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靴売場にICタグを導入し、顧客起点のSCMを構築する(前編) - (page 3)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部)

2005-09-20 10:00

売上が10%以上向上し
本格導入を決定

 三越での実証実験には、商品システム推進部のメンバー4人が参画。また、同社の情報システム子会社「三越情報サービス」から2〜4人が加わった。さらに、靴売場の状況を把握するため、婦人靴売場の担当者をプロジェクトに参加させ、顧客目線から靴の索引を作った。靴売場の経験を持つ社員もメンバーとして引き入れ、実際に靴を販売しながら、そこで気付いた要素をシステムに実装していった。

 実証実験のステークホルダーは多岐に渡った。まず、靴のバイヤや卸業者と綿密に打ち合わせる必要があった。実験の対象とするメーカーや靴のブランドを詰めなければならない。当然、三越の一人よがりにならないよう、実験の途中経過を百貨店協会のメンバーに報告する必要もある。打ち合わせ回数は、わずか8カ月たらずで、百数十回に上ったという。

 実験の成果は上々だった(図4参照)。店員が倉庫と売場を往復する数が、実験前の平均20回から15回に減少。接客時間は、13分から6分弱へと半減した(図5参照)。

図4 ICタグ導入前後の業務フロー

図5 実証実験の効果

 さらに、実際に靴が売れた場合とそうでないケースに分けて、店員と顧客のやり取りを分析。すると、興味深い結果となった。売れた場合の時間は変わらなかったが、売れなかった際のやり取りの回数と時間が大幅に減少していた。つまり、在庫確認のための待ち時間に耐えられないために、交渉を打ち切る顧客が減少したのだ。在庫がない場合の待ち時間が減少したことで、顧客満足度が高まっているとの見方もある。

 また、靴が売れたケースを詳細に見ると、試着したり靴を問い合わせたりする「お調べ回数」が、1人平均1.7回から3.1回に上昇した。これは接客密度が向上したことに他ならない。

 西田氏は「効果として最もうれしかったのが、全店員がシステムを利用してくれたことでした」と打ち明ける。

 情報システムをエンドユーザーに使ってもらうのは、一筋縄ではいかない。三越では、JANコードに対応したシステムを導入した際、店員へシステムの利用法を周知徹底させるため様々な取り組みをしてきた。だが、なかなかスムーズに利用されなかった経緯がある。それがICタグの導入時は、店員が率先してシステムを利用。1日平均で1人28回利用しているという結果となった。

 そして何より、ICタグ導入の最大の成果は、売上が上がったことだ。2004年10〜12月の実験期間中、前年比10.3%向上したのだ。「靴売場の店員から『これがないと仕事ができない』との声が上がり、売上も上昇しました。この結果を受けて、ICタグの本格導入に踏み切りました」(西田氏)。

タグが届く電波距離で
理想と現実の差を実感

 ICタグの実証実験時、西田氏は思い描いていた理想と現実のギャップを痛感したこともあったという。たとえば、当初顧客が靴を持ち上げた回数を把握することで、靴への関心度を測る仕組みを考えていた。だが、タグの電波が10cmほどしか飛ばなかったため、実用化には至らなかったという。

 「『ICタグの電波は最大8mほど飛ぶ』と聞いていましたが、それはテレホンカードの倍以上の大きさに限ったことでした。婦人靴にそれほど大きなタグを付けられません。値札と同じサイズにすると、数cmしか飛ばないというのです。一気に夢が打ち砕かれた気持ちでした」と告白する。

 また棚卸の際、JANコードのように在庫を1個ずつ読み取らなくても済む点が、ICタグのメリットだと言われていた。だが実際には、ICタグリーダーは、在庫を一気に読み取ってしまうため、万一壊れたICタグがあると、それがどれなのかを特定できない。

 だが西田氏は、それらの短所を補ってあまりあるほどの成果があったと断言する。卸業者と百貨店、売場の店員の作業を効率化し、売上を向上させるという明確な成果があったからだ。

 今後三越では、ICタグを取り付けるブランドを拡大。8月には銀座店へも導入した。さらに、靴卸も1社から3社に拡大させ、導入範囲を広げていく方針だ。

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