掲載日時: 2010-08-30 20:51

仮想化なしに企業は大きな利益を得られない:ヴイエムウェア

仮想化技術の先導的立場にある米ヴイエムウェアは、どのようなクラウド戦略を進めようとしているのか。同社の最高マーケティング責任者(CMO)であるRick Jackson氏に聞いた。

著者 : 大川淳

URL : https://japan.zdnet.com/article/20419189/

 国内外を問わず、クラウドコンピューティングの潮流が強く大きくなってきているIT産業界にあって、クラウド化のための要素として、仮想化技術の重要度が増している。この領域で先導的立場にある米VMwareは、どのようなクラウド戦略をもち、それを進めようとしているのか。同社の最高マーケティング責任者(CMO)であるRick Jackson氏に聞いた。

クラウドはユビキタス

――VMwareの考えているクラウドの理想像とは何か。

 クラウドは、コンピュータへのアプローチの仕方の一つであり、目的地ではない。クラウドの特性は、仮想化されたインフラ上にある管理可能なITリソースのプールを用い、これらのさまざまな資源をオンデマンドのサービスとして利用できるもので、どこのデータセンターにも構築することができる。

 われわれが理想的と考えるクラウドは、一般には、“ハイブリッドクラウド”といわれているものだが、個人的には、“ユビキタスクラウド”との表現が気に入っている。なぜなら、クラウドはインターネットと同様で、どこにでもあり、インターオペラビリティー(相互運用性)も確立しているからだ。

 1990年代にインターネットが普及し始めた頃、“インターネット対イントラネット”というような図式が語られたことがあるが、インターネットはどこにでもあるのが当たり前になっており、このような対置はいまや、まったく無意味になった。

 最近ではクラウドも、かつてのインターネットと同じように“プライベートクラウド”や“パブリッククラウド”というような分類があるが、これも、ただ単にクラウドと表現されるようになるのではないか。ユビキタス化とインターオペラビリティーが背景にあるわけで、どのクラウドも単一のクラウドに変わりはない。

――日本企業のなかには、パブリッククラウドにセキュリティ面などの点で懸念を持っている向きがあるが。

Rick Jackson氏 「ユビキタスクラウドという表現が気に入っている」と語るRick Jackson氏

 インターネットも本格的な普及が始まる前には、何か怖いものだと思われていたことがある。かつては、公衆回線に依存したインターネットに重要なデータをのせることは非常に危険であるとの風潮があり、VPN(仮想私設網)や専用線などに投資されたりすることが少なくなかったが、公衆回線の使用に問題はなかった。

 パブリッククラウドに対して懐疑的な見方があるのは、日本だけでないが、そこに革新をもたらすのはVMWareだといえる。クラウドについて、互換性、管理性、セキュリティ、この3つの問題を改善することが、われわれの役割であると考えている。いまのところ、これらの諸問題を完全に解決できる段階にまでは達していないのだが、そこにたどり着くための取り組みを始めている。

――ユビキタスなクラウド実現のために、VMwareは何を提供するか。

 VMwareは、互換性、管理性、セキュリティ、この3つの要素のすべてを提供する。まず、仮想化ソフトのプラットフォームである「VMware vSphere」で互換性を確保できる。仮想化環境管理製品「VMware vCenter」もある。また、複数のクラウドの管理に向けた標準化や、セキュリティについても、当社は地道な活動をしている。技術革新とともに、標準化活動には、非常に積極的だ。

 種類が異なるハイパーバイザ間で仮想マシンのイメージファイルを共有できるようにするための標準規格「OVF(Open Virtual Machine Format)」の策定が進められているわけだが、この定義にも注力しているとともに、われわれが作り出した「vCloud API」を標準化団体の「Distributed Management Task Force(DMTF)」に提出している。クラウドの相互運用についての技術には長く取り組んでおり、業界でも最先端にあると思っている。

 仮想化はあくまで、効用あるクラウドの実現までの道程の出発点であり、仮想化なしには、企業は大きな利益を得ることができないのではないだろうか。日本企業の場合、クラウド化はそれほど進んでいないとの指摘がある。しかし今回、来日して感心したのは、日本では、早い歩調で仮想化が良い形で採用されていることだ。

クラウドではベンダーロックインは起こらない

――OVFなどの標準が定まると、クラウドを利用しようという企業にはどのような利点があるのか。

 パブリッククラウドへの移行について、エンドユーザーが抱いている互換性や管理性の点での懸念を解消することができるだろう。OVFが固まれば、互換性が確保され、クラウドサービスプロバイダーがvCloud APIをサポートすることで、ハイブリッドクラウドの管理ツールを作成することができる。クラウドを導入する企業もわれわれも、そのようなツールを利用できるなど、これらによりさまざまな利点がもたらされる。

――クラウドを導入するにあたり、企業側には新たなベンダーロックインが起きるのではないかという警戒感もある。vCloud APIがあれば、そうした事態は回避できるのか。

Rick Jackson氏 Jackson氏は「米国ではプライベートクラウドへの関心が高い」と語る

 ベンダーロックインというのは、特定のクラウドの特定なサービスを利用したいとの場合に、起こりうると考えられるが、クラウドのどんな要素を使いたいかどうかで、事情は異なってくるだろう。vCloud APIの場合は、複数のクラウドにIT環境を分散するときに、それらを管理可能にすることができる。ベンダーロックインというなら、たとえば、ある企業がMicrosoftのWindows Azureを基盤に.NETで開発し、拡張するというような例では、ロックインになる。

クラウド化は必要に応じた段階的進行が最適

――北米企業は、クラウドのどのような点に特に関心が高いか。

 当社が観察している動向として、米国ではプライベートクラウドへの関心が高いようだ。レガシーシステムを多く抱えた企業があり、それを放置したまま、パブリッククラウドに放り込むわけにはいかないからだ。多数のエンタープライズユーザーは、プライベートクラウド志向が一般的だ。直近の課題について、最も確かな回答をもたらすと受け取られている。北米では、既存システムへの不満から、プライベートクラウドを採用しようとの動きにつながっている。

――日本では、クラウドに向かう理由として、いわゆるオンプレミス型では新しい技術の導入に後れを取ってしまうとの見解もある。

 同様の問題は、北米以外の地域でも起きている。既存のデータセンターの物理的な問題は、サイロ化していることだ。個々のアプリケーションごとに専用の技術を導入して、管理することが必要になっている。

 しかし、クラウドでは、それが一変する。まず、仮想化により、インフラは収容能力を柔軟に増減できるプールとなり、次に自動化技術を適用すれば、従来人手で対応していた作業は仮想化インフラの上で利用できるようになる。

 その次の段階では、ITサービス環境を追加すると、それらはオンデマンドでビジネスに利用できるようになる。このような段階を踏まえると、必要なアプリケーションをスケールアップしたり、新しい要素を容易に追加することが可能になる。

 この段階になると、プライベートとパブリックという両方のクラウドの相互間では、サービスレベルの差異は意識されなくなるだろう。その状態に到達するには、まず、データセンターの仮想化環境を構築し、既存のデータセンターを進化させていなくてはならない。

 とはいえ、すべてをいきなり、本のページをビリッとやぶるようにするのではなく、進化を伴う道のりを経た手法を採るのであり、急激に、まったく異なるものに作り変えるのではないのだということを言っておきたい。

仮想化は企業のコスト効率を激変させる

――データセンターの効率化、進化とは、実際どのようなことを指すのか。

 データセンターの進化、効率化とは、第一に、すべてのIT資産をよりよく稼動させることが主眼となる。仮想化技術を導入することで、最も大きな価値をもたらすのは、稼働率の向上であると言えるだろう。仮想化技術が用いられ始めた頃には、あくまでサーバ単位のボックスを活用しようというようなことが主流だった。

 しかし今では、仮想化プラットフォームはサーバに留まらず、ストレージやネットワーク、データセンターに至るまで、IT環境にあるすべてのものの稼動効率を向上させることができる。

 効率化を支えるもう一つの要素は自動化だ。自動化が実現すれば、データセンター全体を仮想化させ、共通の環境を構築することが可能になる。プロビジョニングや管理業務といったルーティンタスクは、自動化でさらに効率化が進む。

――資産や業務のサービス化で、ITのコスト構造を変えられるのか。

 やはり、企業の保有するさまざまな資源と時間は、かなり多くの部分がインフラの管理に費やされている。安定的稼動を継続させるため、あるいは信頼性確保のため、多大なコストと時間が必要とされている。仮想化戦略が正しく策定され実践されれば、このようなコスト構造は大きく変わる。

 稼働率の向上と自動化の関係を裏付ける話がある。稼働率が上昇すると、企業のCAPEX(設備投資)は50〜60%ほど削減できる。また、OPEX(運用コスト)も33%くらい低減化することが可能になる。

 IT as a Service、すなわち“サービスとしてのIT”というのは、言い換えれば、ITがビジネスが実行したいと望んでいることの邪魔をするのではなく、ITがしっかりとビジネスを強くする能力となり、準備できるようになっているべきだということだ。クラウドはアーキテクチャであって、IT as a Serviceはその結果なのだといえる。

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