企業のニーズに合わせて常に進化する--SAPジャパン - (page 2)

インタビュー:別井貴志(編集部)
文:岩崎史絵、写真:渡徳博

2005-04-22 10:00

--2004年にNetWeaver以外では、中堅・中小企業向けの「SAP Business One」を発表されましたね。これまでSAPといえば「大企業向けERP」の代名詞にもなっていたと思いますが、実際にビジネス状況はいかがですか。

 当社は大企業で6〜7割、中堅企業層で3割のシェアを持っています。まず中堅企業向けとして、SAP Business One以前に「SAP All-in-One」というテンプレートベースのソリューションをリリースしました。これは導入期間とコストを事前に明示し、短期間でR/3を導入するためのソリューションです。

 これ対してSAP Business Oneは、以前SAPが提唱していたコンセプトを中堅企業層に拡大したもので、「まずはSAPを入れて、ベストプラクティスのビジネスプロセスを整えましょう」と謳っています。おかげさまで、2004年7月に発表し、国内ユーザー数は100社を超えました。こうした動きから、現在の当社の売り上げ比率でいくと、大企業が6割で中堅企業が4割となっており、かなり中堅企業層が伸びています。

--SAP Business One、All-in-One、そしてNetWeaverなどさまざまな製品がありますが、製品ごとにアプローチの対象となる企業カテゴリは分かれているのでしょうか。

 まず大企業向け製品として「SAP Business Suite」があり、そのベースとなるのが「my SAP ERP」という、R/3と呼ばれてきたERP製品があります。この2つが主に大企業向けであり、NetWeaverもそうした意味では先進的な取り組みをする大企業を主軸に導入されています。

 中堅・中小企業層には、まずERPのそもそものコンセプトを打ち出し、短期間かつ低コストで導入してもらうためにSAP All-in-OneとSAP Business Oneを提供しています。そして大企業と中堅企業の売り上げ比率で見ると、先ほど申し上げたようにバランスの取れた数字になっています。

 そもそも、大企業と中堅企業ではアプローチの方法が異なります。大企業向けには、やはりNetWeaverのように、既存のビジネスプロセスや資産を活かした新しいエンタープライズシステムのあり方を提案する。中堅企業層には、ERPの効果やメリットを享受してもらう。それぞれで製品もアプローチも変えているわけですが、それもやはりお客様のニーズを汲んで、さまざまな試みをしているためです。

--昔から「ERPを入れて本当に効果はあるのか」といわれてきましたが、実際のところどうなのでしょうか。

 たとえばある企業では、戦略的に調達先を選定するために、当社のビジネスインテリジェンス「SAP BW」を導入しました。もちろんそれまでも、定期的に調達先の分析を実施していたのですが、企業の業務として定着するまでには至らなかった。しかしSAP BWを入れることで、戦略調達が企業の中に根付いたのです。

 私がSAPジャパンの社長に就任したのは2000年の1月ですが、そのころに導入を開始したお客様の元で、実際にシステムが稼働し始めたのは大体翌年の4月くらい。そして、さらにユーザー教育や機能のブラッシュアップをし、「SAPを入れてよかった」と実感できるようになるのは大体3年目になってからでした。

 先述した例のように、SAPを入れなくても「これまでも同じことはやっていた」というケースはあるでしょう。しかし、その業務が企業のDNAとなって真価を発揮するには、きちんとそのビジネスを定着させないといけません。効果の考え方は難しいのですが、3年目くらいで実感していただくケースが多いのは事実です。もちろん、SAPを入れてすぐ目に見える効果がでることもあると思います。ただ、われわれは短期的な効果を追いかけているわけではありません。むしろ企業が強くなるため、しっかりとしたベストプラクティスを企業内に確立していただくことが重要だと考えています。

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