64ビットの旗手が仕掛ける次の一手--日本AMD

インタビュー:西田隆一(編集部)
文:岩崎史絵、写真:津島隆雄

2005-04-08 10:00

AMDはエンタープライズ市場においてここ2年でシェアを拡大してきた。その引き金となったのは64ビット対応だ。2003年にいち早くサーバ/ワークステーション向け64ビットプロセッサ「AMD Opteron」を発表、その後もデスクトップPCやワークステーション向けに64ビットプロセッサを出荷し、業界を挙げて64ビット化に取り組んだ。これを受け、サン・マイクロシステムズを始め、IBMやHPがAMD対応IAサーバを相次いで市場に投入したのは記憶に新しい。競合他社の追い上げが激しい今日、AMDは次の企業システムに何を見すえ、どのような施策を打つのだろうか。日本AMD 代表取締役社長 堺和夫氏が答える。

--AMDは業界に先駆けて64ビットプロセッサの普及に努めていました。企業システムにおいて64ビットがもたらすメリットとは何なのでしょうか。

 現在の主流は32ビットですが、64ビットになると、コンピュータ内で扱えるアドレス空間はその分増加します。これはつまり、コンピュータ内で扱えるデータ量が劇的に増大するということです。これまでコンピュータの歴史の中で、8ビットから16ビット、32ビットとアドレス空間は倍増していき、データを格納するアドレス空間もその倍になっていきました。64ビットですと、感覚的には“無制限”のアドレス空間が実現します。具体的には、グラフィクス処理や3次元などの大量データの処理も迅速かつ容易になるわけです。例えばエンタープライズ分野でいうと、CADや製品企画の分野で威力を発揮します。

 もう1つは仮想化です。今日の企業は、できるだけIT投資を抑えて効率的にシステム運用をしたいと思っています。その際、1つのサーバ機でOSを切り替えて利用するなどの方法が考えられますが、64ビット環境であれば、パフォーマンスも扱えるデータ量も損なうことなく、2つのOSを稼働させることができます。このときに最大の効果を発揮するのがメモリコントロール機能です。AMDでは、ユニットごとに割り当てメモリを分けられるので、異なるOSがそれぞれローカルメモリを持つことになり、パフォーマンスを損なわないというわけです。

--現在のエンタープライズ分野における64ビットへの対応状況はいかがですか。

 ご存じのとおり、AMDはハードウェアベンダーなので、われわれだけで64ビット化は推進できません。OSやアプリケーションベンダーの協力が不可欠になります。こうしたことから64ビット対応状況を考えると、LinuxやSolaris、WindowsなどOSの64ビット化に少々時間がかかったのは事実ですが、われわれはただ待つだけでなく、あらゆる技術戦略をもって64ビット化普及に尽力しました。

 まず、32ビットとの継続性を保証したこと。現状はOSもアプリケーションもデータベースもミドルウェアもすべて32ビットなので、こうした資産を捨てるわけにはいきません。そのためAMDではOSやドライバ、BIOS、アプリケーションに至るすべてのカテゴリにおいて、32ビットと64ビットの完全互換性を実現しました。これは技術的には非常に困難なのですが、企業ユーザーの声に耳を傾けると、どうしても必要な措置だったのです。こうした戦略に加えて、「デベロップメント・オーガナイゼーション」を300以上立ち上げ、64ビットソフトウェアの開発を積極的に支援しました。これらの動きがあったからこそ、64ビットの立役者として業界からの評価を得たと思っています。

最大のライバル・インテルにどう立ち向かうか

--とはいえ、競合他社の動きは速く、最大のライバルであるインテルもPentium4やItanium、Xeonの64ビット化を進めてきています。ハードウェアから企業システムにもたらすメリットというのは、差がつきにくい気もするのですが、いかがでしょうか。

 日進月歩で動きの速い業界ですから、競合他社がわれわれに追いつこうとするのは当然だと思います。そこはスポーツの世界と同じようなものでしょう。そこでわれわれは価格競争に走るのではなく、純粋に技術力で勝負をしたいと考えています。

 例えばハードウェアの分野から「企業システムのセキュリティ」を考えることも可能です。現にAMDは、AMD Athlon 64プロセッサに「Enhanced Virus Protection」(EVP:拡張ウイルス防止機能)という機能を搭載しています。これはハードウェアの動作を常時監視して、ウイルスの実行を阻止するという機能です。ウイルス対策ソフトや、Windows XP SP2のようなOSとEVPを組み合わせることで、企業システムのセキュリティを大きく向上させることができるわけです。

 ただしセキュリティの分野は、セキュリティを高めようとすればするほど、エンドユーザーにとって使い勝手が悪くなる、という弊害を抱えています。このバランスをどう取るか。これが大きな課題ですが、現在開発中の「Presidio」でその問題も解決される予定です。

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