ケーブル会社は自社のインフラを競合するインターネットサービスプロバイダ(ISP)に開放する必要はないとした米最高裁判決に、ケーブル業界は安堵のため息をついたことだろう。
米最高裁は、ケーブル会社が自社ネットワークをBrand XやEarthLinkといったISPに開放すべきとした連邦裁判決を、6対3の票差で覆した。多数意見を執筆したのは、Clarence Thomas判事だ。一方、Ruth Bader Ginsberg、Antonin Scalia、David Souterの3人の判事が反対意見を述べた。
ケーブル会社は長年、自社のネットワークを他社に使用させる義務を免除されてきたことから、今回の最高裁判決によって、消費者に直ちに影響が出ることはない。しかしBrand Xと同社の支持者らは、今回の判決は長期的に見て競争を阻害し、ブロードバンド利用料金の上昇につながると確信している。
「(今回の判決は)明らかに、インターネット事業から撤退せよという最高裁からのわれわれに対するメッセージだ」と語るのはカリフォルニア州サンタモニカに拠点を置くBrand X Internetの社長Jim Tickrellだ。同氏はさらに次のように続けた。「Bush政権がわれわれのように小規模な独立系ISPを敵視していることが、今回の判決で明らかになった。(今回の判決は)消費者にとっては大きな敗北であり、ロビー活動に膨大な資金を投じている独占的電話/ケーブル企業にとっては大勝利といえるだろう」
大きな注目を集めたこの裁判は、カリフォルニア州サンタモニカに拠点を置くISPのBrand Xと米連邦通信委員会(FCC)との間で争われた。裁判では、ケーブルサービスの定義が重要な鍵を握った。
FCCはケーブル事業者によるブロードバンドサービスを「情報サービス」と定義付けた。米政府機関の指針の下では、情報サービス事業者は競合他社に自社のネットワークを使用させるよう義務付けている規制の対象外となる。したがって、ケーブル会社は、Brand XなどのISPを含む競合他社に自社のネットワークを開放する必要はない。
これに対しBrand Xは、電話会社は自社ネットワークを競合サービスに使用させることを義務付けられており、ケーブル会社も電話会社と同様に通信サービスを扱っているのであるから、電話会社と同じ規制を受けるべきだと主張した。2004年12月に最高裁はこの裁判の再審議を行う決定を下した。
最高裁は多数意見の中で、ケーブル事業を情報サービスとしたFCCの解釈を支持した。
「FCCが、問題の新たな分析を行い、ケーブル業界に適用したことに関し、恣意性は全く認められない」(最高裁の多数意見)
また最高裁は、Telecom Actのニュアンスの解釈に関しては、FCCに重要な決定を下す権限を広く認めるべきだと強く主張した。最高裁はその理由として、今回の裁判は技術的にかなり込み入った内容であることから、専門知識を有するFCCの意見に従うのが妥当であるためと説明した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ