Carly FiorinaがHewlett-Packard(HP)の最高経営責任者(CEO)を辞任しても、コンピュータ業界の状況がすぐに変わることはないかもしれない。しかし、Dellなどのライバル各社がこの機に乗じてHPから顧客を奪おうとするだろう、と予測するアナリストも多い。
HPは当面、主力製品の販売を続ける計画だ。同社には、少なくとも今のところ、PC事業を切り離す考えもない。だが、アナリストらの話によると、DellやIBM、Sun Microsystems、Gatewayなどの競合各社が、企業や官公庁、教育機関など、HPの大口顧客を奪取しようと動き出すという。
Gatewayの製品企画担当シニアマネージャChad McDonaldは、HPのトップ交替について、「競合各社にとっては売上拡大のチャンスだ」と語った。
HPの最高財務責任者(CFO)兼暫定CEO、Bob Waymanは、会社の組織構造を変えるつもりはないと述べた。また同氏は、次期CEOが決まるまでは、PC部門の分社化のような抜本的な措置をとらないことも示唆した。HPのPC事業が切り離されることになれば、IBMによるLenovo GroupへのPC事業売却と同じように、PC市場の様相が一変することになる。
HPは、2002年5月に完了したCompaq Computerの買収に伴う不安定な状況を、比較的無難に切り抜けた。また、同社はこの買収で引き継いだWalt Disneyなどの大企業との関係をその後も維持している。しかし一方で、HPには競合他社からの非常に大きなプレッシャーがかかっていることも事実だ。例えば同社は2004年第4四半期に、PC市場首位の座をDellに奪われている。第4四半期といえば、例年HPが最も強さを発揮する時期だ。
IDCのアナリストRoger Kayは、「DellにとってHPが混乱していると言うのは簡単なことだろう。それが本当かどうかは関係ない。ある会社のなかで騒動が起これば、競合他社はそれを不安定さの証拠だと指摘できる。競合各社は揺さぶりをかけることができ、また実際にそうする」と語っている。
「Dellは今もIBMの顧客に揺さぶりをかけている。Dellは、競合各社から顧客を奪うためなら、できることは何でもする」(Kay)
IBMのLenovoへのPC事業部売却計画については、米国政府が厳しい審査を続けている。アナリストによると、IBMのPC事業売却とHPのトップ交替を目にした顧客のなかには、PC市場が今後ますます混乱すると考え、右肩上がりの成長を続けるDellを選ぶところも出てくるという。
HPの混乱で恩恵を受けるのはDellだけではない。昨年eMachinesを買収し、続いて組織再編を行ったGatewayも自社の強みを活用していくことになるだろう。2005年はビジネス向けノートPCの販売に力を入れていく計画の同社は、引き続き官公庁や教育分野で強さを発揮することになるだろう。