デロイト トウシュ トーマツ調査レポートより2009年通信業界の主なトレンドを分析

監査法人トーマツ

From: PR TIMES

2009-03-18 14:00

- 顧客データは収集から分析へ -
- 携帯電話の多機能化が最終段階に -
- 追い詰められるモバイルブロードバンド -


*下記は2009 年1月20 日配信のデロイト トウシュ トーマツのグローバルニュースリリースを翻訳し、一部解説を加えたものです。


2009 年1月20日 - デロイト トウシュ トーマツ(本部:ニューヨーク)のTMT(Technology, Media & Telecommunications)グループは、2009年の通信業界予測レポート“Telecom Prediction:TMT Trends 2009”を発表した。同レポートは、通信業界がこのまま世界的な不況の影響を受けずにいられる可能性は低いと予測している。

主要なトレンドは以下の通りである。

スマートフォン(多機能携帯電話):不況下で取るべき賢明策
2009年も不況が続くことで、スマートフォンは逆境に陥る可能性がある。スマートフォン市場の主要チャネルであるモバイル事業者は、コスト削減のために、業界全体で毎年数百億ドルを投じている携帯電話機の販売奨励金について、見直しを始めるだろう。携帯電話メーカーは、競合するスマートフォンやその他の安価な携帯電話機に比べて、自社のスマートフォンがいかに優れた投資利益をもたらし得るのかを、モバイル事業者に示す必要がある。また、携帯電話メーカーは不況にもかかわらず消費者がその機能に対価を払いたくなるようなスマートフォンの開発とマーケティングに焦点を絞るべきである。

日本では、一般消費者向け中心に発展してきた携帯電話サービスを法人向け市場にも拡大するためにスマートフォンの展開が進んでいる。業務遂行における効率的・効果的なコミュニケーションを支援するために、外出先で手軽にPCのような機能をスマートフォンによって提供しようとするものである。今後の更なる普及に当たっては、業務効率向上の面からの付加価値的機能の充実や価格という側面ばかりでなく、業務用の観点からセキュリティの充実も重要な訴求力となる。また、普及・浸透している高機能・高性能化した携帯電話機の機能との棲み分け、使い勝手/ヒューマンインタフェースの親和性をも考慮すべき観点になると考えられる。

顧客データは収集から分析へ
通信事業者は長年にわたり顧客情報を資産基盤の一部としてきたが、従来はそうした情報から得られる洞察よりも、情報を集めることに重点が置かれていた。しかし、経済の見通しを踏まえると、今後は顧客情報をよりよく活用することが、顧客の定着や顧客獲得に役立つとみられる。正確な情報とそこから得られる顧客に関する洞察は、IPテレビやマネージドサービスなど、他分野への多角化を進める上でも重要になると考えられる。ただし、顧客情報を収集する際は、顧客のプライバシーを侵害することがあってはならない。したがって通信事業者は、顧客情報の保持に関する規制環境の動向に注視すべきである。

本末転倒に陥るデジタル通信
多くの企業では、デジタル通信によって高まるはずの効率が、その乱用によりかえって低下している状況にある。平均的なオフィスワーカーは2009年、1人1日当たり最大2時間、容量にして20メガバイトを電子メールに費やすものと予想される。企業によってはコストを管理するために、特に利用量の多い従業員の受信ボックスをIT部門が強制的に空にしている場合もある。しかし、デジタル通信、特に電子メールの過剰使用は、あくまでも人的問題である。企業は、従業員が電子メールを正しく使用するよう支援を行い、量ではなく質を重視するよう促す必要がある。そうすれば、実質的にコスト上のメリットが得られる場合もある。例えば従業員1,000人の企業では、「全員に返信」の機能を使わないようにすることで、従業員1人当り年間1,800ドルの人件費のムダを省くことも不可能ではないのである。

携帯電話の多機能化が最終段階に
携帯電話が多機能化すると、ユーザーは電話、カメラ、音楽プレイヤーなどを個別に持ち歩かなくて良くなることを期待する。しかし、現状では、携帯電話に付随する機能の性能が低く、最高級のパフォーマンスを求める消費者は、複数の機器を持ち運ぶ以外に選択の余地がほとんどない状態である。しかし2009年は、携帯電話はこの問題を克服する可能性がある。部品価格の低下と小型化の進歩もその一因だが、最大の要因は、携帯電話の多くの機能が改善され、通信機能と融合して新たな機能を生み出すことが期待されている。例えば、カメラで撮影したデータにGPSによる位置情報を付加したりすることが可能となるだろう。そうした製品に対する需要は、機能や性能の魅力向上のほか、別々の機器で入手するよりも低価格で複数のアプリケーションを入手できることで、価格に敏感な消費者にも、モバイル事業者からの販売奨励金も加わって押し上げられるものと考えられる。

日本市場での携帯電話の多機能化はグローバルに比べて大きく先行している。現在は、複数アプリケーションの統合的な実行など更なる高機能・高性能化の方向もあるが、多機能化ゆえに操作性が複雑化するため、ヒューマンインタフェースの改善という方向にも開発が及びつつある。一方で、販売奨励金制度が見直されたことにより携帯電話の買い替えサイクルが長期化する環境になり、高機能化・高性能化の方向性は持ちつつも消費者が購入可能な価格で如何に魅力的なものを継続的に実現するかなど、プラットフォームレベルを含めた開発手法の改良での対応が進んでいる。
また、法人向け市場への拡大を目指しているスマートフォンを一般消費者向けに拡大することによって高機能化・高性能化を提供しようとする動きもある。日本に比べてグローバルで普及が進んでいるスマートフォンをインターネットメールや絵文字利用などに対応させるなど、日本の携帯電話の文化との親和性を図るものである。

じりじりと追い詰められるモバイルブロードバンド
世界におけるモバイルブロードバンド用接続モデムの販売個数は2008年、1月当り400万個を上回り、2009年はその2倍以上に達するものと見込まれている。その結果としてネットワークには、特にバックホール接続には、多大なストレスが加わる可能性がある。モバイル事業者はユーザーの増加に対応するために、共同で数百億ドルを投じることを迫られるかもしれない。そして、データ通信量がすでに通話量を上回るモバイルネットワークも存在することから、マージンがコストによって急速に削られてしまう恐れもある。モバイル事業者は将来的に、顧客満足や多様性、利益、投資レベルと、トラフィック負荷の管理とのバランスを取ることを余儀なくされる可能性が高い。


第三のテレビは暗転:モバイルテレビの視聴者が減少
2008年は不調に終わったモバイルテレビだが、経済不況が予想される2009年も終焉は加速の一途をたどるものと考えられる。資産の流動化が難しくなることから、デジタルテレビ放送への投資は抑えられることが予想される。携帯電話の販売奨励金が削減されることで、モバイルテレビを受信できるハイエンド機種の数は減るだろう。メディア収益の低下により、クリエイティブなメディア業界は目新しい形式を試すことにますます尻込みするようになるはずである。広告主は、過去に成功したメディア形式だけに資金を集中させることを決定するものと考えられる。そして、懐事情の厳しい消費者が、拡張機能に対して財布の紐を緩める見込みは薄いのである。

ネットワークの共有化:光ファイバーネットワークの競争形態が変化
固定電話事業者は、銅線ネットワークから光ファイバーネットワークへのアップグレードを迫られているが、この圧力が強まるにつれて、インフラベースの競争を続けることの是非が問われる可能性が高い。現在の競争形態は、消費者へは恩恵となることもあるが、資産が大規模に重複する結果を招く恐れもある。低コストの融資を利用することができ、収益も急成長を遂げていた過去においては、ネットワークが重複しても採算は取れていた。しかし、不況の時代に突入したことから、2009年はイデオロギーが根本的に変化することが予想される。そこで規制当局業界としては、将来的には単一のネットワークを共有化し、オープンアクセス化するのが最善策であると判断する可能性がある。


以上、同レポートによると、2009年の通信業界に対する見通しは、これまでのように楽観的ではいられない。通信業者は、1.成長分野の育成、2.コスト削減・効率化、3.ビジネスモデルの見直し を進める必要があるだろうとしている。
成長分野の育成では、多機能携帯電話の付加価値向上や、定額制モバイルブロードバンドサービスの充実が挙げられる。特に、多機能携帯電話では、GPSを用いた位置情報の付加や、ネット上へのデータストレージなど、携帯電話ならではの新たなサービスが期待できる。
また、コスト削減・効率化では、販売奨励金のあり方や、通信インフラの共有が課題となる。
さらに、ビジネスモデル見直しでは、急速に普及したワンセグ放送から、どのように利益を得て行くのか、顧客データをより積極的にマーケティング活動へ活用することが検討されるだろう。
2009年は限られた顧客を価格競争で奪い合う消耗戦を激化させるよりも、顧客に価値のあるサービスを提供しながら、業界が成長することが期待される。

■2009年版各業界予測レポートは、デロイトのメンバーファームのクライアントとの対話や、デロイトのメンバーファームに所属する6,000名を超えるTMT業界専門のパートナーおよびマネジャーによる情報提供、業界アナリストとの討論、ならびに世界の主要なTMT企業の幹部へのインタビューから得られた、内部および外部からの情報をもとに作成されました。

このリリースに関するその他の情報、レポートは www.deloitte.com/predictions2009/ から入手することができます。


<TMTグループとは>
デロイト トウシュ トーマツのTMTグループは急成長するテクノロジー企業を顕彰する「テクノロジーFast50」と「テクノロジーFast500」プログラムを運営しています。TMTグループは世界中のテクノロジー、メディア、テレコミュニケーション分野の企業にサービスしてきた経験豊かなスタッフで構成されています。私たちの顧客はソフトウェア、半導体、ケーブル、メディア、出版、コミュニケーション・プロバイダー、ネットワーキング、ワイヤレス、コンピュータとその周辺機器、それらの関連事業にわたっています。
TMTスペシャリストは、ビジネスが成長して行く各段階でこれらの企業が直面する課題を理解し、成功に向けて支援することをその責務と考えています。デロイト トウシュ トーマツはテクノロジー、メディア、テレコミニケーション企業の各顧客に、戦略面、実務面での支援を提供しています。

<デロイト トウシュ トーマツ とは>
Deloitte(デロイト)は監査、税務、コンサルティングおよびファイナンシャル アドバイザリーサービスをさまざまな業種の上場・非上場クライアントに提供しています。
Deloitte(デロイト)とは、スイスの法令に基づく連合組織体のデロイト トウシュ トーマツおよび相互に独立した個別の法的存在であるネットワーク組織のうちのメンバーファームのひとつあるいは複数を指します。デロイト トウシュ トーマツとメンバーファームの法的な構成についての詳細は、www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。
デロイトというブランドのもと、デロイト トウシュ トーマツ(DTT/スイスの法令に基づく連合組織体)のメンバーである独立したファームで業務を行う十数万人ものプロフェッショナルが協力し、全世界で、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクマネジメントおよび税務に関するサービスをクライアントに提供しています。

<監査法人トーマツ とは>
監査法人トーマツはデロイト トウシュ トーマツ(スイスの法令に基づく連合組織体)のメンバーファームで、監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援、ファイナンシャル アドバイザリーサービス等を提供する日本で最大級の会計事務所のひとつです。国内約40都市に2,000名以上の公認会計士を含む約5,000名の専門家を擁し、大規模多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細は監査法人トーマツWebサイト(www.tohmatsu.co.jp)をご覧ください。


監査法人トーマツ             
広報室 : 百瀬 旬
Tel:03-6400-5676
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