ビジネスとシステムの知識を完全分離する先進2社のIT人材配置法

瀬尾英一郎(月刊ソリューションIT編集部) 2005年04月26日 10時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ビジネスや業務を考える上で、ITを抜きにすることはできない。だが、業務へのITの適用方法を考えるのは、誰の役割か?業務担当者自らが先進の情報技術を学習し、自業務への適用を考えていくべきなのか?「それは理想的かもしれないが、現実的ではない」という声がある。技術の進歩が早く、ビジネスへの影響力が大きい現在こそ、ITを専門家の手に委ねるべきとの考えだ。「ITと業務に精通した人材を探しているのだが、なかなか見つからない」という声をよく耳にする。

 背景には、ITが経営に与えるインパクトがますます大きくなっている現実がある。ITの力を借りない企業経営や業務など、今や考えられない。むしろITをどれだけ活用できるかによって、企業の競争力が決まると言える。

 システム担当者、特に上流設計者には以前から、「先端の情報技術と同じように、業務知識も重要」と言われている。業務がイメージできなければ、ユーザーから出されるリクエストを理解できない。ユーザーと円滑にコミュニケーションを進めるために必須の知識という理由からだ。

 同様に最近では、業務や事業に精通した経営者や業務担当者が、相応のITスキルを持ち、積極的に使いこなすべきという考えが出てきている。

 もちろん、「専門家ではないので、システムのことはよく分かりません」と避けて通ることはすでにできなくなっている。

 だが本当にエンドユーザーがITの深い知識を持てば、さらにコミュニケーションが円滑になると同時に、より理想に近いシステムを構築できるようになるのだろうか?

 これに対して、デルや旭化成は、ITの知識は専門家に任せるべきと考え、「現場担当者にIT知識は求めない」と言い切る。IT担当者から歩み寄るべきとの見解だ。

 技術の進化はますます早くなり、専門家であっても追随していくのは至難の業だ。ITに力を割くなら、本来の業務の改善や改革に注力した方が、企業全体の利益になると考えるからだ。

 2社の先進事例から、IT導入を円滑に進め、最大限の導入効果を引き出すための、ITスキルの適材適所と、部門の役割分担を考える。

旭化成--業務担当者に必要なITスキルは知識全体の5%で十分!

 経営におけるITの役割は増すばかりだ。経営者が事業戦略やビジネスモデルを検討する際にも、現場の業務担当者が仕事の流れや業務プロセスを見直す場合にも、ITをどれだけ活用できるかで、選択肢の幅に大きな差が生じるようになってきた。

 そうした流れを受け、業務担当者であっても、ある程度のITスキルを求める企業が出てきた。そんな中、旭化成では「現場の業務担当者に、中途半端なITの知識は不要」と言い切る。

 間違えてはいけないのは、「ITの知識はゼロで良い」というわけではない点だ。巷には3文字熟語やITのキーワードが反乱しており、日常のビジネス会話でも頻繁に登場する。それらが分からなくては、最低限のコミュニケーションすらままならない。

 一方、システム開発において、「IT担当者とエンドユーザーのコミュニケーションギャップ」が、プロジェクトの進捗を大きく左右するという声がある。

 もっとも、ビジネスや経営、業務におけるITの重みが増すにつれて、ITの知識も一般常識となってきている。そのため、基本的な用語の解説を必要とするケースはほとんど見られない。

旭化成 井上均情報システムセンター長

 井上均情報システムセンター長は「エンドユーザーの頭の中に、ITの知識は5%あればいいと思います」と話す。会話の中にIT用語が出てきた場合に、「それは分かりません!」と突っぱねるのではなく、興味を持って耳を傾けられる程度の知識と姿勢、これが5%位だというのだ。そしてこれは、新聞や一般のビジネス雑誌を継続的に読んでいれば、自然に身に付く程度だと言う。

 もちろん、話を進めていく中で、深く突っ込んだ話をする必要が生じるかもしれない。「そうなったら、専門家に詳しい説明を求めれば良いのです。そもそも専門分野が違うのですから、お互いの話を完全に理解できるはずはありません」(同)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
経営

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化