ビジネスとシステムの知識を完全分離する先進2社のIT人材配置法 - (page 3)

瀬尾英一郎(月刊ソリューションIT編集部)

2005-04-19 13:00

 業務を素早く理解するポイントは、各担当者の作業の目的を理解することだという。個々の作業を見るのではなく、全体における各作業の位置づけを捉えることで、流れを把握できるようになるというのだ。

 ここで直接業務のポイントを教えるのではなく、キーマンを教える程度に留め、自力学習を促すのが効率良い学習のコツだという。

 そうした意識で業務を見なければ、数週間で1つの業務を、フロー図を作成できるほど理解するのは難しく、またフロー1つ描けないようでは、最善のシステム開発などできないと言う。

適材適所を実現するスキルマップを全社で整備

 こうしたジョブ・ローテーションは、企業としての人材育成戦略の一環だ。従来は各国内で完結する異動がほとんどだったが、最近ではグローバルな異動も珍しくない。

 こうした異動を支えるのが、「タレントダイレクト」と呼ばれる人材DBだ。全社員の職歴や強味、海外への異動希望など、多様なデータが蓄積されている。

 従来はこうした情報が、1国内で完結していた。そのため、海外から人材を求められたり、逆に日本への異動のリクエストを受けた場合に、適当な人材や配属先をなかなか見つけられなかった。結果として、スキルアップの機会を逃してしまうことになっていた。

 それがタレントダイレクトにより、スムーズで迅速な人材発掘と交流が可能になった。

 人事の適材適所を見極めるには、各社員のスキルや能力を的確に把握している必要がある。

 データとしては、まず個人の基本情報が挙げられる。入社年月日や職歴などだ。これまで経験してきた仕事やそこでの立場、グローバルなプロジェクトの経験の有無、過去に受けたアワードなど、履歴書のような情報だ。

 また海外勤務の希望や、その際の希望赴任年数などの情報もあるため、上記のスキルセットと突き合わせることで、グローバルでの人材登用が可能になる。

 個人の能力開発のための管理指標には、3つの大項目を設定している。ビジネスの方向性を定める能力、部下・同僚・チームに意欲をおこさせる(人材育成)能力、適切な方法で結果をもたらす能力といった項目だ。

 2番目の項目に関しては、部下のモチベーションをいかに高められるかも重要な評価ポイントになる。また、人の話をちゃんと聞き、適切なフィードバックをするという、コミュニケーションスキルもチェックされる。

 大項目は、さらに幾つかの小項目にブレークダウンされる。たとえば1番目のビジネスの方向性を定める能力は、4つの評価項目に分かれており、「顧客志向」などが含まれる。企業内外のユーザーのリクエストに対して、キチンと応えられているか、要求を満たしているかをチェックするもの。

 これらの各小項目について、デルで求める標準レベルをクリアしているのか、今後の強化が望まれるのか、それとも十分なスキルがあると考えられるのか、3段階で評価する。

 まず自分で自己評価を下した後、直属マネージャーが評価し、ギャップがあればディスカッションを行い、見解の統一を図る。これを半年に一度実施するという。

 人の能力は日々変わっていくものであり、デルでは3カ月に一度、スキルマップを見直しているという。

 こうした評価指標は、部門や役職に関わらず共通だ。ただ、所属や立場によって、要求レベルが異なるのは言うまでもない。

 デルでは、IT担当者とも業務担当者の役割は明確に線引きしている。だがスキル・能力の評価には、共通の13の評価指標が使われる。あくまでビジネスマンとしてのスキル・能力を高めた上で、各業務やITなど、専門知識を身につけさせようとの考えからだ。

(後半は4月26日掲載予定です)


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