編集部からのお知らせ
PDF Report at ZDNet:「ドローン活用」
「ニューノーマル」に関する新着記事一覧

靴売場にICタグを導入し、顧客起点のSCMを構築する(前編) - (page 2)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部)

2005-09-20 10:00

三越(日本橋)
売場の改革なしでは
真のSCMは実現しない

 これまで三越では、JANコード(用語解説参照)を利用した個品管理を実施してきた。売れた商品の色や型番を調べることで「売れ筋」をつかみ、次の発注の参考にするといったものだ。

 これは、百貨店業界全体でもほぼ同様だ。百貨店にモノが届くまでの流通の合理化はすでに一巡。商品1個あたり1円〜数十銭といった流通コストを引き下げてきた。

 だが、このような流通の効率化に限界が見え始めてきた。流通コストを絞るために各ステークホルダーが知恵を絞ると、特定の業者に損失が生じる。そうなると、かえって業界は縮小するしかない。

 さらに、百貨店業界はここ10年で減収傾向にある。百貨店や卸業者、メーカー、流通業者がWin-Winになる仕組み作りが求められていた。三越でも「売上を伸ばすためのサプライチェーン」の構築が急務だった。

 三越商品本部商品システム推進部の西田雅一ゼネラルマネジャーは「本来のサプライチェーンとは、供給連鎖全体を最適に管理することです。つまり、メーカーから百貨店に商品が届くまでではなく、顧客の手に届くまでがサプライチェーンです。そこで、売場と顧客を結ぶサプライチェーンのプロセスに着目し、なんとか売場を改革できないかと考えていました」と話す。

▲三越 商品本部商品企画部 商品システム推進部 西田雅一ゼネラルマネジャー

 売場と顧客を結ぶサプライチェーンとは何か?西田氏は(1)品切れを起こさないこと、(2)顧客を待たせないことだという。つまり、適時・適宜・適量の在庫を持ち、顧客のニーズに応じて商品を提供できれば、満足度は自ずと上がると考えていた。

 だが、これらの条件を満たすことは簡単ではない。POSなどを使った従来型の商品管理だけでは不可能だ。

 たとえば、POSを使うと商品を何個仕入れて何個販売したのかは分かる。だが、10個仕入れて10個売れたすると、それは非常に最適化されているのか、それとも本来は20個売れるべきものだったが欠品のために10個しか売れなかったのかは分からない。つまり、POSの情報だけでは、潜在需要は測定できない。

 西田氏がこうした問題の解決策を検討していた時のことだ。NTTコムウェアからICタグの実証実験を持ちかけられた。「話が来た際、『ICタグは道具でしかないから、道具ありきの実験は意味がない』と思いました。しかし、これを使えば、顧客が商品を手に取った回数を測定できると思ったので、実験に合意したのです」(西田氏)と振り返る。

経済産業省の支援の下
ICタグ実証実験を開始

 NTTコムウェアとICタグに関する勉強会を開始してから約1年経過した頃、経済産業省がICタグの実証実験を支援することを知った。同省は、ICタグを使った実験事業の資金援助する代わりに、結果を広く公表し、業界の活性化につなげるのが狙いだ。そこで三越は、日本百貨店協会の一員としてこれに応募することにした。

 百貨店協会の幹事企業に対し、ICタグの実験対象の売場についてアンケートを取った。その結果、全社一致で「婦人靴」と回答したという。

 婦人靴は、売場と顧客を結ぶサプライチェーンが最も途切れやすい。サイズや色、形が多様なため欠品が多く、在庫確認にどうしても顧客を待たせてしまう(図2参照)。一方販売員は、顧客の要望に応じて売場と靴の倉庫を何往復もしなければならない。同協会の調査によると、1回あたりの平均の接客時間は、靴が売れた売れないにかかわらず、約13分かかるというのだ。

図2 婦人靴売場の課題

 百貨店協会で、靴売場でのICタグ利用案をまとめて応募したところ、2004年7月に正式に採択された。経済産業省が目的としていた「ICタグの技術的な精査」、「ICタグの普及」、「ICタグを利用したBPR(Business Process Re-engineering)の実現」の3項目を押さえていた点が高く評価された。

 実験の形態はこうだ。まず、ICタグをプラフィルムに入れて、靴の箱に添付する。卸業者が靴を出荷する際、タグを読み取り、靴が百貨店に入荷した時点で、再度読み込む。こうすることで、百貨店にどのようなサイズや色の靴が入荷したのかが、瞬時に分かる。

 店頭に並べられる靴には、値札等を結ぶ糸にICタグをつけて展示する(画面1参照)。タグには1cm程度の切れ込みがあるので、手作業で容易に添付できるのが特徴だ。靴が売れた際にタグ読み取って消しこむことで、在庫の数が判明する。

ICタグ

 また、商品の出入荷の誤差を解消するため、定期的に棚卸を実施する。その際、倉庫にある靴箱のICタグを一度に読み込めるので、作業負担を抑えられる。

 靴売場の店員はリーダー付きのPDAを持っている。ICタグにつけられたIDを読み込めば、リアルタイムに在庫数を確認できる。卸業者から百貨店までが一気通貫でつながっているため、卸業者が持つ在庫までも確認できるメリットがある。

 顧客にとっての利点もある。ICタグが添付されている靴を、店頭にある専用キオスク端末の上に置くだけで、在庫を確認できる。たとえば、検索した靴の在庫がない場合、「同サイズの色違い」や「ワンサイズ上の同じ型」といった条件で、再検索できるのだ(図3参照)。

図3 ICタグシステムの概要


<JANコード>一般的なバーコードのこと。JISにより規格化されたバーコードで、商店に流通しているほとんどの商品にマーキングされている。ヨーロッパや米国のバーコードとも互換性がある。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]