デロイトトウシュトーマツ調査レポートより  2008年通信業界の主なトレンドを分析

監査法人トーマツ

From: PR TIMES

2008-02-27 16:00

―問いただされる高速化の必要性
―方向性を定めるべきモバイルGPS
―21年目を迎えるGSM


*下記は2008年1月22日配信のデロイトトウシュトーマツの
グローバルニュースリリースを翻訳・一部解説を加えたものです。



2008年1月22日-デロイトトウシュトーマツ(本部:ニューヨーク)のTMT(Technology,Media,Telecommunications)グループは、2008年の通信業界予測レポート“TelecomPrediction:TMTTrends2008”を発表した。同レポートは、デジタル通信が多量化および多様化し、これまで以上に私たちの生活に欠かせないものになるであろうと予測している。

2008年の通信業界の前途は変化に富んでいる。今年度の予測レポートでは、起こりうる不況が同業界に及ぼす影響や、新興市場の世界的大規模な移動体通信業者の台頭、21年目を迎えるGSM(GrobalSystemforMobileCommunication)の見通し、およびブロードバンド市場における通信速度と収益の関係の不確実性を取り上げている。また、10ドル携帯電話の登場が間近に迫ってきたことで安価な通信モジュールが利用可能となり、様々な機器にこのモジュールが搭載されることによって実現される機器間のモバイル通信(マシン・ツー・マシン)市場が高まる可能性についても取り上げている。

主要なトレンドは以下の通りである。


<買収される側から買収する側に>
2008年は信用収縮によってM&A活動全体のペースが鈍化する可能性もあるが、通信業界では買収による成長への意欲が衰えることはおそらくないだろう。先進国の老舗移動体通信事業者が買収相手を検討することもありうるが、2008年はその立場が逆転することもありうる。現在は買収される側にある新興市場の大手事業者が、何億人もの新規加入者から生み出される資金によって、信用収縮による金利上昇とは無縁の多大な軍資金を得ることで、買収する側に変わる可能性が出てくる。


<問いただされる高速化の必要性>
通信業界ではこれまで、通信速度の高速化をめぐって活発な議論が繰り広げられてきたが、2008年もこの議論の熱は冷めそうにない。しかし、通信企業とその株主は資金調達のコストに対する懸念から、これまでよりもはるかに積極的に高速化の費用対効果を問うようになるであろう。通信企業は、採算性を保つことを必要不可欠と再認識し、技術的に可能な最高速度の達成ばかりを優先して追求すべきではない。

アプリケーションの機能および要求性能がデータ通信速度と整合してはじめて、ユーザはアプリケーションの使い勝手に対して満足を得る。今後、更なる高速化がなされるだけでは、そのアプリケーションの利用シーンにおいてはユーザの満足度は変わらないだろう。つまり、通信速度はそれを利用するアプリケーションの技術的仕様と一体になって始めて、そのメリットが顕在化する。定額制など、もはや情報量に比例しない課金形態にある携帯電話サービス事業にとっては、大量データ通信の高速化といったサービスだけでは事業の成長への寄与は小さく、携帯電話端末というハンディ&ユビキタスという利用環境を踏まえた上で、高速化を十分に活かせる利用シーンと魅力的なアプリケーションを開発し、その利用料で収益を向上させることが重要となる。


<モバイルGPSの方向性>
2008年、GPSチップセットの価格はわずか数ドルにまで低下すると予想されており、GPSテクノロジーが搭載される装置は急増する見込みである。そのため、2008年はGPS機能を備えた携帯電話の出荷・販売台数は増加するかもしれないが、GPS機能そのものは、当初は目新しさから使用されることが多いとしても、頻繁には使用されない可能性もある。つまり、コストを余分にかけてもそれに見合う付加価値を生むことができずに終わりかねないということである。

日本におけるモバイルGPSの方向性を考えるに当たっては、最近の2つの市場環境変化に着目することが重要である。1つは、3G携帯端末へのGPS機能の搭載義務化である。事業用電気通信設備規則の改正により、2007年4月から、携帯電話からの緊急通報機能を充実させるために、3G端末は、原則としてGPSモジュールの内蔵が義務付けられた。携帯電話からの110番/118番/119番へ緊急通報が増加しているが、通報者が現在地などを説明できないという問題に対応するためのものであり、位置情報をGPSで測位し、警察・消防・海上保安本部に自動通知する仕組みを構築するものである。もう1つは、携帯電話端末への高度な検索エンジンの採用である。モバイルコマースの拡大・強化、広告ビジネスなどを狙いとしているものであり、地図情報と連携した検索サービスも含まれる。
上記のGPS機能の標準搭載とそれを活用できるアプリケーションの拡大という環境変化が、更なるGPS機能利用の追い風になる可能性があり、地域情報を活かしたサービスなどが増えてくると思われる。


<新メディアが生みだすコミュニケーションニーズ増>
2008年はデジタル通信は多量化、多様化、活発化し、これまで以上に私たちの生活に不可欠なものになるとみられている。ソーシャルネットワークや仮想世界、ブログなどの新メディアを運営する企業は、従来型や最新型のコミュニケーションが大量に行われるきっかけとなるサービスを提供する可能性が高い。こうしたトレンドから、通信業界はコミュニケーションに対する需要がかつてないほどに高まっていることを認識し、自信を得るかもしれない。しかし、新メディアに対する需要は、通信業界がそうした需要をこれ以上金にする力がないということを浮き彫りにするものでもあるとも言える。通信企業は、2008年も相変わらず、コミュニケーションが生み出す収益の大部分を新メディア企業に奪われてしまっていると判断するかもしれない。


<21年目を迎えるGSM>
GSMは21年目に向けて、大成功を続けているように見える。GSMは2008年9月7日に21年目を迎える。この日、200カ国以上に広がる700を超えるGSMネットワークは、全体で160億分を超える音声通話と、60億件のテキストメッセージを運ぶ見込みである。しかし21年目を迎える年において、GSMの前途は依然として平坦ではないだろう。GSM移動体通信事業者は2008年、事業のあらゆる側面について新たな戦略を展開させるべきである。GSMはこれまでは事実上の世界標準であったかもしれないが、今後もトップの座を維持するためには、早急に成熟し、新たな関係とスキルを育てるとともに、これまでになく努力する必要があるだろう。

GSMはその成功ゆえに成熟の域に達しつつある。このため、事業の成長という視点から考えると、3Gへの移行、新規参入の脅威、GSMそれ自身のサービスの拡大や強化、ユーザ獲得・維持のための価格競争への対応といった課題に積極的に取り組んでいくことが求められるであろう。データ通信サービスの更なる利用を促進することが主たる方向であると考えられるが、“ブロードバンド”ブームの中、ブロードバンド環境の普及状況は、各国/地域によって異なっていることに目を向けることが重要であると思われる。固定通信のブロードバンドが普及しているような状況下での携帯のブロードバンド化と、携帯のブロードバンド化が先行する状況とでは、携帯でのブロードバンド利用ニーズの立ち上がりは自ずと異なってくると思われるからである。



このリリースに関するその他の情報、レポートは
(リンク »)  からも入手することができます。



Note:
2008年版各業界予測レポートは、デロイトのメンバーファームのクライアントとの対話や、デロイトのメンバーファームに所属する6,000名を超えるTMT業界専門のパートナー、ディレクターおよびシニアマネジャーによる情報提供、業界アナリストとの討論、ならびに世界の主要なTMT企業の幹部へのインタビューから得られた、内部および外部からの情報をもとに作成されました。


Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体であるデロイトトウシュトーマツ、そのメンバーファームおよびその関係会社を指します。デロイトトウシュトーマツは、卓越したプロフェッショナルサービスとアドバイスを提供する世界各国のメンバーファームおよびその関係会社による組織体で、140カ国以上で遂行されているグローバルな戦略を通じ、クライアントサービスに注力しています。世界中で約150,000人の優れた「知的資本」といえる人材により、Deloitteは4つの専門分野(監査・税務・コンサルティング・ファイナンシャルアドバイザリーサービス)で、世界の大企業の8割以上、全国規模の大企業、公的機関、地域顧客およびグローバルな成長企業にサービスを提供しています。サービスは連合組織体としてのデロイトトウシュトーマツそのものによって提供されるものではなく、また、規制上あるいはその他の理由によって、一部のメンバーファームおよびその関係会社は、上記の4つの分野のサービスを全て提供していない場合があります。
デロイトトウシュトーマツ(スイスの法令に基づく連合組織体)と、そのメンバーファームおよびその関係会社は互いの作為または不作為について責任を負いません。このように、連合組織体であるデロイトトウシュトーマツは、「デロイト」「デロイト&トウシュ」「デロイトトウシュトーマツ」あるいはその他の関連名称のもとで業務を行なう相互に独立した別々の法的存在である各メンバーファームおよびその関係会社によって構成されています。


TMTグループについて
デロイトトウシュトーマツのTMTグループは急成長するテクノロジー企業を顕彰する「テクノロジーFast50」と「テクノロジーFast500」プログラムを運営しています。TMTグループは世界中のテクノロジー、メディア、テレコミュニケーション分野の企業にサービスしてきた経験豊かなスタッフで構成されています。私たちの顧客はソフトウェア、半導体、ケーブル、メディア、出版、コミュニケーション・プロバイダー、ネットワーキング、ワイヤレス、コンピュータとその周辺機器、それらの関連事業にわたっています。

TMTスペシャリストは、ビジネスが成長して行く各段階でこれらの企業が直面する課題を理解し、成功に向けて支援することをその責務と考えています。デロイトトウシュトーマツはテクノロジー、メディア、テレコミニケーション企業の各顧客に、戦略面、金融面、実務面の支援を提供するリーダーです。



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