マイクロソフト、パートナーとの新事業を発表--東芝やNEC、カヤックなど多数

阿久津良和

2018-08-31 06:00

 日本マイクロソフトは8月30日、31日開催の「Japan Partner Conference 2018」に先立ってパートナービジネスの新たな施策を発表した。東芝デジタルソリューションズグループ、NEC、カヤック・電通・博報堂アイ・スタジオと、3分野における協業プログラムを立ち上げる。同社執行役員常務パートナー事業本部長の高橋美波氏は、「パートナーとともにさまざまな変革を起こしていく」と、今後もパートナービジネスを加速させる意気込みを述べた。

東芝デジタルソリューションズ 取締役兼東芝デジタル&コンサルティング 取締役社長の沖谷宣保氏、NEC 執行役員マイクロソフトソリューション推進担当の松下裕氏、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏、米Microsoft CVP, Global Commercial Partner LeadershipのGavriella Schuster氏、博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員の佐々木学氏、カヤック 代表取締役の久場智喜氏(左から。※初出時の並び順の表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。)
東芝デジタルソリューションズ 取締役兼東芝デジタル&コンサルティング 取締役社長の沖谷宣保氏、NEC 執行役員マイクロソフトソリューション推進担当の松下裕氏、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏、米Microsoft CVP, Global Commercial Partner LeadershipのGavriella Schuster氏、博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員の佐々木学氏、カヤック 代表取締役の久場智喜氏(左から。※初出時の並び順の表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。)

 Microsoftの米国本社は、2017年7月に開催したイベント「Inspire 2017」を通じて、パートナー施策の強化を明らかにした。それまでは売り上げの95%がパートナー経由だったが、顧客の立場からすれば、ハードウェアやソフトウェアなどをワンセットにした一気通貫のソリューションを得た方が利便性は高い。同社も「(顧客に対する)価値が高いと判断した。われわれはビルディングブロックを用意し、複数のパートナーソリューションと組み上げて(製品やサービスを)提供する」とCVP, Global Commercial Partner Leadershipの Gavriella Schuster氏は述べている。

 これまでも日本マイクロソフトは、電通をパートナーとしたデジタルサイネージや、KPMGコンサルティングとMicrosoft HoloLens導入支援サービスなど、多くのパートナービジネスを実現してきた。日本マイクロソフトが先日発表した事業方針施策では、2020年に向けた注力分野に「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」の3つの方針を掲げたことは既報のとおりだが、パートナービジネス施策もその一環となる。

 今回発表した施策は3つ。1つめは東芝デジタルソリューションズグループをパートナーとして、Microsoft Azure を活用した「IoTスタンダードパック」の提供を同日から開始する。産業機械や社会インフラの遠隔監視・保守で培った知見を集結して開発した運用機器の稼働状況を可視化する東芝IoTアーキテクチャ「SPINEX(スパインエックス)」をMicrosoft Azureに対応させ、顧客のデジタル変革を推進するという。東芝デジタル&コンサルティングは、コンサルティングによる事業創造や新たな価値創造からサービスオペレーションまでを一貫して提供。日本マイクロソフトの営業部門と連携し、 東芝デジタルソリューションズを加えた3社共同で幅広い営業・提案・コンサルティングを行う。3社は今後、Microsoft Azureを活用して食品・消費財業界向けのCRM(顧客関係管理)ソリューションやeラーニングソリューションといった異なる分野に対する実装・販売を目指す。

東芝IoTアーキテクチャ「SPINEX」の概要
東芝IoTアーキテクチャ「SPINEX」の概要

 2つめはNECをパートナーとした「NEC 365」を同日から提供する。NECは、これまで約300社100万IDにおよぶOffice 365、Microsoft 365の販売・導入を行ってきたが、顧客の利便性向上を働き方改革の文脈で目指すため、このソリューションを立ち上げた。「セキュリティ」「運用」「利便性向上」「活用促進」「導入」と5つの観点を15のサービスとしてパッケージングし、顧客へ提供する。執行役員 マイクロソフトソリューション推進担当 松下裕氏は「顧客需要や環境変化、市場動向に応じて追加・強化する予定だ。われわれは働き方改革の実現を目指す顧客に工数をかけずにスピーディかつ安価に提供する。クラウドビジネスの起爆剤としたい」と語った。

NECの「NEC 365」の概要
NECの「NEC 365」の概要

 3つめはカヤック、電通、博報堂アイ・スタジオの3社をパートナーとして新たなデジタルマーケティングソリューション「Rinna Character Platform」の提供で、同日に開始する。ライフスタイルイノベーションの文脈に含まれるものだが、企業が用意するイメージキャラクターに合わせて、商品購入者などに対する接点増加を目指すというもの。登壇したパートナーは、「『りんな』を使ってユーザーに対する面白い体験を当社のクリエイティビティで提供したい」(カヤック 代表取締役 久場智喜氏)、「継続的な顧客接点の創造を重視している。『りんな』のシステムは新たな表現方法として期待」(博報堂アイ・スタジオ 常務執行役員 佐々木学氏)とコメントした。

カヤック、電通、博報堂アイ・スタジオと共に提供する「Rinna Character Platform」の概要
カヤック、電通、博報堂アイ・スタジオと共に提供する「Rinna Character Platform」の概要

 Rinna Character Platformについては別途説明が行われた。ベースとなる「りんな」は、日本マイクロソフトの女子高生AI(人工知能)で知られたソーシャルAIチャットボットだが、これまで培った基盤をビジネス用に分割し、ベースとなるキャラクターに企業ブランドに合致したキャラクターの味付けをパートナー企業が施した上で、対話式商品レコメンドや暗示的アンケートを通じた、顧客への商品アピールや関心度アップを目指す。

 日本マイクロソフトの担当者は、「日本は特にキャラクターマーケティングや企業・製品にキャラクターブランディングを行っている」と説明した。これまでローソンなど4件の実証実験を行ってきたが、「りんな」の成熟度向上に伴い、ビジネスソリューションとしてプラットフォーム提供に至ったとも述べている。「りんな」が持つスキル(能力)は部分的に流用し、ユーザー企業ごとの需要に応じてパートナー企業が特定のスキルを開発することも可能という。パートナー企業のカヤックの担当者は、「早いものであれば2週間で設置可能」と説明した。

 このようにパートナー施策を推し進める日本マイクロソフトだが、「2018年は1つの変化が生じている。これまで市場に対してパートナーソリューションとMSソリューションを個別に提案してきた。だが、パートナーが主体となり、われわれが支援する本当の意味で連携したソリューションの提供が可能になった。今後も努力を重ねていく」(Schuster氏)と、パートナービジネスを推進する方針を説明している。

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