションシステムに提供するのに必要なコードやデータ、接続への注力を強化する。アプリケーション運用担当者は、アプリケーションを配備する場所や、配備後にそれらを運用する方法を決定しなければならない。パブリッククラウドシステムはアプリケーション運用担当者がベアメタルにアクセスすることを認めないため、その「ハードスケープ」へのアクセスに依存しないプロセスを設計しなければならない。

  1. 3つの環境すべてで運用できる管理ツールを選ぶ。今日では、仮想化データセンター、プライベートクラウド、パブリッククラウドにおけるアプリケーションの配備、管理、監視を行うための管理オプションや統制オプションが数多く提供されている。それらを利用しよう。

    今日のクラウドに関する最大の懸念の1つは、いわゆる「囲い込み」だ。クラウドの囲い込みには特に危険な一面が隠れている。クラウドベンダーが事業から撤退すると、ユーザーのインフラストラクチャが消失してしまう可能性があることだ。このリスクを軽減する1つの方法は、そういう事態になった場合に、ユーザーがデータとアプリケーションを迅速に別の場所へ移せるアプリケーション中心(または、最低でもVM中心)の管理ツールとサービスを選択することだ。

    クラウド間や仮想プラットフォーム間の真のポータビリティが実現すれば確かに素晴らしいが、ポータビリティのソリューションを設計できる管理環境に依存することの方が、はるかに優れた移行戦略だ。これらのツールやサービスが、バックアップ、データ同期化、災害回避などに役立つものであればなおよい。

 さて、今日の市場におけるそうしたツールやサービスの成熟度を考えると、これらの戦略を実施するのは容易なことではないかもしれない。しかし、これらのアドバイスの裏にある文化面の変化や手順の変化に今着手することで、ハイブリッドIT環境の将来にはるかに対処しやすくなると思う。逆に、いずれか1つの環境に固執してしまうと、ほかの環境の有用性を見落とすことになる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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