技術を調和させ、新たな価値を創造するのが使命--日立製作所 - (page 3)

インタビュー:西田隆一(編集部)
文:岩崎史絵、写真:津島隆雄

2005-04-05 10:00

日立が貢献するバリューチェーンとは

--ソリューションという観点を除いて、Harmonious ComputingやuVALUEが目指す技術とは何なのでしょうか。

 エンタープライズ分野でいえば、「事務作業を改善してコストを下げる技術」は終わったということです。いまはそこから、「いかにITで付加価値を上げるか」に論点が移っています。そこで市場をクリエイトする、日立にしかできない技術を推進したいと考えています。

 たとえば、いま開催されている愛知万博では、日立製のICカードを用いて入場管理をしています。このカードに触ってみるとわかりますが、真ん中にミューチップが入っており、どのパビリオンにいつ入場するかという予約情報を読み取る仕組みになっています。一見するとSuicaのようなカードのように見えますが、この後ろにはRFIDなどさまざまな技術が融合されているのです。RFIDは食品のトラッキングといったビジネス分野にも適用されていますね。このように、エンタープライズだけでなく、個人にも同じ技術を還元して、新しい価値をもたらすのがuVALUEの世界です。

--するとuVALUEというのは、必ずしも大規模なものだけが対象なのではなく、個人といった単位までを包含しているのですね。

 そうです。ITが活かされるのは、大規模システムだけではありません。愛知万博の例を挙げましたが、当社が出展している「日立館」ではバーチャルリアリティ技術で希少動物と触れ合うことができるエンターテインメントを提供しています。これも言葉にすると簡単なようですが、その背景には最先端のさまざまな技術があって初めて可能になるものです。そこで新しい価値を提供するのがuVALUEのコンセプトです。

 ただし、エンタープライズという観点で見ると、われわれの強みはやはりミッションクリティカル分野にあるということ。ミッションクリティカルなエンタープライズ領域において、いかに付加価値を作り上げるかということで、日立は社会に貢献したいと考えています。もちろん、ITのスピードやユーザーニーズを考えると、日立1社ですべて対応しきれないかもしれません。特に開発スピードは、エンタープライズ分野では何よりも重要視される項目のひとつです。この問題に対するひとつの解として行ったことが、NECとの合弁会社・アラクサラネットワークスの設立です。両社のエンジニアを集約させることで、開発スピードの向上という付加価値を提供できるようになります。

古川一夫 氏
日立製作所 代表執行役 執行役副社長
1971年に東京大学大学院(電気)修士課程卒業後、日立製作所に入社。同社 情報通信事業部公衆通信本部、日立テレコム(USA)出向を経て、1997年2月に日立製作所 情報通信事業部公衆通信本部長に就任。また2001年にはシステムソリューショングループ ネットワークプラットフォーム事業部長、2002年には情報・通信グループ 業務役員COO、2003年4月に情報・通信グループ長CEOとなる。2005年4月に代表執行役 執行役副社長に就任。

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