企業のニーズに合わせて常に進化する--SAPジャパン - (page 3)

インタビュー:別井貴志(編集部)
文:岩崎史絵、写真:渡徳博

2005-04-22 10:00

--さらに一歩踏み込むと、SAPから別の製品に乗り換えたお客様もいらっしゃると思うのですが、それは何が原因だったのでしょうか。

 確かにそのケースもあります。ただ、それは構築中にSAPの導入をあきらめ、手作りで構築していくケースがほとんどです。それも私が知っている限りでは、1件くらいしかありません。その理由は「やっぱりパッケージと自分の会社のビジネスプロセスは合わない」と判断したためだと伺っています。

 現在ではNetWeaverなどのように、段階的・部分的にSAPを導入することも可能です。おそらく当社のビジネスが4年間で3倍に伸びたのも、当社製品がより柔軟になったため、手組みシステムとの比較が少なくなったためだと思われます。

--次にIT市場でのビジネスについてお伺いします。小売業向けソリューションベンダーであるRetek社の買収について、オラクル社と競争になり、結局Retek社はオラクルに買収されてしまいました。もともとRetek社の買収については、SAPではどのような戦略をお持ちだったのでしょうか。

 当社の買収戦略は一貫しています。ある会社の技術や人知が優れており、それをSAP製品に組み込みたいと思ったら適正なオファーを出します。ですから、Retek社の買収について「買収合戦」と言われましたが、当社からすると「合戦」ではないのです。適正オファーをし、受け入れられなければ仕方ありませんし、適正以上の価格を出すことになったらそれは“負け”になります。

 嫌がる会社を無理に買収したり、また顧客層を広げるために買収をするのではありません。たとえばトップティア・ソフトウェアを買収し、SAP EP(Enterprise Portal)としてリリースしたのもその一例です。その技術や人知を当社製品に組み込み、ソリューションの幅を広げるというのがまず前提にあります。

--敗れたというわけではないのですね。ところで、そうした競合他社の動きを含め、SAPはどのような戦略を打ち出していくのでしょうか。

 広い意味で、当社に競合はいないと考えています。というのは、まだまだ国内のベンダのマーケティング力は弱いので、業界を挙げてパッケージの優位性を打ち出していく必要があります。たとえば、SAP1社が「パッケージのソリューションはこんなに有効です」といっても、やはり1社だけだと声が小さい。ですので、ほかのパッケージベンダの方々と声を合わせて、パッケージのメリットを訴求していく必要があります。そこで振り向いたお客様に対して、改めて自社製品の強みを打ち出せばいい。そうした観点から、パッケージ市場をさらに大きくするために、他社の方々といいライバル関係を築いていきたいと考えています。

藤井清孝氏
SAPジャパン 代表取締役社長
1981年東京大学法学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出戦略コンサルティングに従事した後、1986年にハーバード大学経営学修士(MBA)取得。その後CSファースト・ボストン投資銀行、日本ブーズ・アレン取締役副社長、日本ケイデンス・デザイン・システムズ社長を経て、2000年1月より現職。

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