私は今朝、サンフランシスコで開かれているNational Cable and Telecommunications Associationのカンファレンスに出かけ、「力を持った消費者の攻撃:新しいメディア市場を理解する("Attack of empowered consumer: Understanding new media markets.")」と題したパネルディスカッションを聞いてきた。このセッションの前半は、よくある映画業界の宣伝だったが、後半部分はケーブルテレビや他のメディア企業すべてが直面している数々の問題を正確に描き出すものだった。力を手にした現代の消費者や、顧客、企業は、別に攻撃を仕掛けているわけではない。彼らはインターネットやブロードバンド、そしてデジタルと名が付くすべてのものを活用しているにすぎない。このディスカッションに参加したパネリストは、エンターテインメント業界とIT業界の幹部がほぼ半々を占めた--Dreamworks SKG共同創業者のJeffrey Katzenberg、Cisco CEOのJohn Chambers、AOL CEOのJonathan Miller、Comcast CEOのBrian Robertsで、これにケーブルテレビ業界にはこれまで馴染みのなかったGoogle共同創業者のLarry Pageが加わった。
Googleがビデオのホスティングサービスの実験を始めているとPageが発表した以外はびっくりするような話は出なかった。繰り返し話題になったのは、消費者向け(家電)機器のマンマシンインターフェースがいかに貧弱かということと、iPodは偉大な製品であるとともに優れた製品ユーザーインターフェースのよいお手本となっているということ、さらに広告はもっとコンテクストを理解した関連性の高いものになる必要がある、ということだった。
ComcastのRobertsはビデオオンディマンド用インターフェースの改善の話や、同社がMotorolaと協力しながら、コンテンツへのアクセスに関するソリューションの開発に取り組んでいる話をした。テレビ用の音声認識技術については、少なくともAgile TVとOneVideo Technologyの2社が現在開発を進めているという。
しかし、ここでPageが現実を思い出させた。「ユーザーインターフェースに関して、テレビ業界の全般的な現状はそれほど先進的なわけではない。優秀で経験を積んだ人材を確保するのは難しい」とPageは述べた。
ケーブルテレビのメニューを選んだり、見たい番組を探したりすることについては、いまだに石器時代の状態が続いており、今後も長くそういった状態が続くだろう。だから、さまざまなAV機器--読者のみなさんはいったい何台のリモコンをお持ちだろうか--を使いこなしたり、いろんなチャネルを通じて入手できるコンテンツを楽しむことなど問題外といえる。Katzenbergは、ムーアの法則のおかげでアニメ制作用のツールが改善されたため、ハイエンドの長編アニメ映画の品質は高くなったが、ユーザーインターフェースにはムーアの法則に相当するものがない、と指摘した。この問題の解決策は、どこか特定のベンダーから出てくるようなものではなく、多くの異なるグループが何十年も似たような問題に取り組んできている。だから、新しいインタラクションのメタファーを売り込もうとしても簡単にはいかない。
広告はどのような変貌を遂げるかについては、Robertsが、中短期的にはこの業界の「あらゆる部分で断絶」が起こり、各社はそのなかを進んでいかなくてはならないと述べたが。しかし、同氏はまた長期的には広告主が大きな勝利を手にすることになり、費用対効果の高い広告を出せるようになると述べた。さらに同氏は、Comcastが現在TiVoと協力しながら、DVRに録画した番組にも広告を出せるシステムを開発しているとし、また同社が特定の時間にテレビを観ている家庭ごとに異なる広告を出せるシステムを開発していることも明らかにした。