掲載日時: 2011-12-24 10:15

ストールマン、著作権のあるべき姿を提案--「Facebookに私の写真を公開しないで」とも

今回は「著作権の力を削減すべきだ」と主張するリチャード・ストールマン氏の私案を紹介する。また、会場からSNSについて質問が飛ぶと、Facebookの本当のユーザーは広告を出す企業だと述べた。

著者 : 末岡洋子

URL : https://japan.zdnet.com/article/35012519/

 これまで2回に渡ってRichard Stallman氏のドイツでの講演を紹介してきた。第1回では「フリーソフトウェア」と「オープンソース」の差異第2回では電子書籍の例を中心に著作権に対する抗議の内容を示した。

 最後となる今回はStallman氏が考える「著作権のあるべき姿」を紹介する。

 Stallman氏は、著作権は多くの国で「市民の自由を尊重する民主的な政府がとるべき方向とはいえない方に向かっている」という。では、どうすべきなのか。氏は「著作権の力を削減すべきだ」と主張。著作権を長さと深さ(範囲)の2つの面から私案を披露した。

 長さについては「本や音楽が出版されてから10年」と短縮することを提案する。根拠として、米国では出版サイクルは3年、その後はほとんどの本が絶版になることを挙げる。「10年は3年の3倍以上だ。十分といえる」(Stallman氏)

 実際、ある小説家にパネルディスカッションで聞いたところ、「5年以上はすべて長い」といわれたという。この小説家は自身の小説が絶版になった後で、出版社が増版に応じないという問題を抱えていたという。「アーティストなら誰もが、自分の作品を体験してほしいと思っている。この小説家の場合、自作を広げたいという自身の願いが著作権により阻止されている」とStallman氏。「10年がちょうどいいのかはわからない。5年でもよいかもしれない」とも述べる。

 深さ(範囲)については、まず出版を3つのカテゴリに分類した。1つ目は、日常生活で実用的な作業をするのに使う作品。ソフトウェア、レシピ、教育的要素を持つ作品、テキストフォントなどがこのカテゴリに入る。これらは「フリーであるべき」とStallman氏は主張し、フリーソフトウェアの4つの自由が保証されるべきだとする。「日常生活での作業に用いるものを自分に合わせて変更できないとなると、ユーザーは自分の日常生活をコントロールできないことになる」ためだ。自分の用途に合わせて変更したら、今度はそれを自由にパブリッシュできるべきだとも言う。

 2つ目は、回顧録、エッセイ、学術論文など一部の人々の考えを表す作品だ。これは誰が作成したのかが重要になり、変更したものがパブリッシュされると、オリジナルの考えが誤って伝えられてしまう可能性がある。このカテゴリでは「共有」という最小限の自由があるべきだという。そして、非商用目的でそのままの形で再配布する自由や、インターネットを含むさまざまなメカニズムで共有できる自由があるべきだと主張する。

 「共有はすばらしいことであり、社会の基盤を縫い合わせるものだ。共有をやめさせる唯一の方法は、残酷で不当な法や措置しかない」とStallman氏。その例として、フランスなどですでに導入され、いくつかの国でも導入が検討されているネット接続遮断(「スリーストライク」といわれることもある)を挙げた。「共有の戦争」をやめさせるためには「共有を合法にするしかない」(Stallman氏)というわけだ。

 3つ目は、芸術とエンターテインメント。芸術作品は品位や完全性があり、修正はそれを損なうことになるため「結論に至るまでに時間がかかった」という。「品位や完全性のない芸術作品もあるが」と苦笑いしつつ、このカテゴリでの結論はこうだ——芸術作品の修正は貢献といえるが、いますぐに修正する必要もない。

 「商用での利用と変更をカバーし、期限を10年に短縮する著作権法(が適当だ)。10年が過ぎればパブリックドメインとなり、変更したものをパブリッシュできる」(Stallman氏)

 ここまで述べた後、Stallman氏は再度インターネット上での共有を合法にする必要性を訴えた。

 レコード会社は、共有は「ミュージシャンから盗むことだ」と反論するが、「これはバカバカしい主張だ。すでにミュージシャンはレコード会社から盗まれている」とStallman氏。多くのミュージシャンにとって主たる収益源はコンサートであり、CD販売から多額の売上げを得ているのは一部の成功したミュージシャンしかいない。

 「レコード会社はミュージシャンが制作した音楽でもうけたお金を使って、無力なティーンエイジャーを訴えている。一掃されても構わない」とStallman氏は言い切る。

 では、どうやってミュージシャンらアーティストをサポートしていくか。Stallman氏は2つの方法を提案する。

 1つ目は税金による基金だ。CD販売やインターネットに課税してもよいし、一般税から割り当ててもよい。財源よりも重要なのは、基金をどのように使うかだ。人気に応じて分配されるべきだが、既存の仕組みとは別の方法があるという。

 現在、スーパースターAがアーティストBよりも1000倍人気があるとき、リニアな比率であればAはBの1000倍を得ることになる。この場合、Aはものすごくリッチになるが、Bは生活に困窮する。Stallman氏はリニアな比率の代わりに、立方根を使うことを提案する。この場合、AはBの10倍だが、人気に応じて収入はあがる。「これなら、できるだけ多くのアーティストをサポートできる」と主張している。

 2つ目は、ユーザーが自主的にアーティストに払う方法だ。すでに一部のアーティストが利用しているもので、ボタンを押せば1ユーロをアーティストに匿名で送金できるようにする。「作品がよいと思えば押す——感謝の気持ちを示すもので、これならたくさんの人がボタンを押すだろう」とStallman氏。この仕組みを導入し、ウェブサイトで楽曲を公開したカナダのシンガーソングライター Jane Siberry氏の場合、平均1ドル以上の送金があったという。これは、iTunes Storeで提供される楽曲の平均である99セントを上回っている。

 「今よりもよい方法でアーティストをサポートできるはずだ」とStallman氏は言うが、これはあくまでも3つ目の芸術やエンターテインメント分野であって、1つ目の実用的なことをするための作品は4つの自由があるべきだ、と再度強調した。

「Facebookにわたしの写真を公開しないで」

 Stallman氏は観衆からの質問に答える形で、SNSに関する自身の見解を次のように示した。

 「ソーシャルネットワークの考え方そのものに異論はない。だが、さまざまな方法があり、それぞれに長所と短所がある」とStallman氏。問題は「ユーザーがプライベートで共有していると思って書いたり掲示した情報が、他の人にも見られる可能性があることだ」と指摘する。「倫理的なSNSは不可能ではない。“他の人にも公開されてしまう可能性があります。メッセージを送る前に2回考えよう”と警告してくれるような……」と述べた。「Facebookはやらないだろうがね……」(同氏)

 そのFacebookについては、根底にある問題として「(Facebookの本当の)ユーザーは、サービスを利用するユーザーではなく、広告を出す企業なのだ」と指摘。「ユーザーのデータを活用することがビジネスモデル」となるため、「Facebookはあなた方の友達ではない」と述べた(会場からは拍手が起こった)。

 プライバシーに厳しいドイツでは、Facebookが導入した顔認識技術を違法とするなど、何かとFacebookとプライバシーが話題となった。「私がここでスピーチすることは公式に発表されていることで秘密ではない。しかし、ここで撮影したわたしの写真をFacebookにアップロードしないでほしいし、大切だと思っている人の写真もアップロードするべきではない」とStallman氏が述べると、会場からはさらなる拍手が起こった。

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